Stage 3-5のCKDにおける年齢と尿蛋白が予後に与える影響 腎専門医のコホート研究より

慢性腎臓病(Chronic kidney disease; CKD)は一般成人人口の約1割をも占めていますが、一口にCKDといっても、全員が同じように透析や腎移植を必要とするような末期腎不全になったり、心血管疾患を発症したりするわけではありません。そこで私たちは、年齢と尿蛋白がCKDの進行度によって大きく異なることに着目し、これらの因子を使うことで、腎予後と生命予後に関して比較的簡単にリスクを層別化できるのではないかと考えました。

対象は、りんくう総合医療センター腎臓内科を2004年から2007年の間に初診となったCKD stage 3-5の症例のうち、悪性腫瘍の合併や免疫抑制剤の投与を受けていない461人の患者さんです。解析の結果、年齢と顕性蛋白尿は腎予後と生命予後に対して、非常に対照的な影響を持っていることが分かりました。次に、年齢(65歳)と顕性蛋白尿の有無で全ての患者さんを12グループに層別化し、透析前死亡と末期腎不全の発症率を比較しました。

この図を見ると、患者さんの腎予後と生命予後が、同じCKDでもいかに異なるかが明確に示されています。このことは、個々の患者さんにあわせた治療の重要性を示唆するとともに、画一的な治療や 血液検査から推定された腎機能のみによるStage分類に警鐘をならすものとなっています。

Clin J Am Soc Nephrol 5(9): 1558-65, 2010

Impact of age and overt proteinuria on outcomes of stage 3 to 5 chronic kidney disease in a referred cohort

小尾佳嗣1、木村友則1、長澤康行1、山本陵平1、安田圭子 2、佐々木公一2、北村温美1、今井圓裕1、楽木宏実1、猪阪善隆1、林晃正2
1大阪大学大学院医学系研究科 老年・腎臓内科学、2りんくう総合医療センター市立泉佐野病院 腎臓内科