ひとことで言うと
薬剤オーダ時のアラートは医療安全に重要だが、不要・低重要度の表示が多いと重要なアラートの見逃しにつながるため、表示対象・タイミング・表示状況の把握を見直す必要がある。
Keywords
システム、医療従事者支援、EHR、医療安全、アラート疲労
なぜこの研究をしたのか
医療情報システムは医療安全に貢献する重要な役割を持ち、薬剤オーダ時には禁忌・アレルギー、副作用、相互作用、B型肝炎ウイルス再活性化予防など多くのアラートが実装されている。一方で、管理者の要望によりアラートは増えやすく、減らす取り組みは意識しないと進みにくい。重要度の低いアラートが過多になると、医師がアラートに慣れてしまい、重要なアラートまで見逃す「アラート疲労」が生じる可能性がある。
どう調べたか
大阪大学医学部附属病院で薬剤オーダ時に実装されている25種類のアラートを、医療安全、薬剤管理、医事管理の観点から整理した。また、禁忌・アレルギーチェック、副作用チェック、B型肝炎チェックでアラート突破理由の入力を求める運用を行い、2022年2月1日から5月31日までに禁忌・アレルギーチェックおよび副作用チェックで発生したアラート突破理由を解析した。
何がわかったか
大阪大学医学部附属病院の薬剤オーダには25種類のアラートがあり、その内訳は医療安全に関わるものが11種類、薬剤管理に関わるものが9種類、医事管理に関わるものが5種類であった。医療安全目的以外のアラートも含まれており、アラート疲労の一因になり得ることが示された。
アラート突破理由では、「投与実績あり(副作用は出現せず)」が処方・注射を合わせて62回選択されていた。これは、過去に禁忌・アレルギーや副作用が登録されていても、医師が登録情報を見直さずにアラートを突破しながら処方している可能性を示しており、不要なアラートが繰り返されることでアラート疲労につながると考えられた。
なぜ大事なのか
アラートは患者安全を守るための機能だが、頻回で低重要度の表示が多いと、医師が機械的にアラートを消去し、重要な警告を見落とす危険がある。適切な相手に、適切なタイミングで、重要度の高いアラートを表示することが、患者安全と医療現場の負担軽減の両方に重要である。
また、アラート突破理由を入力させる仕組みは、医師にアラートの存在を確実に認識させるだけでなく、薬剤部門システムでの薬剤監査、注射ラベルや指示システムを通じた看護師の確認にも活用され、アラート突破後の医療安全にも貢献している。
次に目指すこと
現状では、どのアラートがどの程度表示され、どの程度突破されているかを把握することが難しい。今後は、病院情報システムからアラート表示回数、アラート表示時間、アラート突破回数などの客観的データを取得し、そのデータに基づいてアラート疲労対策を議論できるようにする必要がある。そのため、このような把握機能の標準実装が望まれる。