TOP > 過去LOG(2018.9)

 


2018年秋の講演会のお知らせ  <2018.9更新>※10月要旨追加

 第27回講演会を、下記の要領にて開催いたします。
 特別講演といたしましては、「各国ガイドラインからみた小児尿路感染症の診断・治療・管理の実際」について、くしもと町立病院 串本町病院事業管理者の竹村 司先生にお話しいただきます。また一般演題の発表も、2題予定しております。どうかご期待ください。

 このたび講演会の日時・会場が変更となりましたので、ご確認の上、お間違えのないようお越しくださいませ。当日は、軽食をご用意させていただきます。(駐車券のご用意はございません。何卒ご了承ください。)
 なお、本研究会の活動の更なる充実を図るため、誠に申し訳ございませんが、当日に参加費500円を徴収させていただきます。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 会員の方々には、講演会の約1ヵ月前を目途にご案内を郵送いたします。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

 本講演会の担当世話人は、大阪市立大学の瀬戸俊之先生と、近畿大学の宮崎紘平先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


出欠は、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」へ出欠を電子メールで知らせる。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)


<<講演会>>

日時:平成30年11月22日(木)18:50〜21:00

会場: ヒルトン大阪 5F桜園の間

〒530-0001 大阪市北区梅田1-8-8
TEL:06-6347-7111
JR「大阪駅」より徒歩2分
阪神電車「梅田駅」より徒歩1分、阪急電車「梅田駅」より徒歩7分
大阪メトロ四ツ橋線「西梅田駅」より徒歩1分、御堂筋線「梅田駅」より徒歩5分

<<講演要旨>>

19:05〜19:45 一般演題
@学童期の熱源不明の発熱をきっかけに膀胱尿管逆流gradeWを発見し得た1例
演者 永田 知裕 先生(近畿大学医学部小児科学教室)

【はじめに】熱源不明の発熱の鑑別に尿路感染症の精査は重要である。尿路感染症は乳児期には男児に多く、1歳以降では女児に多い。尿路感染を発症する小児では約30〜50%に膀胱尿管逆流(VUR)を認め、乳児期には約70%、4歳時で25%、12歳時で15%、成人で5%と年齢が高いほどその発見率は低くなる。今回我々は学童期の男子で熱源不明の発熱をきっかけにVUR gradeWを発見し得た1例を経験したので報告する。
【症例】8歳男子
【主訴】発熱
【現病歴】当科受診3日前に発熱を認め、近医を受診した。発熱以外の症状はなく、全身状態不良のため血液検査が施行され、CRP 9.0 mg/dl、WBC 24700 /µl(Net 89.7 %)と炎症反応の著明な上昇があったため、テビペネム ピボキシル(TBPM-PI)処方で帰宅となった。当科受診前日の再診でもCRP 13.9mg/dl、WBC 17100/µl(Net 82.9%)と改善がなく当科紹介となった。
【検査所見】尿所見:蛋白(−)、潜血(−)、細菌(−)、白血球 1〜4/HPF、赤血球 <1/HPF、血液検査所見:CRP 9.38mg/dl、Na 140mmol/l、K 4.1mmol/l、BUN 12mg/dl、Cre 0.36mg/dl、AST 36U/l、ALT 44U/l、WBC 5200/µl(Net 50.1%)
【受診後経過】腹部エコーにて腎サイズの左右差はないものの、右水腎症1度、右尿管拡張を認めており、VCUGを施行した。その結果、VUR gradeWを発見し、尿管膀胱新吻合術の適応となった。その後、腎エコー検査では水腎症は改善していた。
【考察】本症例では、前医にて抗生剤内服中であったため尿所見異常を認めなかった。しかしながら発熱以外の症状がなく、炎症所見も高値であったため原因精査のため腹部エコーを実施したことで、高度VURを発見することが出来た。学童期の男子であっても、発熱の原因として尿路感染症の鑑別は重要であると考えられた。

 

A無菌性髄膜炎を伴った新生児急性巣状細菌性腎炎の1例
演者 大島 理奈 先生(近畿大学医学部小児科学教室)
【はじめに】急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis、以下AFBN)は膿瘍形成を伴わない腎実質の感染症である。今回我々は初期に髄膜炎が疑われたが、後にAFBNと診断された新生児例を経験した。
【主訴】活気不良、哺乳力低下、低体温 
【現病歴】35週0日2310g、AP8/9で出生した男児。新生児一過性多呼吸、黄疸に対してNICUで加療後、日齢9日目に退院した。生後20日、退院後の外来で哺乳力低下、活気不良のため精査加療目的入院となった。
【入院時現症】身長:44.9cm、体重:2265g(退院後体重増加15g/日)、体温:35.4℃、脈拍:143/分、収縮期血圧:70mmHg、全身状態不良、大泉門やや膨隆、髄膜刺激徴候なし、眼球結膜黄染なし、呼吸音清、心音純・雑音なし、腹部腸蠕動良好・平坦・軟、肝脾腫なし、浮腫なし、明らかな外表奇形なし。
【検査所見】尿所見:蛋白(1+)、潜血(1+)、細菌(1+)、白血球50〜99/毎、赤血球5〜9/毎、尿中βMG/Cre 605µg/mgCrn、血液検査所見:CRP 2.93 mg/dl、WBC 11500 /µl、Na 141 mmol/l、K 5.0 mmol/l、Cl 104 mmol/l、TP 5.6 g/dl、Alb 3.1 g/dl、BUN 8 mg/dl、Cre 0.24 mg/dl、BS 120 mg/dl、UA 2.8 mg/dl、髄液検査所見:細胞数64 /3、多核細胞数3、単核細胞61、糖30 mg/dl、蛋白78 mg/dl
【入院時経過】髄膜炎+尿路感染症と診断し、MEPM+CTXにて治療開始した。腎エコーにて腎サイズの左右差(L>R)と左腎上極皮質に不明瞭な高エコー領域を認め、造影CTにて同部位に境界不明瞭な低吸収領域を認めたためAFBNと診断した。その後、カテーテル尿培養よりEscherichia coli (E.coli) 1×10 8 CFU/mlを検出したため、CTXを継続投与した。尚、髄液培養では菌の検出はなかった。第12病日に施行したMAG3腎動態シンチグラフィ(レノグラム)および排尿時膀胱尿管造影(VCUG)で異常を認めなかったため、第18病日に退院となった。
【考察】AFBNは尿所見異常を認めない例や、けいれんなどの中枢神経症状を呈する例もあることから、中枢神経感染症と診断されることがある。治療期間や診断後の対応も異なるため、腹部エコーを含めた注意深い鑑別が望ましいと考える。

 

19:55〜20:55 特別講演

○各国ガイドラインからみた小児尿路感染症の診断・治療・管理の実際
演者 竹村 司 先生(くしもと町立病院 串本町病院事業管理者)
 尿路感染症 (UTI) に限らず、正確な診断と治療はすべての疾患に共通するものである。しかし UTI は、急性期に適切な治療がなされても、その後、腎瘢痕や腎萎縮など腎機能の低下を来す病態が生じる危険性がある。これを予防すべく各国において診断・治療・管理についてのガイドラインが作成されている。わが国でも、2015 年に JAID/JSC により小児 UTI を含むガイドラインが作成された。各国のガイドラインを比較してみると、おおむね共通である部分とかなり異なった部分がある。
 診断については、各国ともに尿定性検査での白血球反応と亜硝酸塩の検出が重要視されている。アメリカの AAP ガイドラインによれば、白血球 esterase 反応と亜硝酸塩反応を組み合わせることにより、診断頻度 93%、特異度 72% と精度の高い診断効果があるとされている。AAP ガイドラインでは、診断には白血球尿(>5WBC/HPF)の存在と細菌尿を必須要件としているが、英国の NICE ガイドラインでは膿尿が認められなくても UTI は除外できないとされ、わが国でも必ずしも膿尿の存在は必須ではないと記載されている。
 小児の UTI を複雑化させる重要な要因は、膀胱尿管逆流症 (VUR) をはじめとした先天性尿路異常の存在である。尿路異常のない小児での起因菌はEscherichia coli.(E.coli) が 70% 以上を占めるが、尿路異常を有する児ではその占有率が減少し、Enterococcus、Klebsiella spp、Proteus属などの腸内細菌の割合が増加する。さらに尿路異常を有する児では、細菌が産生するバイオフィルムの問題がある。バイオフィルムは抗菌薬や生体側からの感染防御系に対する抵抗因子であり、基礎疾患が存続する症例では、しばしば除菌が困難となる。さらに最近では、ESBL 産生性 E.coli や Klebsiella の増加、カルバペネム耐性腸内細菌の出現など、罹患児のみならず重大な院内感染を引き起こす極めて憂慮される問題も発生している。
 腎瘢痕や腎萎縮を予防するための検査法や予防的治療については以前から各国で取り組まれてきた。AAP ガイドラインでは、2 か月〜2 歳児の発熱性 UTI では全例に腎エコー検査、水腎症や腎瘢痕を認めた場合には VCUG の実施を推奨しているが、一方 NICE では、6 か月未満または非典型的経過や UTI の再発時に腎エコー検査、6 か月以上で非典型的な経過や再発時に VCUG を実施すべきとされている。両者を比較した後ろ向き検討では、両ガイドラインともに grade II 以上の VUR が半数以上見逃されているという実態が明らかになっている。このことから、実際には各ガイドラインの限界を知った上での運用が望ましいと思われる。


ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)

大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
TOPへ戻る大阪大学小児科

copyright2001-大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学小児科学All rights Reserved.