ひとことで言うと
既存の電子カルテテンプレートにデータ引用機能を組み込み、入院時のせん妄リスク評価、せん妄対策の記録、診療報酬算定までを一連の運用としてつなげた取り組みである。
Keywords
システム、医療従事者支援、患者支援、EHR、せん妄予防
なぜこの研究をしたのか
急性期病院では、認知症やせん妄の発症が医療現場の負担となるため、せん妄予防対策の実施が求められている。
「患者ケアせん妄リスク加算」では、全入院患者に対して入院前または入院3日以内に7項目のリスク因子を評価し、ハイリスク患者にはせん妄対策を行う必要がある。
しかし、評価には年齢、病名、薬剤、手術など多岐にわたる情報確認が必要であり、看護師の作業負担や記載漏れが課題となる。そこで、既存の入院時患者プロフィールや入院診療計画書の運用の中で、せん妄スクリーニングと対策記録を行える仕組みを構築した。
どう調べたか
大阪大学医学部附属病院で、電子カルテのテンプレート機能を用いた運用を構築した。
患者プロフィールに、せん妄ハイリスク患者ケア加算のチェックリストに準じたスクリーニングテンプレートを追加した。
テンプレートのデータ引用機能を用いて、年齢、病名、飲酒歴、処方情報、手術依頼情報などを参照し、以下の7つのリスク因子を評価できるようにした。
- 70歳以上
- 脳器質的障害
- 認知症
- アルコール多飲
- せん妄の既往
- リスクとなる薬剤の使用
- 全身麻酔を要する手術後または予定
また、ハイリスクと判断された患者については、入院診療計画書の看護計画テンプレートにせん妄対策の実施項目を追加した。
さらに、せん妄対策の記録をもとに「せん妄対策加算文書」を自動生成し、患者プロフィールと入院診療計画書のテンプレートデータを引用して、医事課が算定根拠を確認できるようにした。
何がわかったか
2022年7月の入院患者1817人のうち、1351人、74.3%にせん妄スクリーニングが実施された。
スクリーニング実施患者のうち、ハイリスク因子ありと判断された患者は756人、55.9%であり、そのうち740人、97.8%でせん妄対策が実施された。
なぜ大事なのか
この仕組みにより、看護師は患者プロフィールや入院診療計画書という既存のワークフローの中で、せん妄リスク評価と予防対策の記録を行えるようになった。
また、コスト算定用の文書を自動生成し、リスク因子や実施対策を引用して表示することで、医事課が算定根拠を確認しやすくなり、せん妄予防対策から診療報酬算定までをシームレスに実施できる運用が構築された。
次に目指すこと
2022年7月時点では、スクリーニング実施率は74.3%であり、全患者への実施には至っていなかった。病棟別にも入力率のばらつきがあり、一部では短期入院症例で抜けやすい傾向が示唆された。
今後は、教育と経時的なデータ監査を行い、月次監査によって記載漏れを減らす対策を進める必要がある。