ひとことで言うと
胸部CTの放射線レポートから肺結節のフォローアップ推奨例を自然言語処理で抽出し、実際の診療記録を確認したところ、一部でフォローアップが記録されていない可能性が示された研究。
Keywords
自然言語処理、放射線レポート、EHR、医療従事者支援、肺結節
なぜこの研究をしたのか
放射線レポートは放射線科医と依頼医の重要なコミュニケーション手段である一方、多くは自由記載であり、重要な所見やフォローアップ推奨が十分に対応されないことがある。特に肺結節のような所見では、フォローアップの見落としや遅れが患者ケア上の問題につながる可能性があるため、この研究では、放射線レポートに記載されたフォローアップ推奨が実際に適切に管理されているかを評価した。
どう調べたか
大阪大学医学部附属病院の放射線情報システムに保存された2020〜2023年の放射線レポートのうち、初回胸部CTレポート10,507件を対象とした。
研究では、臨床エンティティ抽出と関係抽出からなる自然言語処理システムを用いてレポートを構造化し、肺に関する解剖学的位置、結節に関する画像所見、フォローアップ記載が関連づけられたレポートを抽出した。
抽出された症例について、初回検査から400日以内に胸部CTまたはPET-CTが追加で実施されているかを確認した。追加画像検査が確認できなかった症例については、一部をランダムに抽出し、医師が電子カルテを手動レビューして診療状況を確認した。
何がわかったか
10,507件の初回胸部CTレポートのうち、1,501件、14.3%が「肺結節のフォローアップ推奨レポート」と分類された。そのうち958件、63.8%では400日以内に追加の胸部CTまたはPET-CTが行われており、適切にフォローアップされた可能性が高いと判断された。
一方、追加画像検査が確認できなかった543件から42件をランダム抽出して電子カルテをレビューしたところ、17件、40.5%でフォローアップに関する記録が確認できず、適切な管理が行われていなかった可能性が示された。
なぜ大事なのか
この研究は、放射線レポートに記載されたフォローアップ推奨が診療過程で見落とされる可能性を示している。自然言語処理を用いて対象レポートを抽出し、実際のフォローアップ状況を確認する仕組みは、放射線科医と依頼医のコミュニケーション改善や、患者ケアの安全性向上につながる可能性がある。
次に目指すこと
本研究では偽陰性例を正確には評価できていない。フォローアップ記載をもとに肺結節症例を抽出しているため、悪性の可能性が高い結節であってもフォローアップ記載がない場合には抽出されない可能性がある。今後は、肺結節フォローアップレポートの詳細な分析を行い、アルゴリズムの改善を進める必要がある。