大阪大学医学部附属病院 医療情報部

Achievement Detail

多施設からの処方薬剤のデータ収集における課題(臨中ネットの活動の経験から)

多施設から処方薬剤データを集める際、補足用法の記録場所が施設によって異なることが臨床研究データ収集の課題となる

年度
2023
タイプ
学会発表
キーワード
EHR, 医療情報DB, 多施設研究
Authors
坂井亜紀子、武田理宏、山下暁士、朝田委津子、吉田直樹、松村泰志
学会
第43回医療情報学連合大会
開催地
神戸市

ひとことで言うと

臨中ネットの活動を通じて、多施設の処方薬剤データを臨床研究に使うには、コード標準化だけでなく、補足用法の入力・マスタ設定を含む運用標準化が必要であることを示した研究。

Keywords

医療情報DB、EHR、Real World Data、多施設研究、標準化

なぜこの研究をしたのか

電子カルテに蓄積されるリアルワールドデータの利活用が進む一方、多施設で二次利用するには、コードの標準化、データの信頼性確保、利活用できるデータの拡大が課題となっている。

臨床研究中核病院では、2018年度よりAMED事業として「Real World Evidence創出のための取組み(臨中ネット)」を実施しており、病院情報システム内の医療情報データの標準化と、研究等に利活用できる体制整備を進めている。

本研究では、処方薬剤データについて、臨床研究で必要となる薬剤成分の特定や一日投与量・一定期間内の投与量把握に着目し、データ出力時の課題を検討した。

どう調べたか

昨年度、臨中ネット参加施設に対して実施したアンケート調査の結果をもとに、JAHIS処方データ交換規約と照らし合わせ、臨床研究に必要な項目を選定した。

アンケート調査では、隔日投与、曜日指定、日付指定、不均等処方などの補足用法、頓服の区別、水薬や散剤の記録状況を確認するため、取りまとめ校が模擬処方例を提示し、各医療機関でデータがどのように記録されるかを確認した。

処方薬剤データの項目選定では、JAHIS処方データ交換規約 Ver.3.0Cを参照し、用法、補足用法、処方期間、投与量などを組み合わせて、一日投与量や一定期間内の投与量を把握できるように検討した。

何がわかったか

薬剤成分は個別医薬品コード(YJコード)で把握でき、一日投与量や1か月など一定期間の投与量は、用法、補足用法、処方期間などの情報を組み合わせることで把握できることが示された。

用法、処方期間、投与量、投与日数については多少の違いはあるものの、電子カルテベンダーや施設のマスタの作り方による記録の差異はなく、規約通りに記録されていることが確認された。

一方で、補足用法については、規約では用法と補足用法を反復セパレータで区切って記載することとなっているが、規約通りに記録されていたのは14施設のうち1施設のみであった。ほとんどの施設では、補足用法が用法コメントまたは薬剤コメントとして記録されていた。

なぜ大事なのか

補足用法は、隔日投与などスケジュール用法における実投与日数を把握するために必要な要素である。

補足用法の記録場所が施設によって異なると、データ収集時に補足用法を漏れなく収集し、収集後に研究者が補足用法を集計しなおす必要が生じる。これは、臨床研究における多施設データ収集の課題の一つである。

本研究は、処方薬剤データの標準化では、データのコード化だけでは不十分であり、マスタ設定や入力を含めた運用の標準化が必要であることを示している。

次に目指すこと

SS-MIX2の実データはJAHIS処方データ交換規約 Ver.2.0に沿って出力されていることが多いため、Ver.3.0Cとの差分を吸収する措置が必要とされた。

また、補足用法を規約通りに記録するには、電子カルテ上で補足用法を入力する仕組みが必要であり、施設担当者がマスタ設定や入力データの意味を理解して運用を検討する必要がある。

今後は、システム更新や電子処方箋の導入時に、マスタ設定や入力を含めた標準化の見直しが進むことが期待される。