ひとことで言うと
製薬企業のコールセンター情報から副作用、妊婦・授乳婦服薬、Special Situationsを深層学習で判定し、目視判定を支援するWebアプリケーションを開発した研究。
Keywords
自然言語処理、AI(機械学習)、システム、有害事象、企業報告制度
なぜこの研究をしたのか
製薬企業は薬機法に基づき、市販後の医薬品・医療機器等の副作用、感染症、不具合等に関する情報を収集し、規制当局へ報告する義務がある。コールセンター情報は年間で数万件にのぼり、まず有害事象等の有無を判定する一次スクリーニングが行われるが、これらの作業は人手で実施されており、膨大なコストがかかっていた。
どう調べたか
塩野義製薬株式会社が保有する2017年6月5日から2021年12月29日までのコールセンター情報257,331事例を対象にした。問い合わせ内容と回答を入力として、副作用、妊婦・授乳婦服薬、Special Situations(SS)を予測する多ラベル分類モデルを構築した。
事前学習済み日本語BERTモデルを初期値とし、コールセンター情報でMasked Language Modelingによるドメイン適合を行ったうえでFine-tuningを実施した。学習データの不均衡に対応するためFocal Lossを導入し、Confident Learningでラベル誤りの可能性が高い2,610事例を除外した。最終的に223,710事例を教師データとして採用した。
何がわかったか
有害事象判定モデルは、副作用、妊婦・授乳婦服薬、SSに対して、それぞれAUC 0.994、0.996、0.976を達成した。感度は副作用97.7%、妊婦・授乳婦服薬98.0%、SS 92.8%であった。
妊婦・授乳婦服薬について、モデルの予測結果と正解ラベルが異なる事例を見直したところ、モデルの判定の方が正しい事例が7件存在した。
なぜ大事なのか
人手で行われている有害事象の一次スクリーニングを自然言語処理で支援できる可能性が示された。特に、人間が見落とした事例をモデルが検出できる可能性があり、企業報告業務の効率化や判定支援につながる。
次に目指すこと
有害事象判定モデルの予測結果を目視判定に活用できるWebアプリケーションを実装した。今後は、本入力補助ツールによる業務改善の検証が検討されている。