院内感染発生中の、血液浄化センターにおけるCOVID-19感染の臨床的特徴

Clin Exp Nephrol. 2021 Feb 8. PMID: 33555454

Clinical characteristics of COVID‑19 infection in a dialysis center during a nosocomial outbreak.

Rei Iio, Tetsuya Kaneko, Hitoshi Mizuno, Yoshitaka Isaka.

 

2020年4~5月に、当院(第二大阪警察病院)でCOVID-19感染症の院内感染が発生し、血液浄化療法を受けていた患者さんにもCOVID-19感染が発生しました。血液浄化療法では、患者さんや医療スタッフ間での接触・飛沫・エアロゾル感染や、ベッドなどの医療機器を介した接触感染による感染症伝播のリスクを常に抱えています。過去には新型インフルエンザウイルス感染症や中東呼吸器症候群 (MERS)などのウイルス感染が、透析センターを介して広がったという報告がありますが、一方で、COVID-19感染が透析センター内で感染拡大しなかったという報告もあります。院内感染という二次感染のリスクが極めて高い状況下で、どのような患者さんにCOVID-19感染症が発生しやすかったのか、また、血液浄化センター内での感染の可能性があるかどうかについて検討しました。

2020年4月3日~4月29日に当センターで28人の患者さんが血液浄化療法を受け、RT-PCR検査を行った18人中、7人にCOVID-19感染が確認されました(経過は下記の図を参照)。7人全員が院内感染の発生している病棟に入院していました。観察期間中に院内感染病棟では患者さんや医療スタッフがCOVID-19に感染していましたが、当センターの医療スタッフに感染は確認されませんでした。ロジスティック回帰分析では、患者さんの併存疾患重症度や入院病室の状態(大部屋・個室)は感染に関連せず、寝たきりの状態がCOVID-19感染に関連している(オッズ比 13.33, p<0.05)ことがわかりました(表)。寝たきりの患者さんが感染しやすい理由として、医療スタッフとの接触が多いことが考えられました。

図:当センターで血液浄化療法を行っていた、COVID-19陽性が確認された7人の患者さん(A~G)の経過のまとめ

表 : COVID-19感染を目的変数としたロジスティック回帰分析

一方、血液浄化センターを介した感染伝播について、COVID-19を発症した患者さんと、同じ部屋同じ時間帯に透析を受けたことや、ベッドが隣り合わせになっていたことに関して検討しましたが、いずれも新たなCOVID-19感染の発生に関連しませんでした(表)。当センターではマスクの装着や換気を励行しており、センター内でのエアロゾルや飛沫を介した感染は否定的でした。

今回の結果から、血液浄化センター内でのエアロゾルを介した感染は考えにくく、寝たきりの患者さんが感染しやすかったことから、血液浄化療法を受けている患者さんに対しても、接触・飛沫感染対策が重要であることがわかりました。