大阪大学医学部附属病院 医療情報部

Achievement Detail

Extracting Clinical Information From Japanese Radiology Reports Using a 2-Stage Deep Learning Approach: Algorithm Development and Validation

2段階の深層学習で日本語放射線レポートから臨床情報を抽出する手法の開発と検証

年度
2023
タイプ
論文
キーワード
AI(機械学習), 医療従事者支援, 放射線レポート, 自然言語処理
Authors
Kento Sugimoto, Shoya Wada, Shozo Konishi, Katsuki Okada, Shirou Manabe, Yasushi Matsumura, Toshihiro Takeda
Journal
JMIR Med Inform. 2023 Nov 14;11:e49041. doi: 10.2196/49041.
PMID
37991979
doi
10.2196/49041

ひとことで言うと

日本語の胸部・腹部CTレポートから、所見や診断、それらの関係を高精度に抽出し、自由記載の放射線レポートを構造化データへ変換する2段階深層学習システムを開発した研究。

Keywords

自然言語処理、放射線レポート、AI(機械学習)、情報抽出、構造化データ

なぜこの研究をしたのか

放射線レポートには、観察された構造、診断の可能性、治療方針に関する情報など、臨床的に重要な情報が含まれている。しかし多くのレポートは自由記載で書かれているため、症例検索、コホート作成、診断サーベイランス、臨床意思決定支援などへの二次利用が難しい。

従来の辞書ベースやルールベースの情報抽出システムには、表記揺れ、略語、非標準的な用語への対応、辞書の維持、言語依存性といった課題があった。特に日本語を含む英語以外の臨床テキストでは、十分な臨床言語資源がないことが、臨床NLPシステム開発の障壁になっていた。

どう調べたか

大阪大学医学部附属病院の放射線情報システムに保存された、2010年から2021年までの日本語放射線レポート912,505件を用いた。このうち、胸部CTレポート540件と腹部CTレポート500件をランダムに抽出し、医療専門家がアノテーションしたゴールドスタンダードデータセットを作成した。残りの911,465件はモデルの事前学習に用いられた。

システムは2段階で構成された。第1段階では、放射線レポート内の臨床エンティティを抽出した。エンティティには、観察所見、臨床所見、解剖学的位置、確信度、変化、特徴、サイズの7種類が定義された。第2段階では、抽出されたエンティティ間の関係を抽出した。関係には、観察所見や臨床所見と修飾語を結ぶ modifier relation と、観察所見と臨床所見を結ぶ evidence relation が定義された。

エンティティ抽出では BiLSTM-CRF、BERT、BERT-CRF を比較し、関係抽出では BiLSTM attention model と BERT を比較した。さらに、放射線レポートを用いたドメイン適応の有無による性能差も検証した。

何がわかったか

最良のエンティティ抽出モデルは、ドメイン適応ありの BiLSTM-CRF で、microaveraged F1-score は96.1%だった。関係抽出では、ドメイン適応ありの BERT が最も高い性能を示し、microaveraged F1-score は97.6%だった。

エンティティ抽出と関係抽出を組み合わせた2段階システム全体では、microaveraged F1-score は91.9%だった。また、句読点とストップワードを除外した場合、情報モデルによる臨床情報のカバレッジは96.2%(6595/6853)だった。

なぜ大事なのか

この研究は、日本語の自由記載放射線レポートから、臨床的に意味のある情報を高精度かつ包括的に抽出し、構造化形式へ変換できる可能性を示した。

特に、観察所見や臨床所見だけでなく、それらを修飾する情報や、観察所見が臨床所見の根拠となる関係まで抽出できる点は、放射線レポートの二次利用に重要である。症例検索などの実用的な用途への応用可能性が示されている。

次に目指すこと

本研究は単一施設のデータセットで評価されており、一般化可能性には限界がある。今後は、他施設のレポートを用いた評価が必要である。

また、胸部・腹部CTレポートのみで検証されているため、他の部位やモダリティのレポートに適用するには、深層学習モデルの追加調整が必要である。さらに、放射線レポートには誤字、略語、非標準的な用語が含まれるため、臨床応用には用語正規化技術が必要になると述べられている。