大阪大学医学部附属病院 医療情報部

Achievement Detail

臨中ネット SWG3 の活動報告と処方の用法の標準化における課題

臨床研究で処方データを使うための「用法」標準化と、その実装上の課題

年度
2022
タイプ
学会発表
キーワード
EHR, 医療情報DB
Authors
坂井亜紀子、武田理宏、山下暁士、朝田委津子、真鍋史朗、吉田直樹、松村泰志
学会
第42回医療情報学連合大会
開催地
札幌市

ひとことで言うと

臨床研究で処方量を正しく把握するには、JAMI標準用法コードによる用法標準化は見通しが立つ一方、隔日投与などを表す補助用法は電子カルテベンダーや医療機関ごとの差が大きく、標準化に課題が残る。

Keywords

医療情報DB、EHR、標準化、Real World Data、処方データ

なぜこの研究をしたのか

臨床研究中核病院では、2018年度よりAMED事業として「Real World Evidence創出のための取組み(臨中ネット)」を進めている。病院情報システム内の医療情報データを標準化し、臨床研究などに利活用できる体制を整備することが目的である。

大阪大学および名古屋大学は、臨中ネットSWG3の取りまとめ校としてコード標準化に取り組んでいる。薬剤については、薬剤コードに個別医薬品コード(YJコード)、薬剤単位にMERIT-9を採用し、対応テーブルを作成してきた。本研究では、内服薬・外用薬の処方における用法の標準化に取り組んだ。

どう調べたか

SWG3参加施設に対し、取りまとめ校が模擬処方例を提示し、各医療機関で処方オーダデータがどのように記録されるかを確認した。

回答項目には、SS-MIX2標準化ストレージ仕様書 Ver.1.2g の使用フィールド名を記載し、処方箋イメージを添付することで、各施設でデータの意味がそろうようにした。各施設からは、テスト患者の入力データまたは類似の処方データが提供された。

用法の標準コードとしては、JAMIの「処方・注射オーダ標準用法規格」を採用し、用法コードと補助用法コードの標準化について検討した。

何がわかったか

用法コードについては、2施設を除き、各施設のハウスコードが出力されていることが確認された。そのため、ハウスコードとJAMI標準用法コードの変換マスタを作成することで、標準コードに変換できる見通しが立った。

一方、補助用法コードについては、8施設でハウスコードが出力されていたものの、コード化できている補助用法にはばらつきがあった。「2日に1回」「1日おき」のような高頻度の補助用法は比較的コード化率が高かったが、「週に2回」「○月○日に内服」のような複雑または低頻度の用法ではコード化率が低かった。

また、補助用法コードで記述される情報は、マスタの有無やマスタの作り方が電子カルテベンダーごと、医療機関ごとに異なることが明らかになった。補助用法をコード選択せずフリーコメントで入力する事例や、コード選択後にテキストを編集する事例も報告され、実データのコード化率やコードの意味の一貫性に課題があるとされた。

なぜ大事なのか

臨床研究では、1日の処方量と、1カ月など一定期間の正しい投与量を把握できることが最低限必要とされる。

連続投与の薬剤であれば、1日投与量と処方期間などの限られた情報から期間内の総投与量を把握できる。しかし、隔日投与などの不連続投与では、実投与日数や補助用法を把握しなければ、投薬スケジュールや期間内総投与量を正確に判断できない場合がある。

複雑な投薬スケジュールが増える中で、補助用法を含めた用法の標準化は、臨床研究で処方データを安全かつ正確に利用するために重要である。

次に目指すこと

用法コードについては標準化の目途が立ったが、補助用法コードについてはシステム面・運用面に多くの課題があり、現時点で標準化を進めることが有用かどうか検討が必要とされた。

複雑な投薬スケジュールでは、補助用法を把握することが期間内の投与量を正確に把握する手段となるため、処方データ提供時には、少なくともテキスト情報を提供するなどの工夫が必要とされた。

補助用法の標準化は電子処方箋の観点からも重要であり、電子カルテベンダーや医療機関が必要性を認識し、日本全体で議論が広がることが期待されている。