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2019年秋の講演会のお知らせ  <2019.9更新>

 第29回講演会を、下記の要領にて開催いたします。
 特別講演といたしましては、「インフルエンザ脳症 〜わかってきたことと今後の課題〜」という演題にて、奥野英雄 先生(大阪大学医学部附属病院 感染制御部)にお話しいただきます。また一般演題の発表も、2題予定しております。どうかご期待ください。

 なお、本研究会の活動の更なる充実を図るため、誠に申し訳ございませんが、当日に参加費500円を徴収させていただきます。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
 当日は、軽食をご用意させていただきます。(駐車券のご用意はございません。何卒ご了承ください。)

  会員の方々には間もなく、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

 本講演会の担当世話人は、大阪大学医学部附属病院の吉田寿雄 先生と、大阪急性期・総合医療センターの高野智子 先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


出欠は、次の2つのどれかでご返事ください。
a. 郵送するご案内に同封の「FAX出欠回答用紙」に記入の上、事務局あてFAXする。
b. 氏名と所属を明らかにして「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」へ出欠を電子メールで知らせる。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)


<<講演会>>

日時:令和元年10月3日(木)18:50〜21:00

会場: ホテルグランヴィア大阪 20F鳳凰

〒530-0001 大阪市北区梅田3丁目1番1号
(TEL:06-6344-1235(代表))
JR大阪駅 中央口を出て右手すぐ

<<講演要旨>>

19:05〜19:45 一般演題
@救命しえなかったインフルエンザ脳症の2例
演者 鷹野美織 先生(大阪急性期・総合医療センター 小児科)

当センターで2009-2018年に経験したインフルエンザ脳症の2例を報告する。

【症例1】1歳男児。特に既往歴なし。入院当日昼に発熱。近医受診し、インフルエンザBと診断された。17:00、間代性痙攣出現し、前医救急搬送。ジアゼパム、ミダゾラム2回投与にて止痙せず、当センターへ転院となった。転院時、痙攣持続、ミダゾラム2回、チアミラール投与にて19:15に止痙した。入院時の頭部CTでは脳浮腫の所見を認めなかったが、脳波にて高振幅徐波を認めた。インフルエンザ脳症の可能性を考え、ステロイドパルス療法・フェノバルビタール投与を開始した。入院翌日、意識レベルの回復はなく、11時ころ、徐脈、血圧低下、自発呼吸も不安定になり、人工呼吸管理を行い、カテコラミン投与も開始した。その時の頭部CTでは大脳広範囲の著明な脳浮腫を認め、インフルエンザ脳症と考えられた。その後、意識レベル、自発呼吸が回復することなく、入院41日目に永眠された。
【症例2】5歳男児。慢性ITPにてプレドニゾロン内服中であった。熱性けいれんの既往あり。入院前日より発熱。入院当日朝より、ぼんやりしているとのことで前医受診し、インフルエンザAと診断された。前医で点滴開始時に痙攣を認め、2分で自然止痙した。15時ころ3分の痙攣があり、ジアゼパム、ミダゾラム、フェノバルビタールを投与された。16:49、不整脈(モニターでは上室性頻拍、232bpm)、自発呼吸消失し、CPR行った。sinusリズムに回復するが自発呼吸はなく、人工呼吸管理され、当センターへ転院となった。来院時、ショックバイタルであり、カテコラミン投与開始した。頭部CTでは広範囲な脳浮腫を認め、インフルエンザ脳症と考えられた。また、心エコーではEF20%と低下し、心筋炎も併発していた。脳症もありECMOの適応はなく、循環呼吸管理を行うが、転院当日に永眠された。
【まとめ】急速に進行するタイプのインフルエンザ脳症を経験した。有効な治療がなかった。

 

Aインフルエンザ罹患後に辺縁系脳炎を呈した1例
演者 渡辺陽和 先生(市立豊中病院 小児科)

【はじめに】インフルエンザに伴う中枢神経合併症としては熱性痙攣、熱せん妄、急性脳症などがある。異常行動も一定の頻度でみられるが、多くの場合は一過性であり、熱せん妄の症状として診断されることが多い。今回我々はインフルエンザ罹患後に遷延する異常行動を認め、辺縁系脳炎の診断となった一例を経験したため報告する。
【症例】14歳男児。発熱1日目(発症1日目)にインフルエンザBの診断でザナミビル処方され、用法用量通りに使用、3日目に解熱を認めた。4日目より突然奇声を挙げる、自宅から飛び出すなどの行動がみられ、近医内科受診、抗不安薬処方で様子観察となったが、改善なく、9日目に自宅(4階)から転落し当院救急外来搬送となった。初診時は発熱みられず、簡単な会話は可能で見当識障害はみられなかったが、間欠的に意識の変動がみられた。脳波で左右差があり、行動異常もあったことから辺縁系脳炎を疑い、ステロイドパルス、ACV開始とした。入院後も間欠的な言動の異常はあり、無動と興奮を繰り返す状態であった。MRIは異常なく、SPECTで右内側側頭葉の集積低下を認めたため、辺縁系脳炎の診断、IVIG投与を追加したところ、症状は改善認め、入院より1ヶ月半での退院となった。退院後も週〜月単位での精神症状がみられたため、発症9ヶ月時点でIVIGを再投与とした。その後は精神症状含む後遺症はみられず、追加治療を要さず経過している。
【考察】辺縁系脳炎とは意識障害出現前に辺縁系症状を示し、その後脳炎症状がみられる疾患であり、感染や自己抗体介在性など様々な原因で発症する。自己抗体介在性の場合は経過が長期化し、予後良好なものであっても、年単位で症状の改善がみられることも稀ではない。本症例も後遺症なく発症前の状態になるまで約1年要しており、自己抗体介在性辺縁系脳炎として矛盾しない経過であると考えられた。

 

 

19:55〜20:55 特別講演

○インフルエンザ脳症 〜わかってきたことと今後の課題〜
演者 奥野英雄 先生(大阪大学医学部附属病院 感染制御部)
 インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる発熱や呼吸器症状などを中心とした気道感染症である。単なる呼吸器感染症にとどまらず、呼吸器や循環器系の合併症を引き起こし、インフルエンザの流行の大きな年には、結果的に総死亡者数が増加することが報告されている。
 インフルエンザは、中枢神経症状も合併することが知られており、特にインフルエンザに関連した急性脳症は「インフルエンザ脳症」と呼ばれ恐れられている。インフルエンザ脳症は、1990年代から日本を中心としたアジア諸国から報告され、2000年前半には日本発のインフルエンザ脳症のガイドラインも作成された。当初は、アジア諸国を中心とした報告であったこともあり、欧米諸国での認知度は高くなかったが、2009年のA(H1N1)pdm09の世界的な流行を契機に米国でもインフルエンザ脳症と思われる、中枢神経症状が報告されるようになった。米国での人種間での罹患割合を検討し、他の人種と比較してアジア人で罹患割合が高いという報告もなされた。
 インフルエンザ脳症は小児例の報告が多かったが、少ないながらも成人例の報告もみられ、関心も高まっている。報告によると、成人例の致命率は小児例と同様に高く、特に高齢者ではより高いことが指摘されている。
 このように、インフルエンザ脳症に関する認知は広がってきており、その疫学情報も集積されてきているが、一方で治療方針に関してはまだまだ明確なものが少ないのが現状である。罹患割合が非常に低いことに加え、一口にインフルエンザ脳症といっても、けいれんを中心とし神経学的後遺症を高率に残すけいれん重積型急性脳症や、両側対称性の視床病変を特徴とする急性壊死性脳症など臨床病型はいくつかに分かれ、その病態に応じた治療戦略が求められることが一因と考えられる。
 インフルエンザ脳症の治療に関してはまだまだ課題も多く、ワクチンを含めた予防に関しても目を向けていく必要がある。


ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)

大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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