ひとことで言うと
電子カルテ上で医師が薬剤アラートを突破する理由を入力し、その情報を薬剤師の監査や看護師の投与時観察に活用できるよう共有した研究。
Keywords
医療安全、医師オーダエントリシステム、薬剤アラート、EHR、医療従事者支援
なぜこの研究をしたのか
電子カルテの薬剤オーダ時アラートは医療安全に役立つ一方、表示されるアラートが多いとアラート疲労につながり、医師が十分に確認しないまま処方・注射オーダを進める可能性がある。
禁忌・アレルギーや副作用に関するアラートを医師が突破した場合、その理由を薬剤師や看護師に伝えることで、薬剤監査や投与時の患者観察につなげる必要があった。
どう調べたか
大阪大学医学部附属病院で、薬剤禁忌・アレルギーチェックと副作用チェックに対し、エラーアラートを突破する際に医師が理由を入力する仕組みを構築した。
理由入力には、あらかじめ用意した定型文とフリーテキストを使えるようにした。入力された理由は薬剤部門システムに連携され、処方箋への印字、注射ラベルへのアラート突破マーク表示、電子カルテの指示カレンダーからの確認により、薬剤師・看護師が把握できるようにした。
2022年2月1日から5月31日までのエラー・警告アラート突破状況と、入力された突破理由を解析した。
何がわかったか
本文の表1・表2に基づくと、薬剤禁忌・アレルギーチェックでは、エラー突破が133回、警告突破が115回確認された。副作用チェックでは、エラー突破が81回、警告突破が94回確認された。
エラー突破理由は合計214件登録され、そのうち200件は定型文から選択されていた。最も多かった理由は「治療に必要であり、慎重に投与を行う」で122回であり、次に「投与実績あり(副作用は出現せず)」が62回であった。
なぜ大事なのか
アラート突破理由を入力必須にすることで、医師に重要なアラートを確実に認識させる仕組みになった。
また、薬剤師は突破理由を薬剤監査に活用でき、看護師は投与時に患者状態を慎重に観察すべき薬剤を把握できる。さらに、「投与実績あり(副作用は出現せず)」のような理由が多い薬剤については、禁忌・アレルギーや副作用登録を見直し、不要なアラート表示を減らすための院内フィードバックに活用できる。
次に目指すこと
本システムでは、実際に薬剤処方・注射オーダに至ったケースのみが記録される。アラート画面で「投与中止」を選択し、薬剤投与に至らなかったケースは記録されず、解析対象外であった。
今後は、アラート突破だけでなくアラート表示状況も把握し、アラートによる気づきとアラート疲労の両面から、より適切なアラート設定を行う仕組みを検討する必要がある。