ひとことで言うと
肺がん患者の胸部CTレポートを自然言語処理で解析し、T分類を付与できるレポートの選別とT分類の自動化を目指した研究である。
なぜこの研究をしたのか
肺がんにおけるTNM臨床分類は治療方針を決めるうえで重要な情報であるが、画像診断レポートの非構造化された記載から手作業で情報を抽出する必要があり、二次利用の障壁となっていた。
また、画像診断レポートには確信度の低い表現が含まれることがあり、1つのcTNMを付与することが難しい場合がある。そのため、自然言語処理により、確信度の高い情報を含むレポートを選び、T分類を自動的に付与する仕組みが求められた。
どう調べたか
大阪大学医学部附属病院で肺がんと診断され、がん登録された患者のうち、2019年1月から2021年12月に撮像された胸部CTレポートを対象とした。
所見欄または診断欄に肺がんの疑いが記載されているレポートから、training set 284件、test set 165件を抽出した。
自然言語処理のタスクは2つ設定された。
1つ目は、レポートを以下の3種類に分類するタスクである。
- Definite:確信度の高い情報を含み、最終的に1つのT分類が付与可能なレポート
- Possible:原発腫瘍の進展度に関する情報はあるが、不確実性のある情報によりT分類を1つに絞れないレポート
- N/A:T分類を付ける情報が含まれないレポート
2つ目は、Definiteとアノテーションされたレポートを対象に、肺がん取り扱い規約第9版に基づいてT分類を行うタスクである。
方法としては、過去に著者らが開発した深層学習ベースの情報抽出システム、T分類の判定に必要な情報をルールベースで構造化するアルゴリズム、T分類を行うためのルールベースのアルゴリズムを組み合わせた。
何がわかったか
Definite、Possible、N/Aへの分類タスクでは、加重平均F1値がtrainingで0.964、testで0.939であった。
Definiteとアノテーションされたレポートを対象としたT分類タスクでは、加重平均F1値がtrainingで0.936、testで0.901であった。
さらに、自然言語処理によってDefiniteと正しく分類されたレポートを対象にT分類を予測した場合、加重平均F1値はtrainingで0.965、testで0.955と高い性能を示した。
なぜ大事なのか
胸部CTレポートから肺がんのT分類を手作業で抽出する負担を減らし、画像診断レポートの二次利用を進める可能性がある。
Definiteと分類されたレポートではシステム出力をそのまま利用し、PossibleやN/Aと分類されたレポートでは他のモジュールを人手で確認することで、アノテーションコストと精度の両立が期待される。
次に目指すこと
実臨床下で用いる場合には、Definiteと分類されたレポートは本システムのT分類を利用し、PossibleやN/Aと分類されたレポートは他のモジュールを人手で確認する半自動化の運用が想定される。