ひとことで言うと
胸部HRCTから解剖学的位置を基準に代表断面像を抽出し、A3D-DenseNetを用いてPF-ILDの予後予測が一定の精度で可能であることを示した研究。
Keywords
医用画像、AI(機械学習)、胸部CT、間質性肺疾患、予後予測
なぜこの研究をしたのか
間質性肺炎は臨床像が多彩で、診断時点での予後予測が難しい。胸部CT画像を用いた予後予測モデルを構築するにあたり、3次元CNNは事前学習済み重みを活用しにくく、学習にも大きな計算資源を要するという課題があった。そこで、事前学習済み重みを利用できる2次元CNNを基盤に、より低い学習コストで予後予測モデルを構築することを目指した。
どう調べたか
ILDの胸部CT画像471例を用いて、肺尖部、気管分岐部、横隔膜直上部の3つをポジションマーカーとして抽出する2次元分類モデルを作成した。次に、これらのポジションマーカーからの相対位置をもとに、上肺野・中肺野・下肺野などの代表断面像を抽出した。
予後予測モデルには、PF-ILDであったかどうかの判定が付与された198例を用いた。このうち77例は進行事例であり、研究登録時点の胸部CT画像のみを入力として使用した。モデルはA3Dを組み込んだDenseNet系モデルを用い、入力断面像数を3枚、5枚、9枚で比較した。評価指標には主にAUROCを用いた。
何がわかったか
ポジションマーカー抽出器は、評価データにおいて肺尖部97.2%、気管分岐部100%、横隔膜直上部95.8%の1-Up-Down精度を示した。
予後予測では、5枚の代表断面像を入力したA3D-DenseNet-169が最も高い性能を示し、AUROC 0.833を達成した。このモデルでは、F1-score 0.70、precision 0.67、recall 0.73であった。
また、A3Dを用いない比較モデルよりもA3Dを用いたモデルの方が高性能であり、ランダムに選んだ断面像よりも代表断面像を入力した方が高いAUROCを示した。
なぜ大事なのか
PF-ILDは、24か月以内の画像、生理学的検査、臨床所見の増悪といった時間的経過を踏まえて診断される疾患概念である。本研究は、研究登録時点の胸部CT画像のみから、その後PF-ILDの診断基準を満たすような進行を一定の精度で予測できる可能性を示した。
また、胸部CT全体を3次元CNNに入力するのではなく、解剖学的位置に基づいて代表断面像を抽出し、A3Dで断面像間情報を扱うことで、2次元CNNの事前学習済み重みを活用しながら予後予測に取り組める点に意義がある。
次に目指すこと
RGB前処理やデータ拡張の効果については、症例数の少なさにより性能が不安定になった可能性があるため、症例数の増加や交差検証を行ったうえで再検討する必要がある。
また、研究登録時点の胸部CT画像のみでPF-ILDの進行を予測できるという解釈は、臨床的知見も踏まえて慎重に検討する必要がある。今後は、患者背景情報と予測モデルの出力情報を統合する研究も視野に入れられている。