経口生ポリオワクチン(oral polio vaccine, OPV)は、ポリオ予防のための優れた手段である。わが国では、1961年ポリオ大流行の最中に緊急輸入され、瞬く間にポリオを制圧した。1988年から始まった世界ポリオ根絶計画においても、OPVが果たしてきた役割はきわめて大きい。しかし、頻度は低いながらも、副反応であるワクチン関連麻痺(vaccine-associated paralytic poliomyelitis, VAPP)という問題点がある。麻痺は不可逆性で後遺症を残し、看過できない副反応である。また、OPV投与者が発症する以外に、糞便中に排泄されたウイルスが周囲の者に感染し麻痺を起こす場合もある。
海外の先進諸国では、定期接種で用いていたOPVを不活化ポリオワクチン(inactivated polio vaccine, IPV)に変更する国が10年ほど前から増えた。その理由は、野生株ウイルスによるポリオ患者の減少に伴い、OPVの副反応である神経病原性復帰がもたらす麻痺が問題視されるようになったからである。IPVは欧米を中心に広く普及し、良好な免疫原性が確認され、安全性の点でも評価が高い。わが国でも2012年9月から単独IPVが導入された。
さらに、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンにIPVを混合した四種混合ワクチン(DPT-IPV)も、2012年11月に定期接種に導入される。IPVの接種年齢・回数・間隔は、従来のDPTワクチンのそれと同様となっている。過去のワクチン接種歴によって、使用する製剤の種類や接種回数が異なることに注意を要する。また、OPVよりも接種の回数が増えるので、近年過密になりつつある乳児期の予防接種スケジュールへの配慮も求められる。DPT-IPVは、接種スケジュールへの負担を軽減しながら効率的な免疫獲得が可能となり、その有効な活用が期待されるワクチンである。本講演では、IPV とDPT-IPVの円滑な導入に向けての対処策を紹介したい。 |