大阪大学医学部附属病院 医療情報部

Achievement Detail

画像診断レポートの二次利用に向けた解剖学的区域に関する言語資源の構築

画像診断レポートに含まれる解剖学的区域表現を標準化するための日本語言語資源構築

年度
2023
タイプ
学会発表
キーワード
EHR, 医学知識, 放射線レポート, 自然言語処理
Authors
孫 逸樵、杉本 賢人、和田 聖哉、小西 正三、岡田 佳築、松村 泰志、武田 理宏
学会
第43回医療情報学連合大会
開催地
神戸市

ひとことで言うと

画像診断レポートの二次利用に向けて、レポート内に多様な表現で記載される解剖学的区域を標準コードに対応づける言語資源を構築した研究。

Keywords

放射線レポート、自然言語処理、EHR、医学知識、標準化

なぜこの研究をしたのか

電子カルテの二次利用は、レセプト情報や検体検査結果など構造化・標準化されたデータでは進んでいる一方、フリーテキスト形式で保存される情報の活用は十分に進んでいない。画像診断レポートには多くの臨床情報が含まれるが、解剖学的区域は「左肺上葉」「左上葉 S1+2」など多様な表現で記載されるため、そのままでは抽出結果を二次利用しにくい。そこで、画像診断レポートに出現する解剖学的区域の用語を標準化するための言語資源構築を目的とした。

どう調べたか

大阪大学医学部附属病院の画像診断レポートを対象とし、2012年から2020年の胸腹部 CT レポート約26万件を匿名化して利用した。先行研究で構築した深層学習によるエンティティ抽出モデルを適用し、レポート中の解剖学的区域に関する用語を抽出した。

概念テーブルの作成では、日本放射線技術学会が提供する JJ1017 コードの部位コードを基に、胸部・胸腹部・腹部・腹部骨盤部・骨盤部・頸部・全身に関する部位コードを抽出した。さらに、実際のレポートで頻出する用語や専門家との議論を踏まえて不足分を追加し、側性を含めた形でコード体系をカスタマイズした。

抽出された解剖学的区域の用語については、3名の医学生が概念コードとのマッピング作業を行った。各用語には2名の医学生を割り当て、結果が一致しない場合や「不明」が選択された場合には、専門家である医師らが確認・判定した。

何がわかったか

JJ1017 コードを拡充する形で、最終的に215語からなる概念テーブルを作成した。実際の胸腹部 CT レポートから抽出された解剖学的区域に関する多くの用語は、JJ1017 を基にした概念で網羅できていた。

また、抽出された15,324語のうち、11,026語を概念マスターにマッピングした。アノテーター間の一致度を示す Kappa スコアは65.4%であり、概ね良好な一致度が得られた。

なぜ大事なのか

画像診断レポート内の解剖学的区域表現を標準化できれば、自然言語処理による情報抽出システムの出力を、より二次利用しやすい構造化データとして扱えるようになる。これにより、電子カルテに含まれるフリーテキスト情報の活用範囲を広げ、臨床研究やリアルワールドデータ活用に役立つ可能性がある。

次に目指すこと

今回の概念テーブルでは、作業の簡略化のために動脈・静脈など血管系の細かい表現を省いており、これらに関する表現の多くは十分にマッピングできていない。今後は血管系に関する概念を拡充する必要がある。

また、今回構築した概念テーブルは胸腹部 CT レポートに関する概念と実際に出現する用語を整理したものであり、今後は別のモダリティや部位への拡張が予定されている。さらに、「胸部大動脈近傍」のような相対的区域表現は、用語だけでは判断が難しいため、病変との組み合わせなどレポートの周辺情報を用いた判定の検討が今後の課題である。