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2016年秋の講演会のお知らせ  <2016.9更新>

 第23回講演会を、下記の要領にて開催いたします。
 今回は「エンテロウイルスD68」をテーマとし、特別講演を2題予定しています。臨床的特徴について福岡市立こども病院 小児神経科 科長の吉良龍太郎先生に、ウイルス学的特徴について国立感染症研究所 ウイルス第二部 第二室室長の清水博之先生にお話しいただきます。

 なお、本研究会の活動の更なる充実を図るため、前回より、当日に参加費500円を徴収させていただいております。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。 

 本講演会の担当世話人は、大阪市立大学の瀬戸俊之先生と、近畿大学の上田悟史先生です。

出欠は、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen@ped.med.osaka-u.ac.j」へ出欠を電子メールで知らせる。



<<講演会>>

日時:平成28年10月15日(土)14:10〜16:50

場所: 大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール

〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53(Tel:06-6444-2100; Fax:06-6444-2338)
京阪電車 中之島線 中之島駅または渡辺橋駅下車徒歩5分
大阪市バス 53系統 船津橋ゆき 中之島4丁目下車すぐ


<<講演要旨>>

14:30-15:30 特別講演@

急性弛緩性脊髄炎 −臨床的特徴とエンテロウイルスD68との関連性−

演者 吉良龍太郎 先生(福岡市立こども病院 小児神経科 科長)

 急性弛緩性麻痺(AFP: Acute Flaccid Paralysis)は急性に弛緩性の四肢麻痺を呈す疾患の総称で、脊髄前角細胞より末梢側を病変の主座とする、脊髄・末梢神経・神経筋接合部・筋のさまざまな疾患を含む。古くは急性灰白髄炎(ポリオ)が代表的疾患であったが、ポリオが根絶された現在では、急性横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ボツリヌス症が小児ではよく知られている。ポリオ以外のエンテロウイルス(EV)も稀ながらAFPを起こし、手足口病で知られるEV71はその代表的なウイルスである。
 エンテロウイルスD68 (EVD68) は1962年に初めて検出され、呼吸器感染症を起こすことが知られている。2014年秋に米国においてEVD68のアウトブレークが発生した際にポリオ様の麻痺を呈す症例が多発し、神経疾患との関連が注目されるようになった。患者の多くは学童・幼児で、のちに急性弛緩性脊髄炎(AFM: Acute Flaccid Myelitis)と名付けられた疾患の特徴、すなわち急に発症する四肢の限局した部分の脱力とMRIで主に灰白質に限局した脊髄長大病変が認められた。検査では高率に髄液細胞増多(白血球数>5/mm3)が見られた。また脳幹の画像病変を伴う急性脳神経障害とそれによる球麻痺、外転神経障害、顔面神経麻痺もしばしば合併した。約8割の症例で麻痺発症の1週間弱前に呼吸器・発熱性疾患が先行していた。CDCによる米国内の疫学調査では2014年8月から12月までに計120例の小児(21歳未満)がAFMを発症したことが判明している。これらの患者の呼吸器由来検体からしばしばEVD68が検出されたが、髄液中のEVD68が検出されないため、EVD68とAFMの因果関係は直接的には証明されていない。
 2015年秋に日本においてもAFPが多発していることが判明した。同時期にEVD68による重症呼吸器感染症が全国で多発していた状況は2014年の米国と同じであった。感染症法に基づく積極的疫学調査の一環として、AFP症例の症例探査が実施された(一次調査)。現在、一次調査で探知された115例のAFP症例を対象として、一次調査のみでは不十分であった臨床・疫学情報に関する詳細な二次調査が厚生労働科学研究班(研究代表者:多屋馨子 国立感染症研究所感染症疫学センター室長)で実施されている。本講演では二次調査の結果の一部を紹介する。

 

15:45-16:45 特別講演A
エンテロウイルスD68感染症の流行とウイルス学的特徴
演者 清水博之 先生(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第二室室長)

 エンテロウイルスD68 (Enterovirus D68; EV-D68) は、D群エンテロウイルス(Enterovirus D)に分類されるが、温度感受性や酸耐性等、ライノウイルスと類似したウイルス学的性状を有するユニークなエンテロウイルスである。EV-D68は、細胞表面のシアル酸受容体との結合を介して感受性細胞に感染することから、ライノウイルス同様、主として上気道感染により伝播する呼吸器感染症の原因ウイルスのひとつと考えられている。
 その一方、2014年に、北米でEV-D68感染症の広範な流行が発生し、呼吸器感染症症例だけでなく、急性弛緩性脊髄炎や脳神経障害等、中枢神経疾患合併症症例からもEV-D68が検出されたことから、エンテロウイルスによる再興感染症として注目を集めた。日本でも、2015年9月を中心に、EV-D68検出事例が急増し、呼吸器感染症を中心としたEV-D68感染症の流行が認められた。ほぼ同時期、急性弛緩性麻痺症例の増加が報告され、一部の急性弛緩性麻痺症例からEV-D68が検出された。しかし、EV-D68感染症の病原性発現機構、とくに急性弛緩性脊髄炎・麻痺を含む中枢神経疾患とEV-D68感染との直接的な関連性については、疫学的にもウイルス学的にも明らかにされていない。世界各地のEV-D68株の分子系統解析によると、これまで世界各地で報告されたEV-D68株は、おおむね3種類の遺伝子型(Clade A〜C)に分けられる。2014年の米国およびカナダにおけるEV-D68流行事例から検出されたEV-D68株の多くは遺伝子型Clade B (Subclade B1)に分類される。2014年には、ドイツ、オランダ等のヨーロッパ、フィリピン、中国、香港、台湾、等広範な地域において、米国流行株と分子系統学的関連性の高いSubclade B1株が検出されている。病原微生物検出情報等への報告から、日本における2015年のEV-D68株の多くもClade B に属することが示唆されている。
 本公演では、ポリオウイルス、エンテロウイルス71、パレコウイルス等、日常的な感染症、あるいは、より重篤な新興・再興感染症に関与するピコルナウイルスについて概説するとともに、現時点で報告されているEV-D68のウイルス学的特徴について整理する。

 



当研究会は「日本小児科学会専門医制度・研修集会単位」として3単位」取得できます入場の際、ご希望の方に「参加証(3単位)」を差し上げております。

ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen@ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。

 


大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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