ひとことで言うと
阪大病院データバンク事業では、電子カルテ上に同意取得状況の管理機能を新設し、同意患者のみの診療情報提供を支援した。
Keywords
システム、医療従事者支援、EHR、医療情報DB、AI(機械学習)
なぜこの研究をしたのか
阪大病院データバンク事業は、AIを始めとする医学研究開発・商品化を国内外の研究機関や企業が共同または単独で進めるため、阪大病院の診療情報を利活用する取り組みである。
診療情報には患者の個人情報を含む機密性の高い情報が含まれるため、同意を得た患者の診療情報のみを確実に提供する必要がある。病院受診患者から網羅的に同意を取得し、その状況を誤りなく管理するため、病院情報システムによる支援が必要と考えられた。
どう調べたか
2021年10月より、電子カルテに阪大病院データバンク事業専用の同意取得状況管理項目を新設した。
ステータスは「未確認」「出力済み」「同意」「非同意」とし、QRコード付き同意書の印刷、回収後のスキャン、OCR解析、バッチ処理によって、同意・非同意の状態が電子カルテ上で管理される仕組みとした。
同意書が回収できない場合は、「出力済み」の状態で2か月経過すると「未確認」に戻り、再印刷の対象となるようにした。
何がわかったか
2021年10月から2024年6月時点までに、同意は15,168人、非同意は711人で、同意率は95.4%であった。運用変更前後でも同意率は95%前後で、大きな変化はなかった。
一方、同意書の回収率は全期間で51.2%であり、運用変更前の70.6%から、運用変更後は20.8%に低下した。専任事務員を減らし、全診療科の初診患者に受付時に同意書と説明文書を手渡す運用へ変更したことが、回収率低下に影響した可能性が示された。
なぜ大事なのか
電子カルテ上で同意・非同意の状況を管理することで、同意患者のみを抽出し、診療情報を素早く提供できるようになった。
また、同意取得率は高かった一方で、説明文書・同意書の配布や回収には専門の事務職員の配置が望ましいことが示され、診療情報の利活用を進める際の運用上の課題が明らかになった。
次に目指すこと
同意書を提出しない患者の中には非同意の患者も含まれる可能性があり、同意率は過大評価されている可能性がある。
今後は、患者通院支援機能を持つ患者向けアプリを用いた電子同意により、すでに阪大病院を受診していない患者や、事務労力の問題で説明文書・同意書を渡せていない患者からも同意取得できる可能性がある。また、患者自身がアプリ上で同意状況を確認し、同意撤回を容易にできる可能性がある。