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大阪小児感染症研究会主催・2014年春の講演会のお知らせ  <2014.2.更新>

 当会主催の18回講演会を下記の要領で開催いたします。
 ヒトゲノム解析が出来上がろうとする頃、九州大学の原教授が日本小児科学会学術集会で、会頭講演としてゲノム時代を迎えたこどもの感染症について話をなさいました。ゲノム研究の最近の大きな進展を踏まえ、こどもの感染症について、もう一度広い視野からお話をしていただくことになりました。また、平成25年度採択研究課題成果も2題発表されます。どうかご期待ください。
会員の方々には間もなく講演会のご案内を郵送します。会費や参加費は無料です。会員以外の方々もどうか多数ご出席下さいますようお願いします。

会員の方々は次のことにご注意くださいますようお願いします。

1) 今回の講演会場はいつもの「大阪大学中之島センター 10F 佐治敬三メモリアルホール」ですが、1時間遅く開会しますアクセスのご案内は下記をご覧ください。

2) 出欠のご返事の方法を変更しておりますので、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen@ped.med.osaka-u.ac.j」へ出欠を電子メールで知らせる。



<<講演会>>

日時:平成26年4月19日(土)15:00〜17:00

場所: 大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール

〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53(Tel:06-6444-2100; Fax:06-6444-2338)
    京阪電車 中之島線 中之島駅または渡辺橋駅下車徒歩5分
    大阪市バス 53系統 船津橋ゆき 中之島4丁目下車すぐ

<<講演要旨>>

15:00-15:20  平成25年度採択研究課題成果発表1

RSウイルス感染症の重症化機序に関する研究

箕面市立病院小児科 山本 威久・武鑓 真司 氏
 対象は、平成24年冬から平成25年春までの間にRSウイルス感染で入院治療した乳児8名。方法は、尿中b2MG,尿中8―OHdGCr換算値および血中25OHD濃度を測定し、各々の相関関係について検討した。結果:性別は男児3名、女児5名で、月齢の中央値は6.5ヶ月。尿中b2MG,尿中8―OHdGおよび血中25OHDの中央値は各々、2626μg/gCr、37.1ng/mgCr及び39.5ng/ml。この中で尿中b2MGと血中25OHD値間のみに有意な負の相関関係が認められた(r=0.73、P=0.04)。考察:乳児のRSウイルス感染症では、ビタミン補充状態では高サイトカイン血症をきたしにくい可能性があることが示唆された。
15:20-15:40  平成25年度採択研究課題成果発表2
舌下粘膜免疫機構の解明を基盤とした乳幼児の呼吸器・消化管感染症に対するワクチンデリバリーシステムと新規アジュバントの開発
大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学講師 徳原 大介 氏
 幼若マウスを用いた舌下免疫の有用性、ならびに新規ワクチンデリバリーシステムとしてのロタウイルス外殻蛋白VP5の有用性について検証した。舌下免疫は幼若マウスの呼吸器・消化管の両粘膜組織に抗原特異的IgAを誘導し、消化管粘膜における免疫誘導が主体となる経口免疫および呼吸器粘膜における免疫誘導が主体となる経鼻免疫よりも広範囲な粘膜面に獲得免疫を誘導することがわかった。また、舌下免疫は抗原とアジュバントの必要量を経口免疫の10分の一に減量することが可能であった。これらのことから、小児の呼吸器から消化管にいたる幅広い感染症に対する汎用性の高いワクチン開発の基盤となることが示唆された。一方、バキュロウイルス発現系を用いてVP5、OVA、VP5+OVA、α2β1インテグリンの合成を行った。α2β1インテグリンに対するVP5、OVA、VP5+OVAの結合力をELISAを用いて分析した結果、OVAはα2β1インテグリンに結合しないが、VP5とVP5+OVAはα2β1インテグリンへの高い結合性が認められた。α2β1インテグリンは舌下粘膜にも発現することをマイクロアレイ解析によって確認しており、VP5を輸送担体とした舌下ワクチンが次世代粘膜ワクチンとして有用である可能性が示唆された。今後、動物実験を中心に、VP5舌下ワクチンの有用性の検証をすすめていく。
15:50-16:50 特別講演
こどもと感染-生命誕生からエピゲノム時代を超えて
 九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野(小児科)・九州大学環境発達医学研究センター教授         原 寿郎 氏

 人類は20万年〜5万年前アフリカに誕生して以来、感染症との闘いであった。感染症に対して抵抗性のある遺伝子多型/変異は有利な多型/変異として集団に広まり、感染は生存優位性によってヒトのゲノムを改変した。ヒト感染症は、ヒトと病原体と環境の相互作用の総和として発症するが、日本においては生活衛生環境が改善されるにつれ、ヒト側要因と共に環境要因では外部環境より内部環境(微生物叢)の重要性が相対的に高くなってきている。
乳幼児では自然免疫の役割が感染防御、疾患発症の上で成人より重要である。川崎病はその発症・病態に自然免疫の関与が推定され、自然免疫受容体NLRの1つであるNod1の合成純品リガンド(FK565:分子量502.6ダルトン)をマウスに経口投与すると冠動脈炎を惹起した。それがヒントとなり、我々は川崎病特異物質を見出し、かつPathogen-associated molecular patterns (PAMPs)であることを同定した。その産生機序を検討したところ、ヒト‐微生物‐環境相互作用が複雑に関与して特異的物質が産生されることが明らかになった。川崎病は現代病でヒト-微生物-環境の相互作用による疾患と考えられる。

ヒトはヒトの細胞と微生物細胞からなる“超有機体: Superorganism”であり、微生物は宿主の恒常性維持に働く有益な生理機能を有する一方、宿主の恒常性の破綻にも関与する。従来、感染症は一微生物で一疾患という疾患概念であったが、ヒト-微生物-環境の相互作用による疾患が今後徐々に明らかになってくるものと思われる。また微生物がヒト細胞にエピゲネティックな変化をもたらすことが報告されており、周産期の感染や内部環境微生物叢から分泌される物質が、最近増加している低出生体重児の出生、奇形、発達障害などの発症に関係しているかもしれない。
 

 

当研究会は「日本小児科学会専門医制度・研修集会単位」として3単位」取得できます入場の際、ご希望の方に「参加証(3単位)」を差し上げております。

本年秋の講演会は10月4日(土)に阪大中之島センターでの開催を予定しております。

ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen@ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。


大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 岡田伸太郎、上田重晴

 
 
大阪大学小児科

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