大阪大学医学部附属病院 医療情報部

Achievement Detail

医療データの施設外利用を目的とした阪大病院データバンク事業のAI研究開発に向けた可能性

阪大病院データバンク事業におけるAI研究開発向けリアルワールドデータ活用の可能性

年度
2024
タイプ
学会発表
キーワード
AI(機械学習), EHR, 医療情報DB
Authors
西田 明美、村田泰三、藤井 歩美、向井 頼貴、岡田 佳築、田中 祥子、川崎 良、武田 理宏
学会
第44回医療情報学連合大会
開催地
福岡市

ひとことで言うと

阪大病院データバンク事業は、同意取得済み患者の診療情報・画像情報・院内がん登録情報を組み合わせて提供でき、AI研究開発や機械学習モデルの外部妥当性評価に活用できる可能性がある。

Keywords

医療情報DB、AI(機械学習)、EHR、医用画像、院内がん登録

なぜこの研究をしたのか

阪大病院では2010年にペーパレス電子カルテを導入し、DWHに診療データを蓄積してきた。院内では年間1000件以上のデータ抽出依頼がある一方、院外の企業や研究機関が電子カルテ情報、検査結果、画像情報などを利用することは容易ではなかった。近年、診療情報と画像情報を組み合わせたAIプログラムの研究開発が進み、リアルワールドデータを用いた精度検証の需要があるため、阪大病院データバンク事業で取得可能な診療情報の概要を示すことを目的とした。

どう調べたか

阪大病院データバンク事業に同意した患者を対象に、DWHから患者基本情報、外来受診歴、入院歴、DPC情報、画像検査、院内がん登録情報を抽出して集計した。また、利用例として、院内がん登録データから消化器系がん、とくに食道がんに着目し、ステージ別件数、画像撮影数、治療別患者数、検体検査結果、画像所見レポート、病理レポート件数を集計した。

何がわかったか

2024年6月時点で、阪大病院データバンク事業には15,300名が同意しており、男性8,722名、女性6,578名であった。2022年1月から2024年6月までに入院した患者5,740名のうち、DPC様式1のICD-10大分類では「新生物<腫瘍>」が2,298名と最も多く、次いで「循環器系の疾患」1,854名、「尿路性器系の疾患」391名であった。

院内がん登録情報との突合では、対象者15,300名のうち4,293名ががん登録情報と突合された。局在コード別では消化器が3,452名で最も多く、消化器系の内訳では大腸1,308名、胃962名、食道651名であった。食道がん651名のうち、Stage 0期46名、Stage I期153名、Stage II期119名、Stage III期151名、Stage IV期169名、不明13名であり、Stage 0期・I期の早期食道がん患者199名のうち、内視鏡画像を持つ患者は170名、胸部CT画像を持つ患者は168名であった。

なぜ大事なのか

本事業では、レセプト情報だけでなく、電子カルテの各種オーダ情報、経過記録、検査結果、検査レポート、画像情報、院内がん登録情報などを組み合わせて提供できる。これにより、AI開発における教師データとしての利用に加え、多施設データや公開データで学習した機械学習モデルの外部妥当性評価にも活用できる可能性がある。

次に目指すこと

本事業は、国内外の研究機関や企業による医学研究開発・商品化に向けたデータ利活用を目的としている。これまで2件のデータ購入に関する相談依頼があり、コンサルテーションを実施したが、本契約に至ったケースはない。今後は、提供可能な医療データの価値やデータ提供準備に伴う作業費用の相場について議論を重ねつつ、企業・研究機関での利用促進が期待される。