ひとことで言うと
ILD-Sliderは、胸部CT全体を詳しく処理しなくても、少数の代表スライスから進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)を識別できる可能性を示したAIモデルです。
Keywords
医用画像、AI(機械学習)、医療従事者支援、他施設研究、間質性肺疾患
なぜこの研究をしたのか
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、間質性肺疾患の中でも進行しやすく、予後に大きく関わる病態です。
しかし、PF-ILDかどうかを判断するには、症状の変化、呼吸機能、複数回のCT画像などを時間をかけて確認する必要があります。そのため、治療開始の判断が遅れることがあります。
そこで研究チームは、胸部CTのすべての画像を使うのではなく、重要な少数のスライスだけからPF-ILDを識別できる、軽量で実用的なAIモデルの開発を目指しました。
どう調べたか
研究では、大阪大学医学部附属病院と国立病院機構大阪刀根山医療センターの計613例の胸部CTデータを用いて、ILD-Sliderという深層学習モデルを検証しました。
このモデルは、まず胸部CTの中から解剖学的に意味のある位置を手がかりに、代表的なスライスを自動的に選びます。選ばれるスライス数は3枚、5枚、9枚などに絞られます。
その後、選ばれた代表スライスを軽量なAIモデルで解析し、PF-ILDに該当するかどうかを識別します。全CTボリュームを処理するのではなく、少数のスライスに情報を集約する点が特徴です。

何がわかったか
5枚の代表スライスだけを使った場合でも、PF-ILD識別でAUPRC 0.790、AUROC 0.847という性能が得られました。
また、連続したCTボリューム全体がなくても、非連続の少数スライスからPF-ILDを識別できる可能性が示されました。これは、実臨床や公開データセットのように、画像条件が必ずしも理想的でない場面でも応用しやすい点です。
なぜ大事なのか
PF-ILDを早く見つけることは、治療開始のタイミングや経過観察の方針を考えるうえで重要です。
ILD-Sliderのような軽量AIが実用化されれば、胸部CT読影の補助として、進行しやすい間質性肺疾患を早期に拾い上げる支援につながる可能性があります。
また、解析に必要な画像枚数を大きく減らせるため、計算コストを抑えながら、多施設データや日常診療データへの応用を進めやすくなることも期待されます。
次に目指すこと
今後は、より多くの施設・撮影条件・患者背景を含むデータでの検証が必要です。
また、AIの判定結果を単独で使うのではなく、呼吸機能、症状、過去CTとの変化、臨床経過と組み合わせて、医師の判断を支援する仕組みとして評価していくことが重要です。