細菌尿を示唆する尿白血球エステラーゼ/亜硝酸塩陽性患者でも、SGLT2阻害薬は安全に使用可能である
Nephrol Dial Transplant. 2026 Mar 16:gfag062. doi: 10.1093/ndt/gfag062. Epub ahead of print. PMID: 41837534
Urinary dipstick findings and UTI risk with SGLT2 inhibitors: a post hoc analysis of the CANVAS and CREDENCE trials.
Doi Y, Hamano T, Fukuda-Doi M, Isaka Y.
SGLT2阻害薬は、2型糖尿病、慢性心不全、および慢性腎臓病の予後を改善する薬剤として、いまや臨床現場に欠かせない存在となっています。一方で、その作用機序により尿糖排泄を促進することから、副作用としての尿路感染症(UTI)の発症を懸念する声は根強くあります。特に、投与前の尿定性検査で白血球エステラーゼ(LE)や亜硝酸塩(NIT)が陽性となり、潜在的な細菌尿が疑われる患者において、SGLT2阻害薬を開始することがUTIのリスクをさらに増幅させるのかについては、これまで十分な知見が得られていませんでした。
本研究では、Yale大学のYODAプロジェクトを通じて取得したカナグリフロジンの大規模臨床試験(CANVAS ProgramおよびCREDENCE試験)の個人レベルデータ(8,614名分)を用い、ベースラインの尿定性検査結果とSGLT2阻害薬使用によるUTIリスクの関連を事後解析しました。
解析の結果、全体としてカナグリフロジン群のUTI発症リスクはプラセボ群と比較して有意な増加を認めず、良好な安全性が確認されました。ベースラインのLEやNITが陽性であることは、その後のUTI発症の予測因子ではありましたが(図1)、これらの陽性群(高リスク群)においても、薬剤投与によるリスクの相対的な増加はプラセボ群と一貫しており、統計的な交互作用は認められませんでした(図2)。

図1.尿中LE/NITステータスと尿路感染症発症リスクの関連

図2.LE/NITステータス別のカナグリフロジンの治療効果
本研究の成果は、日常臨床で頻用される尿定性検査の結果にかかわらず、SGLT2阻害薬がUTIのリスクを特異的に高めることはなく、安全に使用できることを示唆しています。尿検査で細菌尿が疑われる症例であっても、過度にUTIを恐れることなく、SGLT2阻害薬による心腎保護の恩恵を多くの患者に提供できる可能性を示す重要な知見であると考えられます。
