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新執行部員のお知らせ  <2015.3更新>

平成27年度からの新執行部員が決まりました
平成27年度から大阪小児感染症研究会(Osaka Research Society for Pediatric Infectious Diseases)は次の新しい執行部員により運営されることになりました。
代表世話人 大薗恵一 (大阪大学)
世話人

塩見正司(愛染橋病院);山本威久(箕面市立病院) ;吉田寿雄(大阪大学);高野智子(大阪府立急性期・総合医療センター) ;新田雅彦(大阪医科大学);野田幸弘(関西医科大学) ;瀬戸俊之(大阪市立大学);上田悟史(近畿大学);天羽清子(大阪市立総合医療センター);廣川秀徹(大阪市保健所)

監事 外川正生(大阪市立総合医療センター)
顧問

岡田伸太郎(大阪大学);上田重晴(大阪大学) ;玉井浩(大阪医科大学);金子一成(関西医科大学) ;新宅治夫(大阪市立大学);竹村司(近畿大学) ;高橋和郎(国際医療福祉大学病院);田中智之(国保日高総合病院);田尻仁(大阪府立急性期・総合医療センター)

 



2015年春の講演会のお知らせ  <2015.3更新>

 第20回講演会を、下記の要領にて開催いたします。
 特別講演といたしましては、昨年(2014年)の夏、約70年ぶりに国内感染例が報告され大きな社会問題となった「デング熱」について、奥野良信先生にお話しいただきます。また一般演題の発表も、3題予定しております。どうかご期待ください。
 会員の方々には間もなく、講演会のご案内を郵送します。会費や参加費は無料です。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。
 今回から世話人事務局担当を上田重晴先生、岡田伸太郎先生から塩見正司、山本威久が引き継ぎました。また、在阪5大学の小児科主任教授のご協力とご推挙をいただき、世話人の交代を行いました。学術講演会の各回を2人の世話人が担当していただき、また、特別講演1題と一般演題を組み合わせる形式を試みております。小児感染症と予防接種に興味のある医師、研究者、公衆衛生担当者などの多数の参加を期待しております。

 今回は大阪市立総合医療センターの天羽清子先生、大阪市保健所の廣川秀徹先生が担当されます。

出欠は、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen@ped.med.osaka-u.ac.j」へ出欠を電子メールで知らせる。


<<講演会>>

日時:平成27年4月25日(土)14:15〜16:50

場所: 大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール

〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53(Tel:06-6444-2100; Fax:06-6444-2338)
京阪電車 中之島線 中之島駅または渡辺橋駅下車徒歩5分
大阪市バス 53系統 船津橋ゆき 中之島4丁目下車すぐ


<<講演要旨>>

14:30-15:30  一般演題

@大阪市の麻しん、および発しん性ウイルス感染症の疫学的検査と麻しん輸入株についての考察

演者 廣川秀徹 先生(大阪市保健所 感染症対策課)

【はじめに】大阪市では、麻しん排除計画の一環として、麻しん発生届が出た症例について確定診断するために麻しんPCR検査を実施している。陰性検体については、マルチプレックスリアルタイムPCR法(M-PCR法)による他の発しん性ウイルスの検索も行っている。今回我々は、これらの方法によって得られた発しん性ウイルスの発生動向、検出された麻しんウイルスの遺伝子型と輸入株について考察したので報告する。

【対象・方法】発生届を受け、検体を確保できた症例において、麻しんPCR、M-PCR法検査を実施した(平成24-26年の3年間、計188例)。

【結果】麻しん陽性は24年0例、25年2例、26年13例で、その遺伝子型はB3が8例、H1が4例、D8が3例であった。麻しん陰性、M-PCR法で風しん陽性であったものは24年31例、25年62例、26年0例であった。ほかヒトパルボウイルスB19が3例、ヒトヘルペスウイルス6型が5例、同7型が2例検出された。

【考察】麻しん陽性例の遺伝子型は、全て海外からの輸入株とされているものであったが、渡航歴のない症例も多くみられ、今後わが国の土着株とされる懸念が持たれる。また24-25年の風しんの大流行は、M-PCR法の結果にも反映されていた。MRワクチンT期U期の接種率の向上により、現代の麻しん、風しんの好発年齢は、小児ではなく若年成人となった。ともに感染症法5類全数報告疾患であり、内科のほか皮膚科等の診療科でも広く、発生届、PCR検査検体提出 ⇒ 麻しん確定診断かつ、積極的疫学調査による二次感染の防止対策をとることが重要であると考えられた。

 

A当院で経験した小児のデング熱
演者 天羽清子 先生(大阪市立総合医療センター 小児救急科)

 デングウイルス(DV)はフラビウイルス属のRNAウイルスで、ネッタイシマカやヒトスジシマカにより媒介される。1950年代までは日本国内で発生報告があったが、それ以降は昨年(2014年)に代々木公園を中心とする流行がおこるまで国内発生認めず。流行地に仕事や旅行で渡航し帰国した成人を中心とする輸入感染症と位置づけられ、小児は稀である。当院で経験したデング熱の小児例を報告する。

症例1:6歳女児。フィリピン在住。日本に住む父に会うため帰国。前日から38℃の発熱と食欲低下あり。帰国翌日に近医で抗菌薬投与されるも解熱せず。帰国3日目の夜から躯幹部と両側前腕に発疹出現し当院受診。迅速検査にてDVIgM弱陽性、後にPCR法にてDV3型検出されデング熱と診断した。経過中軽度の血小板減少認めたが輸液のみで軽快した。
症例2:5歳男児。インドネシアバリ島で母がレストラン経営しており8日間バリ島滞在。帰国翌日に高熱と頭痛あり。翌々日も改善なく当院受診。迅速検査でDV NS-1抗原陽性、IgM陰性、IgG弱陽性。後にPCR法でDV2型検出されデング熱と診断した。鼻出血と軽度の血小板減少認めたが、輸液のみで軽快した。

 デング熱の小児2症例を報告した。いずれの症例も旅行以外の滞在形態であり、小児の輸入感染症はVFR(Visiting Friends and Relatives)の場合はより疑って検査する必要があると考えられた。

 

B大阪市における蚊媒介性病原ウイルスの遺伝子検出検査について
演者 久保英幸 先生(大阪市立環境科学研究所)

【はじめに】当所では、蚊媒介性病原ウイルス検査として、T:「動物由来感染症に関する病原体調査」において、定期的に採集した大阪市内生息雌蚊を対象としたウエストナイルウイルス(WNV)およびフラビウイルス属ウイルスに対する遺伝子検出検査を、また、U:デング熱疑の患者検体の病原ウイルス検査において、デングウイルス(DENV)およびチクングニアウイルス(CHIKV)に対する遺伝子検出検査を実施しているので、これらを以下に紹介する。

【検査方法】T:大阪市内10地点の公園等において、月1回(6〜10月)蚊を採集して採集雌蚊の地点別・種類別分類を行い、さらに分類された雌蚊(プール)ごとにRNAを抽出した後に、WNVおよびフラビウイルス属共通プライマーを用いたコンベンショナルRT-PCRを実施し、特異的遺伝子検出の有無の解析を行う。このうち、フラビウイルス属共通プライマーで検出可能となるおもな病原ウイルスは、WNV、DENV、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルスである。また、市内公園等で死亡が確認された野鳥の脳組織に対しても、同様の解析を行う。なお、本検査における蚊採集に関しては、大阪市保健所感染症対策課および大阪市健康局生活衛生課の協力を得て実施している。U:おもにサーベイランス定点医療機関を受診したデング熱疑患者血清からRNAを抽出し、DENVならびにCHIKVに対するリアルタイムRT-PCRを実施し、上記同様の解析を行う。なお、DENVおよびCHIVの検査に関しては、平成27年4月から新たに予防指針が適用される模様である。

 

15:45-16:45  特別講演
顧みられない熱帯病、デング熱
演者 奥野良信 先生(一般財団法人 阪大微生物病研究会観音寺研究所 所長)

 昨年(2014年)の8月、熱帯病と考えられていたデング熱が東京で発生し、大きな社会問題となった。戦後初めての流行で、患者総数は162例に上った。因みに、終戦直前には西日本で大流行し、百万人以上が罹患したといわれている。世界中での発生数は、年間で5千万人から5億人と推測され、熱帯地方ではありふれた疾患のため“熱帯のかぜ”とも呼ばれている。一般的に症状は軽いが、一部の患者は重症化し、“デング出血熱”あるいは“デングショック症候群”に陥ると致命率が高くなる。
 デングウイルスが原因ウイルスで、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルスなどと同じフラビウイルスに属する。これらフラビウイルス間には強い交差免疫原性があり、これが血清学的診断を困難にしている。デングウイルスには1型〜4型の4種類の血清型があり、初感染の型と違う別の型に再感染することが重症化の要因と考えられている。ワクチンの開発を困難にしているのも、これが一つの理由である。デングウイルスは主にネッタイシマカによって媒介され、ヒト−蚊−ヒトのサイクルで維持されている。温帯地方ではヒトスジシマカが媒介蚊となる。
 デング熱の潜伏期間は3〜14日であるが、多くは4〜7日である。典型的な症状は、突然の発熱、頭痛(眼球後部の痛み)、筋肉痛、関節痛、発疹である。発熱は40℃を超えることもあり、二峰性になることが特徴である。経過は2−7日であり、回復期に強い掻痒感と徐脈がしばしば起こる。デング出血熱の多くは東南アジアの小児に起こり、出血傾向、循環不全、肝腫大が特徴である。血小板数減少と血液濃縮は必至である。
 病初期のウイルス分離、もしくはPCRが最も確実な診断法である。しかし、これらの方法は一般的ではなく、最近では各種迅速診断キットが市販されているので、臨床現場では有用である。特異的な治療法はないが、デング出血熱の場合には補液が重要である。ワクチンはまだない。
 演者は過去にタイ、インドネシアにおいてデング熱、デング出血熱の研究に携わったことがあり、そのときの経験を踏まえてデングウイルス感染症の実態について解説する。

 

当研究会は「日本小児科学会専門医制度・研修集会単位」として3単位」取得できます入場の際、ご希望の方に「参加証(3単位)」を差し上げております。


ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen@ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。

 


大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 

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