2025年春の講演会のお知らせ <2025.3更新>
第37回講演会を、下記の要領にて開催いたします。
特別講演といたしまして「RSウイルス感染症 知ってるつもりないろいろ話2025」という演題にて、伊藤 健太 先生(あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長)にご講演いただきます。また一般演題の発表も2題予定しております。
なお今回の講演会も、参加事前申込制のオンライン開催を予定しております。
会員の方々には、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。
(本講演会は医療関係者を対象としております。)
本講演会の担当世話人は、日馬 由貴 先生(大阪大学医学部附属病院 感染制御部/感染症内科、小児科)、 桂木 慎一 先生(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)です。
参加申込方法
・参加希望の方は、申込メールを、事務局のアドレス【kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp(*を@に変えて)】宛てにお送りください。
【記載事項】
・メール件名:大阪小児感染症研究会 講演会(37)申込
①お名前
②ご施設・ご所属
③連絡先(電話番号と、メールアドレス)
・その後1週間以内をめどに、zoom視聴のための登録用URL情報を、事務局より返信メールいたします。
・その返信メールに記載されておりますURLにアクセスいただき、登録を完了されましたら、登録者専用の視聴用URLがzoomより発行されます。講演会当日は、そのURLにアクセスしてご視聴ください。
(本講演会は医療関係者を対象としております。知り得たURL情報は他の方に転送されないようご留意ください。)
・申込メール締切【4月18日(金)】の期限厳守にご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
<<講演会>>
日時:令和7(2025)年4月24日(木)19:00〜21:00 |
方法:ライブウェブ配信(zoomウェビナー) |
<<講演要旨>>
■19:15-19:55 一般演題 |
①初回ワクチン接種後に発症した百日咳の乳児2例と百日咳の最近の状況 |
演者 宮崎 真(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科) |
【緒言】
百日咳はBordetella pertussisを原因菌とした急性気道感染症であり、乳児期に罹患すると重篤な経過をたどることがある。2018年より5類小児定点把握疾患から成人を含む検査診断例の5類全数把握疾患に変更となっており、2024年秋以降、報告数が増加傾向にある。
【症例1】
3ヶ月女児。発症14日前に初回の5種混合ワクチンを接種した。発症8日目に咳嗽持続を主訴に当院を紹介受診したが経過観察を指示された。翌日再度当院を受診し、咳嗽持続後にチアノーゼを認め入院となった。百日咳LAMP法が陽性であったため百日咳と診断し、入院翌日からクラリスロマイシンの内服を開始した。治療開始後はチアノーゼを認めず、入院5日目に退院とした。
【症例2】
2ヶ月男児。発症14日前に初回の5種混合ワクチンを接種した。発症6日目に咳嗽後のチアノーゼを主訴に急病診療所を受診したが経過観察を指示された。発症8日目に咳嗽持続を主訴に別の急病診療所から当院に後送されたが、胸部X線検査で異常を認めず急性上気道炎として経過観察を指示された。発症14日目に咳嗽持続を主訴に再度当院を紹介受診し入院となった。百日咳LAMP法が陽性であったため百日咳と診断し、入院翌日からクラリスロマイシン投与を開始した。入院後はチアノーゼなく経過し入院4日目に退院とした。入院当日の百日咳IgM抗体は陽性(20.3 NTU)であった。なお、2症例とも抗PT-IgG抗体はペア血清で上昇を認め、咽頭ぬぐい液の培養からB. pertussisが同定された。
【まとめ】
初回の5種混合ワクチン接種後に百日咳に罹患した早期乳児の2例を経験した。2例とも診断に至るまで複数回の医療機関受診を要した。近年再増加している百日咳には注意すべきであり、乳幼児の遷延する咳嗽の鑑別に挙げる必要があると考えられた。
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②ダプトマイシン投与中にGordonia otitidis菌血症を来した1例 |
演者 堀田 貴大(大阪大学医学部附属病院 感染症内科) |
【はじめに】
Gordonia属は土壌などの自然界に広く分布するグラム陽性桿菌(GPR)である。ヒトでの感染は稀だが、近年、免疫不全患者における中心静脈カテーテル関連感染症が報告されている。今回、メチシリン耐性Staphylococcus epidermidis(MRSE)菌血症に対してダプトマイシン(DAPT)投与中にGordonia otitidis菌血症を来した症例を報告する。
【症例】
症例は1歳4か月の女児、胆道閉鎖症に対して生後10か月で生体肝移植が行われ、タクロリムス内服中であった。溶血性貧血に対する精査加療のため入院し、ガンマグロブリンや副腎皮質ステロイドの投与が行われていた。末梢静脈路確保が困難であったため、左鎖骨下に末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を留置されていた。PICC留置1か月後に39℃台の発熱を認め(この日を第1病日とする)、血液培養提出後にバンコマイシンが開始された。翌日、血液培養からMRSEが検出された。左鎖骨下静脈に5mm大の血栓を認め、化膿性血栓性静脈炎と判断した。第5病日に腎障害のため抗菌薬をDAPTに変更した。第13病日に血液培養の陰性化を確認した。第12病日にPICCの再留置を行なった。第20病日に発熱したため血液培養を採取したところ、第24病日にGPRが検出された。GPRは質量分析でG. otitidisと同定された。臨床症状は改善していたものの、第27病日の血液培養再検でも同菌が検出されたためPICCを抜去し、感受性試験の結果からセフトリアキソン(CTRX)を投与した。全身CTで播種性病変の検索を行ったが病変は発見されず、第33病日に血液培養陰性化を確認し、DAPTを終了した。血液培養陰性化から2週間でCTRXを終了した。
【考察】
中心静脈カテーテル留置中の生体肝移植後の患者において、DAPT投与中に血液培養からG. otitidisを検出した症例を経験した。本菌のDAPTに対する感受性の知見は限られているが、当院で行なったEテストでは高度耐性を示した。免疫抑制状態の患者や中心静脈カテーテル留置中の患者でDAPT使用中にグラム陽性桿菌が検出された際は、本菌による感染を疑う必要がある。
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■19:55-20:55 特別講演 |
RSウイルス感染症 知ってるつもりないろいろ話2025 |
演者 伊藤 健太(あいち小児保健医療総合センター 総合診療科 医長) |
RSウイルス(RSV)感染症…、小児科医ならば誰でも、いつでも(2020年シーズンを除き)、どんな重症度であっても診たことがある感染症である。毎年流行期になれば小児科病棟では多くのRS部屋と称される、RSV感染症ばかり入院している病室が増加し、へとへとになりながら診療している…そんな存在、それがRSV感染症である。にもかかわらず、Nelsonや小児感染症の成書でRSVの項目を読んだことがある人がどれくらいいるだろうか…。RSV感染症は100例、いや1000例以上診た…そんな自分にわからないことはない…。そう思っていらっしゃる先生方も多いのではないだろうか。かくいう私も小児感染症の専門家としていろいろな場所でRSV感染症について話したり寄稿したりする前までは、RSV感染症を簡単に言うと舐めていた。近年RSV感染症にはいろいろな変化が訪れている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響を受けた(だけにはとどまらない)RSV感染症流行の変化や地域性、そしてパリビズマブの後継機として2024年5月から日本にも導入されたニルセビマブ、さらにはPre-Fタンパクを抗原とした妊婦ワクチンの導入など、5年前のRSV感染症の世界とは大きく様変わりしているといって過言ではない。とても身近な存在であるRSV感染症の知ってるつもりな…だけども…という話を近年の流行状況の変化、予防方法の開発の経緯などを中心にお話しする。
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ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。) |
大阪小児感染症研究会代表世話人 北畠康司
事務局担当世話人 外川正生、山本威久