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2017年春の講演会のお知らせ  <2017.3更新>

第24回講演会を、下記の要領にて開催いたします。
 特別講演といたしましては、「小児結核 ―未だ忘れてはいけない子どもの感染症―」について、BCGワクチンに関する話題も含め、国立病院機構南京都病院 小児科医長の徳永 修先生にお話しいただきます。また一般演題の発表も、3題予定しております。どうかご期待ください。
 なお、本研究会の活動の更なる充実を図るため、誠に申し訳ございませんが、当日に会費500円を徴収させていただきます。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 会員の方々には間もなく、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

 本講演会の担当世話人は、大阪市立総合医療センターの天羽清子先生と、大阪市保健所の廣川秀徹先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


出欠は、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen@ped.med.osaka-u.ac.j」へ出欠を電子メールで知らせる。



<<講演会>>

日時:平成29年4月22日(土)14:10〜16:50

場所: 大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール

〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53(Tel:06-6444-2100; Fax:06-6444-2338)
京阪電車 中之島線 中之島駅または渡辺橋駅下車徒歩5分
大阪市バス 53系統 船津橋ゆき 中之島4丁目下車すぐ


<<講演要旨>>

14:30-15:30 一般演題

診断の1年以上前から発病していたと考えられた幼児外国人肺結核の一例

演者 釣永 雄希 先生(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 小児科)

【はじめに】乳幼児の結核感染症は重症化しやすく、特にBCG未接種であった場合、髄膜炎などの重症感染症となりうることが知られている。今回、診断の1年以上前から発病していたと考えられ、BCG未接種ではあったが、重症化しなかった幼児肺結核の一例を経験したので報告する。
【症例】1歳3か月の男児。ベトナム人。当センター初診の2日前に父が肺結核と診断された。幼児であり、すぐに接触者健診が予定された。しかし初診の数日前から咳嗽、前日に発熱があったため予定より早期に受診となった。既往歴として心房中隔欠損症(根治術後)があった。手術は1年前であり、その際に肺炎、円形無気肺の指摘があった。初診時の胸部レントゲン・CTで異常陰影を認めたが、本人の全身状態は良好であり、採血上も明らかな異常を認めなかった。陳旧性炎症像の可能性も否定できないため、ツベルクリン検査、QuantiFERON TBR(QFT)検査、胃液の結核菌検査を実施して、手術施行病院の画像をとり寄せる方針とした。ツベルクリン検査、QFTはともに感染を示唆する所見であり、初診時の胸部CTで石灰化病変を認めた部位に一致して、1年前の他院の画像に異常を認めた。以上から肺結核と考え、発病は1年以上前と推測した。胃液の結核菌検査で培養陽性(塗抹陰性)となった。抗結核薬の薬剤耐性はなく、また父の結核菌と遺伝子型が一致し、父から感染したと考えられた。

 小児の発病症例の治療導入は、当センターでは入院が原則であるが、母の強い希望があり、他への感染のリスクを考慮した上で外来治療とした。抗結核治療はイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドの3剤で開始し、外来治療に際して、所轄保健所の保健師に頻回の自宅訪問を依頼し、服薬管理を実施した。また外来の度に医療通訳を交えて母の不安軽減を図ると伴に服薬継続を促した。

 

当院における20歳未満の結核菌群陽性症例の検討
演者 天羽 清子 先生(大阪市立総合医療センター 小児救急科)

<目的>抗結核薬による治療の確立により、日常診療で結核関連疾患の小児に遭遇することは非常に稀となり、上位に鑑別されることが少なくなった。しかし、診断の遅れは症状の増悪や感染拡大につながるため、決して忘れてはならない。最近の小児結核菌群陽性症例の傾向を知り、今後の診断や治療につなげることを目的に検討した。
<方法>2007年11/1〜2015年10/31までの8年間に当院で経験した、20歳未満の結核菌群陽性であった11症例について、背景や初発症状、菌の種類やその後の臨床経過について、後方視的に検討した。
<結果>性別は男児7例女児4例、年齢は1か月〜18歳(中央値1歳)であった。基礎疾患は急性リンパ球性白血病・先天性HIV感染症・WPW症候群の各1例を除き健康小児であった。感染源は、両親から2例とBCG4例以外は不明で、分離菌はM.tuberculosis 6例 M.bovis(BCG株)5例、分離検体は喀痰3例 胃液2例 組織3例 血液1例 膿瘍2例であった。初発症状は呼吸器症状4例 腫瘤4例 発熱のみ1例 跛行1例 無症状1例(学校検診の胸部レントゲンで縦隔腫瘤疑い)であった。治療はBCG株の皮下膿瘍1例を除き、抗結核薬が投与され全例治癒したが、白血病とHIVの症例は途中で免疫再構築症候群をおこし治療に難渋した。抗結核薬による副作用を認めた者はいなかった。また、M.tuberculosis群では、症状発現から診断に至るまで1日〜2か月(中央値1か月)、感染源不明の症例に限定すると全て1か月以上かかっていた。

<結論>低年齢の結核菌群陽性症例は、呼吸器以外の症状が多かった。また無症状で学校検診のレントゲンから診断につながった例もあった。早期診断し感染拡大を最小限にするためにも、長引く咳だけでなく原因不明の発熱や縦隔腫瘤、皮下膿瘍や骨髄炎などは、常に疑い検査することが重要である。

 

小児の結核接触者健診の現状と課題
演者 小向 潤 先生(大阪市保健所 感染症対策課)

【目的】
 大阪市の小児接触者健診における潜在性結核感染症(LTBI)診断の根拠を明らかにする。また、結核患者と接触し発病した小児について、その感染源の状況などを分析することで小児接触者健診に資する。
【方法】
1. 小児接触者健診におけるLTBI診断の根拠
 大阪市において2014年に登録されたLTBIのうち、接触者健診で発見された14歳以下の小児を対象とし、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)およびツベルクリン反応(ツ反)を含めたLTBI診断の根拠を調査した。
 「感染診断基準」は、IGRAについては陽性の場合、ツ反についてはBCG未接種児では発赤径10mmまたは硬結径5o以上、BCG既接種児では発赤径30mm以上または硬結径15o以上の場合に「感染あり」とした。
2. 小児結核とその感染源の分析
 2008-14年に登録された14歳以下の小児結核と、小児の感染源と考えられた肺結核症例を対象とした。
(感染源の分析) 2012-13年に大阪市で登録された肺結核より、感染源と性・年代をマッチさせた対照群と比較検討した。
【結果】
1. 小児接触者健診におけるLTBI診断の根拠
 乳幼児は10名で、そのうち感染診断基準に合致していたのは3名(30%)であった。小学生は14名で、そのうち感染診断に合致していたのは9名(64%)であった。中学生は3名すべてで感染診断基準に合致していた。
2. 小児結核とその感染源の分析
(小児結核の分析) 小児結核は7年間で14名登録されていた。小児の感染源と考えられる肺結核が発見されたのは接触者健診発見の10名(71.4%)で、うち9名が同居者であった。
(感染源の分析) 詳細が不明であった1名を除く9名(感染源)と、性・年代をマッチさせた肺結核54名(対照)とを比較したところ、発見に3か月以上を要した者、咳あり、空洞ありの割合が感染源で有意に高かった。
【結論】
 小児におけるLTBIの分析より、若年であるほど、感染診断の結果だけでなく感染源との接触の程度などを考慮して総合的にLTBIと判断されていた。

 一方小児結核では同居者に感染源が発見されることが多く、小児接触者健診では感染源との濃厚接触者への健診が重要であることが示唆された。

 

15:45-16:45 特別講演

小児結核 ―未だ忘れてはいけない子どもの感染症―

演者 徳永 修 先生(国立病院機構南京都病院 小児科医長)

 わが国の小児結核発病例は順調に減少を続けており、近年の年間新登録患者数(0〜14歳)は50前後の少数例で推移している。小児に限った結核罹患率は低まん延国の代表である米国をも下回り、世界で最も小児結核罹患率が低い国となった。一方で、全年齢の罹患率は未だ「中まん延」と評価される状況に留まっており、子どもたちにとっての結核感染機会が無視できる状況に至った訳ではない(2015年罹患率 日本14.4、大阪府18.2、大阪市34.4、堺市22.0/人口10万対)。子ども、特に乳幼児は結核に対して弱い存在であり、結核感染・発病例の的確な診断、さらに治療適用の遅れは容易に重症化へとつながる。わが国の子どもたちを結核から守るため、今暫くの間、高いBCGワクチン接種率を維持すると共に、結核感染・発病の可能性も考慮される子どもたちに対して適切な感染・発病診断検査を適用し、慎重な事後対応を執ることが望まれる。
 今回の講演では、1)わが国の小児結核の現状を俯瞰した上で、2)小児結核感染・発病例を的確に診断するために必要な知識を整理・再確認し、さらに3)結核発病予防を目的に乳児期に積極的に接種されているBCGワクチンに関して、@その有効性、A出現しうる副反応とその対応方法、B直接接種後コッホ現象の診断とその対応、Cわが国が低まん延状況へと移行する時期を見据えたBCGワクチン接種施策検討の必要性、などについてお話しをする。
症例数の順調な減少に伴って一般小児科医から“忘れ去られようとしている”小児結核であるが、近年も診断が遅れた結果、後遺障害を伴うに至った重症例も報告されている。この講演が小児結核に対する関心の喚起、さらに正確な診療知識を確認する契機となり、一人でも多くの子どもたちを結核から守ることにつながれば幸いである。

 



当研究会は「日本小児科学会専門医制度・研修集会単位」として3単位」取得できます入場の際、ご希望の方に「参加証(3単位)」を差し上げております。

ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen@ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。

 


大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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