ひとことで言うと
カテーテル治療で使用した医療機器を、GS1バーコードとRFIDを用いて患者ごと・使用順ごとにリアルタイム記録するシステムを開発し、高い記録精度を示した研究。
なぜこの研究をしたのか
心臓カテーテル検査室では、ペースメーカー植込みや冠動脈インターベンションなどで多様な医療機器が使われる。これらの機器は患者に長期的な影響を与えうる一方、医療機器のリコールは発生しており、どのロット番号の機器が、どの患者に、どの手技状況で使われたかを正確に記録することが重要である。既存の追跡制度には対象機器や記録方法の制約があり、長期保管や検索に課題があった。
どう調べたか
病院に納品された医療機器について、個装に表示されたGS1バーコードを読み取り、RFIDタグと紐づけて個装に貼付した。カテーテル検査室にはRFIDタグ読み取り・回収装置を設置し、使用済みの医療機器包装を順番に投入することで、GTIN-13、有効期限、ロット番号、読み取り時刻をリアルタイムに記録した。装置は放射線情報システムと医療材料マスターデータベースにも接続され、患者情報や製品情報を取得した。
記録順序の精度は、2024年8月から9月に実施された予定PCI症例を用いて評価した。医師のPCI手技レポートと血管造影画像から主要デバイスの使用順を確認し、RFIDタグまたはGS1バーコードの読み取り時刻から得られた順序と比較した。一致度はKendallの順位相関係数で評価した。
何がわかったか
この装置は5か月間で568件のカテーテル手技に使用され、9,347個の医療材料が読み取り・登録された。そのうち8,876個、すなわち95%はRFIDタグで読み取られ、残りはGS1バーコードで読み取られた。
予定PCI 21例のうち、主要デバイスが5個未満の5例を除いた16例で解析したところ、Kendallの順位相関係数は0.95±0.12であり、主要デバイスの使用順を高い精度で記録できた。相関係数が0.9未満だった2例では、病院在庫ではなく業者が持ち込んだ機器が使われており、RFIDではなくGS1バーコードで後から読み取られたことが順序のずれにつながっていた。
なぜ大事なのか
このシステムにより、GS1に含まれるロット番号などの医療機器情報を、実際に使用された患者情報と結びつけて記録できるようになった。さらに、使用された順序も記録できるため、医療機器のトレーサビリティを高めるだけでなく、PCI手技の流れを可視化し、教育や手技改善、患者安全の向上に役立つ可能性がある。
次に目指すこと
今後の応用として、記録された時系列データを用いた生成AIによるPCI手技レポート下書き作成、熟練者と研修者の手技順序の比較による教育支援、通常パターンからの逸脱を利用した合併症の早期検出、過去症例との比較によるPCI技術改善が想定されている。
一方で、RFIDタグの導入にはコストがかかる。また、時系列精度の検証では、使用順を手技レポートや画像から正確に判断できないワイヤーやマイクロカテーテルは解析対象から除外された。