ひとことで言うと
患者自身のスマートフォンにアプリ登録が難しい患者にも貸出スマートフォンを用意することで、眼科外来の全患者に同じ患者支援アプリによる診察呼び出しを提供した実践報告である。
なぜこの研究をしたのか
大阪大学医学部附属病院では、2024年より患者支援アプリを導入し、外来診療の呼び出し、再診受付、後払い決済、医療情報共有などに活用していた。一方で、眼科では外来診療の待ち時間が長く、2025年5月のアイセンター開設後は待合スペースが狭いという課題も生じた。アプリによる呼び出しで患者は院内で自由に待てるようになるが、アプリ登録率は外来患者の3割程度であり、高齢者などスマートフォンへの登録が難しい患者への対応が必要だった。
どう調べたか
眼科外来でアプリ未登録の患者にも呼び出し機能を使えるように、Android端末の貸出スマートフォンを70台用意した。受付スタッフが患者IDのバーコードをスマートフォンのカメラで読み取ることで、貸出スマートフォンと患者を紐づけられる仕組みを導入した。端末は院内専用Wi-Fiのみで利用し、院外などネットワークがつながらない場所ではロック画面になるようにした。また、MDMで使用状況や位置情報を管理し、専用の充電棚も用意した。運用後、2025年5月26日から5月30日までの貸出台数、患者数、アプリ登録状況などを確認した。
何がわかったか
2025年5月26日から5月30日までの1週間で、貸出スマートフォンは715台、1日平均143台貸し出されていた。貸出スマートフォンは1日平均65台使用され、回転率は2.2であった。
同期間の眼科外来患者数は1121人で、そのうち自身のスマートフォンにアプリを登録していた患者は331人だった。貸出スマートフォンを使うことで、自身のスマートフォンにアプリ登録がない患者にも、同じ患者支援アプリによる呼び出しを提供できた。
なぜ大事なのか
貸出スマートフォンを活用することで、患者自身のスマートフォン利用状況やアプリ登録の有無に左右されず、眼科外来の呼び出しを同じ仕組みで行えるようになった。患者は診察や検査の呼び出しをスマートフォン通知で把握でき、呼び出しまで院内の好きな場所で過ごせるようになった。また、医療者側は患者自身のスマートフォンか貸出スマートフォンかを意識せず、同じ操作で呼び出しを行える点も重要である。
次に目指すこと
今後は、科内検査の呼び出しにもさらに活用していく予定である。一方で、貸出スマートフォンの持ち帰り、日々の台数確認、患者自身のスマートフォンの電波状況やプッシュ通知設定によるトラブルなど、端末管理や患者デバイス利用に関する課題も示された。