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2021年夏の講演会のお知らせ  <2021.8.20更新>

 第30回講演会を、下記の要領にて開催いたします。

 特別講演といたしましては、「新興・再興感染症を通して考える“人にとっての感染症” 〜SARS、COVID-19の経験を交えた渡航医学的視点〜」という演題にて、三島伸介 先生(関西医科大学総合医療センター 感染制御部 部長)にお話しいただきます。また一般演題の発表も、2題予定しております。どうかご期待ください。

 なお今回の講演会は、参加事前申込制のオンライン開催を予定しております。
会員の方々には、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

  本講演会の担当世話人は、大阪医科薬科大学病院の新田雅彦 先生と、大阪府済生会野江病院の野田幸弘 先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


参加申込方法

・参加希望の方は、申込メールを、事務局のアドレス【kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp(*を@に変えて)】宛てにお送りください。
【記載事項】
①お名前
②ご施設・ご所属
③連絡先(電話番号と、メールアドレス)

・その後1週間以内をめどに、zoom視聴のための登録用URL情報を、事務局より返信メールいたします。
・その返信メールに記載されておりますURLにアクセスいただき、登録を完了されましたら、登録者専用の視聴用URLがzoomより発行されます。講演会当日は、そのURLにアクセスしてご視聴ください。
(本講演会は医療関係者を対象としております。知り得たURL情報は他の方に転送されないようご留意ください。)

・視聴システムの関係上、申込メール締切【9/10(金)】の期限厳守にご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


<<講演会>>

日時:令和3(2021)年9月16日(木)19:00〜21:00

方法: ライブウェブ配信(zoomウェビナー)

<<講演要旨>>

19:15〜19:55 一般演題
①民間小児病院におけるCOVID-19対応病床運用の実際
演者 荒木敦 先生(大阪旭こども病院)

【はじめに】2020年2月から我が国でCOVID-19感染が拡大し、大阪府の要請で各医療機関に対応病床の整備が求められた。当院でも8月から4床の小児科対応病床を確保し、2021年7月までに62名の入院患者を受け入れた。未知のウイルス感染に対する検査方法の推移や病棟運営上の工夫について報告する。
【報告】当院は大阪市東部の旭区にある社会医療法人で、一般病床79床の小児内科専門病院である。常勤小児科医は10名で非常勤の応援を得て、24時間365日態勢で小児救急に対応している。2020年2月からCOVID-19感染防止対策として病棟内の5部屋(10床)をゾーニングして、感染疑いの患者を隔離対応した。7月までに34 名入室し、その内22例のPCR検査を大阪健康安全基盤研究所に提出したが全て陰性であった。2020年8月からCOVID-19感染の軽症・中等症の受け入れ協力病院としてハイケアユニットを整備して運用開始した。以降、大阪府フォローアップセンターからの依頼で2021年7月までに陽性者・濃厚接触者62名の入院受け入れを行った。年齢では1歳以下が18名と最も多かった。当初は抗原検査でスクリーニングを行ったが、2021年1月から院内にスマートジーンを導入しPCR検査が可能になった。小児では家族内感染が主で、付き添いなしの入院が殆どであるため看護師が常に側で見守らなければならず、感染防止対策に特に注意を要した。COVID-19感染受け入れ当初は個人防護具の確保が難しく、手作りのもので代用することもあった。経過中に肺炎が重症化し、転院が必要になったのは基礎疾患のある1例だけだった。
【考察】小児の場合はCOVID-19感染でも発熱や咳嗽のみの場合が多く、家族との隔離や経過観察目的の入院が殆どであった。症状が改善しても隔離解除までの期間入院を求められることが多く、児のストレス軽減に工夫が必要であった。

 

②COVID-19蔓延防止のための長期休校がこどものこころに与える影響について
演者 島川修一 先生(大阪医科薬科大学病院 小児科)

【はじめに】COVID-19蔓延防止のため、2020年3月2日から学校は一斉休校となった。この長期休校による、子どもたちのこころへの影響を評価した。過去には長期休校で孤独感が増すマイナスの影響、いじめなどの学校での問題から解放されるプラスの影響が報告されているため、学校に負担を感じるリスクの高い心身症や神経発達障害を含めた調査が必要と考えた。また、子どもは言語能力が未熟であり、容易にストレスが身体化することから、心身状態を評価するため、評価法にはQTA30(Questionnaire for Triage and Assessment with 30 items)を用いた。
【対象と方法】大阪医科薬科大学病院で慢性疾患と診断された小学4年生から中学3年生の児童とその保護者に質問票とQTA30を配布し、286家族から回答を得た。児童には休校中の状態を回答させ、保護者には子どもの休校前、中、後のQTAの身体症状(SS)について回答させた。児童を診断別に、「心身症」群(P群, n = 42)、「神経発達障害」群(D群, n = 89)、「その他の疾患」群(O群, n = 155)に分けて評価した。QTA30の得点が37点以上(要配慮)の生徒の割合を算出した。また、休校中の学校に対する児童の思いと要配慮との関係を評価した。さらに、保護者の回答を用いて、保護者から見た児童の休校前、中、後のQTAの身体症状(SS)のスコアの変化を評価した。
【結果】要配慮と診断される児童の割合は,すべてのグループ(P群54.1%,D群23.6%, O群14.2%)で一般児童を対象とした過去の報告(11.3%)と比べ高かった。P群の要配慮と診断される児童に「学校のことを考えたくない」という回答が有意に多く、O群の要配慮と診断されない児童に「早く学校に戻りたい」という回答が有意に多かった。また、親の休校前、中、後のSSスコアは、P群で、学校閉鎖中に一過性に低下し,学校再開後に上昇した。
【まとめ】長期休校がメンタルヘルスに与える影響は,慢性疾患の児童の診断や学校閉鎖中の学校に対する思いによって異なることがわかった。

 

19:55〜20:55 特別講演

○新興・再興感染症を通して考える“人にとっての感染症”
〜SARS、COVID-19の経験を交えた渡航医学的視点〜
演者 三島伸介 先生(関西医科大学総合医療センター 感染制御部 部長)
 2019年末から世界でパンデミックを起こした新型コロナウイルス感染症は、それまでの人々の生活を一変させることとなった。日本政府観光局によると、2020年の日本人出国者数は前年比84.2%減の317万4,200人であった。2019年では毎月百数十万人の邦人が外国へ渡航していたが、2020年4月は4,000人という最小値を示し、それ以降は約3万人前後で推移している。世界各地を数千万単位の渡航者が移動する状況が日常的となっていた最中、人々の行動が一斉に制限を受けることを余儀なくされた。新型コロナウイルス感染症の流行に伴う我々の日常生活の変化をみるに、感染症、特に伝染性疾患の場合、それによる影響は個人だけの範囲にとどまらず、広く社会に影響を与え得るものであることがわかる。したがって、感染症については医療従事者だけではなく、社会生活を営む者すべてが一定程度の知識を広く共有することが大切であり、そのためには学校教育にも感染症を組み込んでいくべきではないかと思われる。感染に関する知識の共有は、個人の健康を守ることと同時に、人々が生活する社会そのものをも守るという意義につながるだろう。また、微生物、ことに病原微生物となると人への負の作用にばかりが論点になりがちだが、正の側面についてはどうだろうか。
  新興・再興感染症は、21世紀以降だけでみても、SARSを皮切りに約20年の間に少なくとも5種確認できる。新興・再興感染症がいつ何時、どの地に発生するかを予測するのは困難である。すなわち、平時から有事に置き換わった際の対応を実行するための心構えが常日頃より大切となる。感染症は国内のみに目を向けるだけではなく、地球を鳥瞰する広い視野で捉えるべき対象であり、渡航医学は国境を往来する感染リスクに曝される人々の健康を守る重要な位置にあり、今後の感染症を捉えていく上で鍵を握る一つのアプローチになると考える。


ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)

大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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