ひとことで言うと
電子カルテの診療テンプレートから患者に有用な情報を選び、患者向け表現に変換して、医療情報銀行へ連携する仕組みを実装した研究。
Keywords
PHR、医療情報銀行、HL7 FHIR、患者支援、EHR
なぜこの研究をしたのか
今日の医療では、慢性疾患やがんなどで、1人の患者が複数の医療機関にかかることが少なくない。地域連携システムとしてEHRは普及してきたが、医療機関間の協定を前提とするため、カバーできる医療機関に制限が生じやすく、患者自身が長期に医療記録を保持・閲覧する仕組みとしては十分ではなかった。
一方、PHRは患者自身が長期間にわたって医療記録を管理し、自分の医療情報にアクセスできる仕組みである。研究グループはこれまで医療情報銀行を構築し、禁忌アレルギーデータ、外来処方内容、検体検査結果などを返却してきたが、患者の病態把握にはそれだけでは不十分であり、疾患・病態ごとに返却すべき情報も異なるという課題があった。
どう調べたか
電子カルテで医師が経過記録を記載する際に使っている診療テンプレートをもとに、患者へ返却すべき項目を選別し、患者返却用テンプレートへ転記する仕組みを用いた。
診療テンプレートは医療者向けの表現であるため、患者が理解できる表現に置き換えた。また、患者向けコメントの入力欄を新設し、テンプレート上に医療情報銀行へ連携するかどうかを選ぶチェックボックスを設けた。医療情報銀行への出力には、HL7 FHIR Questionnaire Responseを用いた。
実装対象としては、ペースメーカ植込み患者の診療を設定した。ペースメーカ植込み、外来診察、遠隔モニタリングの各診療場面で用いられるテンプレート項目を、患者にとっての有用性に応じて分類し、連携対象と表示優先度を整理した。
何がわかったか
既存の診療テンプレートを活用することで、経過記録との重複入力を避けながら、ペースメーカ診療に関する情報をひとつの診療課題として医療情報銀行へ出力する仕組みを実装できた。
また、医療者向けの詳細なテンプレート項目の中から、患者に有用な情報を選び、一部を患者向けの表現や粒度に変換することで、患者が参照しやすい形で診療情報を返却できる可能性が示された。
なぜ大事なのか
電子カルテの診療データを無秩序にPHRへ返却すると、患者が内容を理解しにくくなったり、データの利活用を妨げたりする可能性がある。
疾患・病態に関連する診療データを「診療課題」としてひとまとまりにして医療情報銀行へ連携することは、患者が自身の診療内容を理解しやすくするだけでなく、健康情報のさらなる利活用にもつながると考えられる。
次に目指すこと
本研究では、ペースメーカ診療を対象に、診療テンプレートをもとにした医療情報銀行への連携の仕組みを実装した。今後は、診療課題ごとに関連する情報を整理して連携する考え方を、患者の診療結果の理解や保持に役立つ仕組みとして発展させていくことが期待される。