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大阪大学大学院医学系研究科 免疫発生学研究室(C7)(旧腫瘍病理)

電話:06-6879-3880
FAX:06-6879-3889

E-mail:hirano@molonc.
med.osaka-u.ac.jp

研究実績

初期発生における体軸形成、特に原腸陥入の分子機構に関する発生工学的、分子生物学的研究 (Molecular mechanisms of the coordinate regulation of cell movement during gastrulation)

Yamashita, S., C. Miyagi, A. Carmany-Rampey, T. Shimizu, R. Fujii, A. F. Schier and T. Hirano. Stat3 controls cell movements during zebrafish gastrulation. Dev. Cell. 2: 363-375, 2002.(PubMed) (Evaluations and comments from leading biologists)





脊椎動物の初期発生において背腹軸、前後軸、左右軸などの、体軸形成は最も重要な過程の一つである。両生類の受精卵を用いた研究から、体軸形成には大別して4つのシグナルが関与していることが示されている(4シグナルモデル)。まず、両生類の受精卵は、大きく動物極と植物極に分かれており、胞胚期(blastula stage)に、その植物極側から二つの誘導シグナルが、胞胚周縁部(marginal zone)に、背側および腹側中胚葉に誘導する。誘導された背側・腹側中胚葉は、さらに、中胚葉の背側および腹側の構造を明確にするための誘導シグナル(背側化シグナル、腹側化シグナル)を産生する。中でも、背側中胚葉を誘導する植物極背側部は、将来内胚葉になる部分であり、Nieuwkoopセンターと呼ばれる。Nieuwkoopセンターからのシグナルによって誘導される背側中胚葉の一部は、原腸陥入に伴い中軸中胚葉として外胚葉を裏打ちし、中胚葉の背側化を誘導するとともに、外胚葉に対して神経誘導を行うことが示されている。この背側中胚葉の部分(解剖学的には原口上唇部)は、受精卵腹側周縁部に移植することにより二次軸を誘導することから、この部分に体軸形成に必要不可欠なコンポーネントが存在しているという意味でSpemannオーガナイザーと呼ばれている。オーガナイザーは、それ自身が中軸中胚葉に分化するが、さらに、神経外胚葉を誘導したり、中胚葉を背側化する活性を有する。さらにオーガナイザーの重要な機能として原腸陥入の誘導能があげられる。受精卵は、外胚葉、中胚葉、内胚葉が2次元的配置をしているが、原腸陥入により、これが三次元的配置に再配置される。この新たなる位置情報がその後の各臓器の形成、それを構成する細胞の運命決定に重要な影響を与える。したがって、原腸陥入は初期発生において最重要な課程の一つである。現に、GilbertのDevelopmental Biology には以下のような記述がされている。

Gastrulation: Reorganizing the embronic cells.

It is not birth, marriage, or death, but gastrulation, which is truly the most important time in your life. Lewis Wolpert (1986).

Gastrulation is the process of highly intergrated cell and tissue movements whereby the cells of the blastula are dramatically rearranged. The blastula consists of numerous cells, the positions of which were established during cleavage. During gastrulation, these cells are given new positions and new neighbors, and the multilayered body plan of the organism is established. The cells that will form the endodermal and mesodermal organs are brought inside the embryo, while the cells that will form the skin and nervous system are spread over the outside surface. Thus, the three germ layers----outer ectoderm, inner endoderm, and interstitial mesoderm---are first produced during gastrulation. In addition, the stage is set for the interactions of these newly positioned tissues.

ゼブラフィッシュは受精から成魚になるまでが非常に短く(24時間でほぼ成魚に近い状態になる)、また胎魚が透明で観察が容易である。さらにライフスパンが短いこと、遺伝的解析が進んでいること、受精卵へのRNA, DNAの注入が容易な点が脊椎動物の発生を理解する上で利点があり、マウスの系と相補的に使用することが可能である。実際、我々はすでに、ゼブラフィッシュ受精卵に発現ライブラリー由来のRNAを注入し、ゼブラフィッシュ個体の背側化を指標に、新規のホメオボックス遺伝子、dharma(ダルマ)の単離に成功した(Genes & Development 12: 2345-2353, 1998)。dharma遺伝子は、中期胞胚転移(MBT)直後から胚盾期に非常に特異的に発現される。又、dharma遺伝子は、オーガナイザーを細胞非自律的に誘導されることを証明した。さらにSolnica-KrezelのグループとTalbotのグループとの共同研究でbozozok変異ゼブラフィッシュがdharma 遺伝子の変異によることを明らかにした(Development, in press)。すなわちdharma遺伝子はオーガナイザー形成と前頭部の形成に必須の遺伝子であることを明らかにした。また原腸陥入の開始直前にSTAT3転写因子が活性化されることを見いだすとともに、gp130/JAK/STAT3サイトカインシグナルが原腸陥入における細胞の移動に必須のシグナルを与えていることを明らかにした(Developmental Cell in press, 2002)。本研究は、初期発生におけるオーガナイザー形成や原腸陥入の分子機構や神経初期発生と前頭部形成の分子機構を明らかにしようとするものであり、受精卵がどのようにして成体に成るのかの根本的な分子設計機構を明らかにしようとするものである。本研究は生命科学や再生医学に大いに貢献することが期待できる。

具体的な研究方法

サイトカイン受容体gp130を介するシグナル伝達機構、特にJak/Statシグナル伝達経路の神経初期発生や神経系の機能発現やその維持における役割とその分子機構

a) gp130からのシグナルの初期発生における役割の解明

我々は、すでにゼブラフィッシュのgp130, JAK1, JAK2, STAT3, STAT5および哺乳動物細胞でまだ同定されていない新規のJAK, STAT各々1つのcDNAを単離している。各々に関してdominant negative遺伝子を作成する。即ち、gp130に関しては、Box1, Box2を含む細胞内領域のほとんどを欠失させる。JAKに関しては、ATP結合ドメインに変異を挿入する、あるいはキナーゼドメイン(JH1)全てを欠失させる。STATに関しては、JAKによりリン酸化されるチロシン残基をフェニールアラニンに変異する、あるいはDNA結合領域に変異を挿入する。我々はすでに、原腸陥入の開始直前にWnt/b-cateninシグナル依存的に、STAT3転写因子がオーガナイザー領域で活性化されることを見いだすとともに、ドミナントネガティブgp130, Jak, Statを使用してgp130/JAK/STAT3サイトカインシグナルが原腸陥入における細胞の移動に必須のシグナルを与えていることを明らかにした(Dev. Cell in press, 2002)。この結果は、未知のgp130リガンドが存在し、このリガンドの発現が原腸陥入を制御していることを示唆している。したがってこの未知のサイトカインのクローニングとその発現機構の解明は原腸陥入の分子機構を明らかにするためには必須である。Stat3の活性化を指標にして発現ライブラリーを使用した遺伝子クローニングを行う。また、gp130/Jak/Stat3シグナルによる原腸陥入の制御機構を明らかにするために標的遺伝子の同定を行う。

当面の最重要研究課題は以下のようである

  • 原腸陥入期にWntの下流で活性化されるgp130/Jak/Stat3シグナルを制御しているリガンドの同定
  • 新しく同定したStatZの原腸陥入における役割とその作用機序の解明
  • Stat3, StatZの標的遺伝子で、かつ原腸陥入に関与している遺伝子の同定とその作用機構の解明

b)Stat3ノックアウトマウスの解析およびStat3遺伝子の制御領域に変異を導入したマウスの作成。

Stat3欠損マウスは原腸陥入の開始直前に死に至ることが審良らによって明らかにされている。このことはStat3の活性化がマウスにおいても原腸陥入に必須であることを示唆している。この点を明らかにするために、Stat3ノックアウトマウスにおける原腸陥入のStat3の関与を解析する。また我々は、Stat3遺伝子は自己分子による発現制御を受けていることを明らかにしている。このStat3分子による自己遺伝子発現制御が初期発生にどのように関わっているかを明らかにするために、Stat3遺伝子の自己制御領域に変異を導入したノックインマウスを作成する。すでに変異を導入されたヘテロマウスの作製に成功している。

これらの研究はすべて、最終的にヒト疾患への応用を目的としている。THE FISH NET: An access to Zebrafish Research Databases for Asian user


Zinc transporter LIV1の構造とその機能

LIV1は八回貫通型の膜蛋白で、細胞外から細胞内への亜鉛の輸送を担う。Zinc transporter LIV1は、体の形作りにおける上皮-間葉転換(EMT:epithelial-mesenchymal transition)のマスターレギュレーターであるZinc-finger transcription factor Snailの核移行を制御し、その結果細胞間接着分子の発現を低下させ細胞に可動性を獲得させる。創傷治癒、癌転移も同じメカニズムで制御されているようだ。

LIV1/SnailによるEMT誘導に至る細胞内情報伝達系

HGF, EGF, TGF-b, FGFなどの増殖因子は、EMTを引き起こすことが知られているが、その中でもHGFとEGFは、IL-6ファミリーサイトカイン同様、STAT3およびMAPKの活性化を引き起こす。活性化されたSTAT3はLIV1の発現を、一方MAPKはSnailの発現を転写レベルで制御する。LIV1はZinc依存的にSnailの核移行を制御し細胞にEMTを誘導する。またLIV1の発現はestrogenによっても制御されている。


Publication

  • Yamashita, S., C. Miyagi, T. Fukada, N. Kagara, Y.-S. Che & T. Hirano. Zinc transporter LIVI controls epithelial-mesenchymal transition in zebrafish gastrula organizer. Nature, AOP, published online 5 May 2004; doi:10.1038/nature02545
  • Yamashita, S., C. Miyagi, A. Carmany-Rampey, T. Shimizu, R. Fujii, A. F. Schier and T. Hirano. Stat3 controls cell movements during zebrafish gastrulation. Dev. Cell. 2: 363-375, 2002.(PubMed)
  • Ryu, S.-L., R. Fujii, Y. Yamanaka, T. Shimizu, T. Yabe, T. Hirata, M. Hibi, and T. Hirano. Regulation of dharma/bozozok by the Wnt pathway. Dev. Biol. 2001 231:397-409, 2001 (PubMed)
  • Muraoka, O., Ichikawa, H., Shi, H., Okamura, S., Taira, E., Higuchi, H., Hirano, T., Hibi, M., and Miki, N. Kheper, a novel ZFH/dEF1 family, regulates the development of the neuroectoderm of zebrafish (Danio rerio). Dev. Biol. 228:29-40, 2000.(PubMed)
  • Park, H-C., Kim, C-H., Bae, Y-K., Yeo, S-Y., Kim, S-H., Hong, S-K., Shin, J., Hibi, M., Hirano, T., Miki, N., Chitnis, A.B., and Huh, T-L. Analysis of upstream elements in the HuC promoter leads to the establishment of transgenic zebrafish with fluorescent neurons. Dev. Biol. 227:279-293, 2000. (PubMed)
  • Fujii, R., S. Yamashita, M. Hibi, and T. Hirano. Asymmetric p38 activation in zebrafish; its possible role in symmetric and synchronous cleavage. J. Cell Biol. 150:1335-1347, 2000 (PubMed) (Full Text in JCB). This is mentioned in the »In Brief» of the JCB.
  • Hashimoto, H., T., Yabe, T. Hirata, T. Shimizu, Y.-K. Bae, Y. Yamanaka, T. Hirano, and M. Hibi. Expression of the zinc finger gene fez-like in zebrafish forebrain. Mechanisms of Development, 97:191-195, 2000 (PubMed)
  • Hirata, T., Y. Yamanaka, S.-L. Ryu, T. Shimizu, T. Yabe, M. Hibi, and T. Hirano. Novel mix-family homeobox genes in zebrafish and their differential regulation. BBRC, 271:603-609, 2000.(PubMed).
  • Itoh, M., Yoshida, Y., Nishida, K., Narimatsu, M., Hibi, M., and Hirano, T. A role of Gab1 for heart, placenta, and skin development, and growth factors- and cytokines-induced ERK MAP kinase activation. Mol. Cell. Biol. 20, 3695-3704, 2000.(PubMed)(Abstract)(Full Text in MCB)
  • Shimizu, T., Y. Yamanaka, S.-L. Ryu, H. Hashimoto, T. Yabe, T. Hirata, Y.-K. Bae, M. Hibi, and T. Hirano. Cooperative roles of Bozozok/Dharma and Nodal-related proteins in the formation of the dorsal organizer in zebrafish. Mechanisms of Development, 91, 293-303, 2000.(Full Text)(PubMed)
  • Hashimoto, H., M. Itoh, Y. Yamanaka, S. Yamashita, T. Shimizu, L. Solnica-Krezel, M. Hibi, and T. Hirano. Zebrafish Dkk1 Functions in Forebrain Specification and Axial Mesendoderm Formation. Developmental Biology 217, 138-152, 2000.(Abstract)(PubMed)
  • Fekany, K., Y. Yamanaka, T. Leung, H. I. Sirotkin, J. Topczewski, M. A. Gates, M. Hibi, A. Renucci, D. Stemple, A. Radbill, A. F. Schier, W. Driver, T. Hirano, W. S. Talbot, and L. Solnica-Krezel. The zebrafish bozozok locus encodes Dharma, a homeodomain protein essential for induction of gastrula organizer and dorsoanterior embryonic structures. Development, 126:1427-1438, 1999. (Development), (PubMed)
  • Kim, C.-H., Y.-K. Bae, Y. Yamanaka, S. Yamashita, T. Shimizu, R. Fujii, H.-C. Park, S.-Y. Yeo, T.-L. Huh, M. Hibi, and T. Hirano. Overexpression of neurogenin induces extopic expression of HuC in zebrafish. Neuroscience Letters 239:113-116, 1997.(PubMed)
  • Yamanaka, Y., T. Mizuno, Y. Sasai, M. Kishi, H. Takeda, C.-H. Kim, M. Hibi and T. Hirano. A novel homeobox gene, dharma, can induce the organizer in a non-cell-autonomous manner. Genes & Development, 12: 2345-2353, 1998.(Abstract)(PubMed) (Full Text in G & D)

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