第13回 甲状腺検査評価部会発言要旨

 

【中間報告の文書について】

細胞診の実施率・B判定の頻度が交絡因子として記載されているのは問題

➡この点は少しわかりにくいかもしれないので以下に解説します。データでは細胞診の実施率が多い、B判定の率が多い地域ほどがんの検出率が高くなっています。まとめではこれらを交絡因子としています。しかし、実際にがんが増えていても細胞診の実施率やB判定の率は増えます。そうでないとは断言できないのです。これを交絡因子だと書いてしまうと、本来同じ基準で判定しなければならないB判定や細胞診の適応が、実施者によって実際はそれぞれ別の基準で行われていたことになります。県にそうではないのか、と確認しましたが、そうではないという回答でした。この点で矛盾しています。おそらく実際には実施者によって裁量に相当のブレがあったのだと思います。逆に言うと超音波検査というものは人が中心となって実施されるものである以上、この程度(と言ってもデータを大きく動かしますが)のブレはあると考えるべきでしょう。

➡これに関連してですが、他の方が意見を言ったので言いませんでしたが、私も今回のまとめの結論は「放射線の影響はなかった」ではなく「放射線の影響は見えなかった」だと思います。報告された福島県民の被曝量で甲状腺がんのリスクが極端に上がるとは思われません。超音波検査は高精度であるがゆえに、人為的なブレが生じやすく、かつ放射線由来以外の過剰診断での甲状腺がんを多数拾い上げます。両者の区別はつきません。ですから、仮に多少被曝影響があったとしてもこのような解析手段を取る限り過剰診断例に埋もれてしまって差は検出できないと思います。今となっては手遅れですががん統計で発症例を丹念に追いかける方がわかりやすかったはずです。過剰診断が多数出る、と判明してしまった時点で検査としての価値が大きく損なわれてしまったのです。

【説明文書について】

この文書には8割方反対である。ただ、今更言っても仕方がないので重要な点だけ繰り返す。

・インフォームドコンセントというより検査の宣伝文書になってしまっている。これでは「将来の不要なトラブルを避け、対象者と医療者を守る」という目的を果たせない。

・利益のところで根拠のない楽観論が記載されているのは大きな問題である。

・利益のところに、不安の解消とか被曝影響がわかるとかいう子供自身の利益ではないことが記載されている。これは大人の利益である。大人の利益のために子供を害することを承認しますよ、という文書にサインさせるのは倫理上問題がある。

・文面を医事紛争の専門家に確認してもらうべきである。

➡これらについては今回の会議の前に何度も文書で申し入れをしてきたことです。

【記者会見】

私への質問はありませんでしたが、他の方の記者に対する回答への私のコメントを記載します。

医学倫理では対象者に害をもたらす調査は禁じられています。甲状腺超音波検査が無症状の対象者にもたらす利益について明かなエビデンスが無い以上、「害の存在を認めつつ、検査を継続する」ことは医学倫理上は許されません。福島県が取るべき対応は2つです。あくまで害の存在を認めないか、検査を中止するかです。


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