研修医レクチャー 腹膜透析とは | 大阪大学腎臓内科

研修医レクチャー8 腹膜透析とは

日本と世界における腹膜透析の現状

日本では末期腎不全で人工透析を受けている患者は年々増加し続け、30万人に達しようとしています。日本で腹膜透析をうけているのは透析患者さん全体の5%未満に過ぎません。2004年の調査では、欧米で10%、アジア諸国では18%を占めていることがわかりました。


Grassmann A Nephrol Dial Transplant2005; 20: 2587-93

日本で腹膜透析が選択されていない理由に、腹膜透析を実施できる医療機関、医療スタッフが血液透析にくらべて圧倒的に少ないことなどが原因と考えられます。しかし、腹膜透析にも長所があり、選択肢として念頭におかれるべき治療法です。

腹膜透析の実際

腹膜透析には、自分で透析液を交換するCAPD(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis:連続携行式腹膜透析)と、機械を用いてが自動的に透析液を交換するAPD(Automated Peritoneal Dialysis:自動腹膜透析)があります。ライフスタイルなどに合わせて治療法を選択することができます。

これはツインバッグシステムを用いたCAPDでの例です。あらかじめ腹部にカテーテルを留置しておき、これを介して腹腔内へバッグに入った透析液を入れます。数時間後にこれを空のバッグに出して捨てた後、新しい透析液を入れます。このような操作を1日4〜5回、自分で行います。液の出し入れなどバッグの交換には1回に約30分かかります。

腹膜透析の利点

腹膜透析は子供からご高齢の方までほとんどの人ができる治療法です。もともと透析療法には、患者の社会復帰を促すという意味合いが大きく、いかに生活の質を落とさないかが重視されます。患者の意思がしっかりとしている場合には、週に何度か透析病院に通院するより、自己にて管理できる腹膜透析のほうが、社会復帰に有利に働くことがあり、意思のしっかりした患者に勧められる治療法です。また、高齢者の透析においても、腹膜透析を使用することで、自宅で過ごす時間が長くなり、介護上の問題の軽減、医療費の軽減につながるケースも見受けられます。腹膜透析は循環動態に与える影響が血液透析より少ない長所もあるため、心血管合併症のある患者での透析法として有利に働くこともあります。

これらはあくまで一例ですが、近年の腹膜透析液の改良、システムの改善により、これまで難しいと考えられがちであった症例においても、積極的に導入を考慮する動きが出てきております。