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2014年秋の講演会のお知らせ  <2014.8更新>

 今秋10月1日より 水痘ワクチンが定期接種として運用されることになりました。
水痘ワクチンウイルス(岡株)は故高橋理明先生が世界に先駆け開発された水痘ワクチン株であり、現在もWHOが推奨する唯一のワクチン株として、岡株水痘ワクチンは世界中で広く使用されています。本年はちょうど水痘ワクチン開発40周年にあたります。
 そこで、今回の講演会では、この度の定期接種化を機会にあらためて日本発、大阪大学発のワクチンを掘りさげてみようと思います。特別講演2題を予定しており、井上直樹先生からは、ヘルペスウイルスとしてのVZVをCMVとの対比という切り口で基礎研究からワクチンの有用性を、庵原俊昭先生からは水痘感染症の臨床からワクチンの開発そしてワクチンの臨床運用まで解説いただきます。どうかご期待ください。
 会員の方々には間もなく講演会のご案内を郵送します。会費や参加費は無料です。
なお、研究会事務局が大阪大学医学部小児科教室に移りました(係 荒井)。 
 よろしくお願いいたします。


出欠は、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen@ped.med.osaka-u.ac.j」へ出欠を電子メールで知らせる。



<<講演会>>

日時:平成26年10月4日(土)14:15〜16:50

場所: 大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール

〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53(Tel:06-6444-2100; Fax:06-6444-2338)
京阪電車 中之島線 中之島駅または渡辺橋駅下車徒歩5分
大阪市バス 53系統 船津橋ゆき 中之島4丁目下車すぐ


<<講演要旨>>

14:35-15:35  特別講演1

2つのヘルペスウイルスによる感染症に対する感染制御の違い:ワクチンの有るVZVと無いCMV

岐阜薬科大学 生命薬学大講座 感染制御学研究室 教授 
井上 直樹
 小児科領域のヘルペスウイルス科感染症としては、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)による水痘とサイトメガロウイルス(CMV)による先天性感染症が重要である。水痘は、ワクチンにより予防が可能であり、容易に臨床診断でき、抗ウイルス薬での治療もできる。感染防御の主体は細胞性免疫(CMI)である。一方、先天性CMV感染症は、診断・予後予測をはじめ、予防・治療法ともに確立していない。特異抗体により重症化を防ぐことができると考えられている。
次演者が水痘ワクチンとVZV感染症の臨床的側面を詳細に紹介されるので、VZVについては、1)ワクチンの弱毒化に関係する最近の報告についての考察・品質管理の重要性・海外ワクチン製剤と国内製剤の違い・ワクチン株と野外株の判別検査など、遺伝子配列レベルから見た諸課題、2)高頻度にCMI応答を引き起こすVZV抗原としてORF62蛋白以外の核蛋白を同定したという基礎的な研究結果、を中心に述べる。
一方、CMVについては、1)全国25施設で行った2万5千人を越える新生児のスクリーニング調査から得られた我国の先天性CMV感染の現状、2)厚生労働科学研究班(研究代表者:藤井東大教授)が進めている確定診断に必要な体外診断用医薬品の開発・申請に向けた取組み、3)ワクチンの開発状況、抗体治療の臨床試験や動物モデルでの検討から示唆された抗体による感染防御の限界、を概説する。 両感染症の対比から、ワクチンの重要性が再認識されると幸いである。

 

15:45-16:45  特別講演2
水痘ワクチン:開発から定期接種化まで
独立行政法人国立病院機構 三重病院 院長
庵原 俊昭

 水痘ワクチン岡株は1974年阪大微研の高橋先生が開発されたワクチン株である。当時、三重大学小児科は白血病児や悪性腫瘍患児の感染症対策(特に麻疹と水痘)の研究を行っており、高橋先生の協力を得て、白血病児等への水痘ワクチンを接種する研究を開始した。免疫不全児への生ワクチン接種ということで批判を浴びたが、現在はHIV感染児や骨髄移植児などの免疫不全児に、条件を決めて生ワクチンを接種することが標準化されている。
 水痘ワクチンが本邦で製造承認されたのは1986年である。市販されてからは健康小児にも接種されるようになったが、保育園での流行時の発症予防効果は、ムンプスワクチンほど高くはなかった。三重県下の保育園の調査では、接種後1年以上経過すると発症率が高くなること、ワクチン接種者の50%は軽症ながらもbreakthrough varicellaを発症することを示し、水痘流行抑制のためには早期の2回接種の必要性を提唱した。
 水痘ワクチン初回接種後、種々の間隔で2回目接種を行ったところ、1ヶ月後でも抗体価の上昇は認められたが、初回接種1年後に接種した群で優れた抗体反応が認められた。また、接種後3年以上経過した子どもの33%は自然ブースタを受けていることも確認された。なお、水痘の発症予防抗体価は、理論上NT法で4倍であり、この値に匹敵する抗体価は、IAHA法で4倍、EIA-IgG法で4倍、国際標準血清では200mIU/mlに相当する。
 水痘ワクチンの定期接種を行っている国は2回接種を行っている。本邦でも2014年10月から水痘ワクチンの定期接種が開始されるが、水痘流行を早期に抑え、breakthrough varicellaの発症率を抑えるために、ドイツの接種方式を見習って2回目の標準的な接種期間が、初回接種終了後6月から12月に至るまでの間になっている。
 米国では、水痘ワクチン接種者が増加し、水痘流行が小さくなった結果、高齢者の帯状疱疹発症率の増加が認められている。高齢者の帯状疱疹の発症予防、帯状疱疹後疼痛を予防するために帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されている。
 以上、水痘ワクチンと水痘帯状疱疹ウイルス感染症の関係について紹介する。

 

当研究会は「日本小児科学会専門医制度・研修集会単位」として3単位」取得できます入場の際、ご希望の方に「参加証(3単位)」を差し上げております。


ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen@ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。


大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 岡田伸太郎、上田重晴

 
 

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