ひとことで言うと
胸腹部CTの画像診断レポートから癌を疑う所見を抽出するルールベースの自然言語処理システムを開発し、多施設データで高い検出性能を示した研究。
Keywords
自然言語処理、放射線レポート、多施設研究、医療従事者支援、J-MID
なぜこの研究をしたのか
画像診断レポートには、癌などの重要所見やフォローアップに関する情報が含まれるが、依頼医による確認漏れにより、患者のフォローアップや治療が遅れることがある。
この課題に対して、癌を疑う所見を含むレポートを自動的に抽出し、見落とし防止に役立てることを目的とした。
どう調べたか
研究では、胸部および腹部CTの画像診断レポートを対象とした。
フリーテキストのレポートを、観察物・臨床所見・修飾・フォローアップなどの情報に構造化し、辞書を用いて単語やフレーズを意味コードに対応づけた。
そのうえで、癌を疑う所見を以下のようなパターンに分類するルールベースの自然言語処理アルゴリズムを作成した。
- 悪性の疑いを明確に示す所見
- 悪性かどうか判断が難しい所見
- 悪性の可能性が否定できず、追加検査やフォローアップが推奨される所見
- 悪性の可能性がある病変が増大または新規出現している所見
評価には、J-MIDに登録された多施設の胸腹部CTレポートを用いた。テストセットは、自施設150件と外部5施設750件の合計900件で構成され、2人の経験豊富な医師が正解ラベルを作成した。
何がわかったか
レポート全体での分類性能は、Precision 0.886、Recall 0.886、F1-score 0.883であった。
自施設のinternal validationではF1-score 0.927、外部施設のexternal validationではF1-score 0.873であり、外部施設のレポートでも一定の性能を示した。
特に「High actionable」ではRecall 0.986と高く、癌を強く疑う重要所見を拾い上げる性能が高かった。一方で、「Low actionable」は文脈判断が必要なため、High actionableやNo actionableよりも性能が低かった。
なぜ大事なのか
画像診断レポートの確認漏れは、患者のフォローアップや治療の遅れにつながる可能性がある。
本研究のシステムは、癌を疑う所見を自動的に抽出することで、医療者の確認作業を支援し、重要所見の見落とし防止に役立つ可能性がある。
また、自施設だけでなく外部施設のレポートでも性能を評価しており、多施設での利用可能性を検討している点が重要である。
次に目指すこと
本研究では、各施設150件ずつの評価に限られており、より多様なレポートスタイルに対応するためには、さらに多くのレポートでの評価が必要である。
また、対象は胸部および腹部CTレポートに限定されており、今後は胸部X線写真レポートへの適用可能性も評価している。
さらに、実際の臨床現場で使用するには、単一レポート内の所見分類だけでなく、患者の経時的な臨床経過を考慮し、癌を疑う所見が初めて検出された場合に通知するような運用が課題とされている。