保存期慢性腎臓病患者における閉塞型睡眠時無呼吸に関する検討

慢性腎臓病(CKD)、特に透析療法を受けている患者さんが閉塞型睡眠時無呼吸を高頻度に合併することはよく知られています。閉塞型睡眠時無呼吸は不眠や日中の眠気、うつ症状の原因となるだけでなく、透析患者さんの心血管死の危険因子であることが報告されています。透析患者さんにとって閉塞型睡眠時無呼吸は生活の質や生命予後に関わる重要な合併症ですが、一方、透析療法に至る前段階の保存期CKD患者さんにおける腎機能と閉塞型睡眠時無呼吸との関係についてはこれまでほとんど検討されていませんでした。

そこで私たちは保存期CKD患者さん100症例(推算糸球体濾過量の中央値 28.5ml/min/1.73m2)における閉塞型睡眠時無呼吸と腎機能との関連を調べるために横断的研究を行いました。睡眠時無呼吸の診断および閉塞型・中枢型無呼吸の鑑別には睡眠時無呼吸簡易診断装置(Morpheus; 帝人)を用いました。結果、65%の患者さんに睡眠時無呼吸が認められ、全例が閉塞型でした。これは一般人口における閉塞型睡眠時無呼吸の有病率のおよそ5〜10倍と考えられます。また、CPAP(continuous positive airway pressure; 持続陽圧呼吸)の適応となる中等症及び重症の患者さんの割合は33%と高率でした。興味深いことに、推算糸球体濾過量と睡眠時無呼吸の重症度(無呼吸低呼吸指数)に有意な負の相関が認められました(図)。この相関関係は年齢、性別、BMI、糖尿病や心血管疾患の有無などの背景因子で調整しても維持されました。

   この研究結果から、保存期CKDと閉塞型睡眠時無呼吸の関係は単にメタボリック症候群や心血管疾患を介した間接的なものであるだけでなく、直接的に互いを増悪させる機序が存在することが示唆されます。今後、閉塞型睡眠時無呼吸がCKDの進行に及ぼす影響やCPAPによる治療介入効果が検証される必要があります。

Clin J Am Soc Nephrol 6: 995-1000, 2011

High prevalence of obstructive sleep apnea and its association with renal function among nondialysis chronic kidney disease patients in Japan: a cross-sectional study.

坂口悠介1、勝二達也1、川端裕彰1、新畑覚也1、鈴木朗1、金子哲也1、岡田倫之2、猪阪善隆3、楽木宏実3、椿原美治1
1大阪府立急性期・総合医療センター 腎臓・高血圧内科、2同 臨床検査科、3大阪大学大学院医学系研究科 老年・腎臓内科学