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2022年春の講演会のお知らせ  <2022.3更新>

 第31回講演会を、下記の要領にて開催いたします。

 このたびは「COVID-19」をテーマとし、一般演題2題、特別講演2題の構成にて予定しております。特別講演では、大阪市立大学大学院医学研究科 寄生虫学分野の准教授 城戸康年先生と、特任講師 中釜悠先生にご講演いただきます。

 なお今回の講演会は、参加事前申込制のオンライン開催を予定しております。
会員の方々には、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

  本講演会の担当世話人は、大阪市立大学大学院医学研究科の瀬戸俊之先生と、近畿大学の宮崎紘平先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


参加申込方法

・参加希望の方は、申込メールを、事務局のアドレス【kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp(*を@に変えて)】宛てにお送りください。
【記載事項】
・メール件名:大阪小児感染症研究会講演会(31)申込
①お名前
②ご施設・ご所属
③連絡先(電話番号と、メールアドレス)

・その後1週間以内をめどに、zoom視聴のための登録用URL情報を、事務局より返信メールいたします。
・その返信メールに記載されておりますURLにアクセスいただき、登録を完了されましたら、登録者専用の視聴用URLがzoomより発行されます。講演会当日は、そのURLにアクセスしてご視聴ください。
(本講演会は医療関係者を対象としております。知り得たURL情報は他の方に転送されないようご留意ください。)

申込メール締切【4/15(金)】の期限厳守にご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


<<講演会>>

令和4(2022)年4月21日(木)19:00〜21:15

方法: ライブウェブ配信(zoomウェビナー)

<<講演要旨>>

19:10〜19:40 一般演題
①COVID-19に罹患しサイトカイン放出症候群(CRS)を呈した生後1か月の乳児例の経験
演者 神田咲希 先生(関西医科大学 小児科学講座)

【緒言】小児において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は軽症と考えられているが、年長児においてはCOVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C)のように、COVID-19に罹患数週間後に川崎病類似症状、心機能低下や消化器症状を呈する重症例も報告されている。その病態はサイトカインストームと血管内皮障害が深く関与していると考えられている。今回サイトカイン放出症候群(CRS)を呈した生後1か月のCOVID-19症例を経験したので報告する。
【症例】日齢44の男児。発熱と哺乳不良、頻回の下痢を主訴に受診し、第2病日に入院した。入院時は発熱と頻脈以外に明らかな異常所見はなく、入院時の血液検査では、末梢血にてHbが低下しており、生化学では低Na血症、肝逸脱酵素の上昇、低コレステロール血症、プロカルシトニン(procalcitonin: PCT)の上昇を認めた。胸部レントゲンでは両肺野に明らかな浸潤影はなかった。心臓超音波検査でも心嚢液貯留や心機能の異常は認めなかった。第3病日も高熱が持続し、血液検査では肝逸脱酵素の上昇と血小板数の低下、Dダイマーの上昇を認めたため、高サイトカイン血症の可能性を考え、デキサメタゾンの全身投与を施行した。その後解熱し、症状は軽快し心機能障害はなく第11病日に退院となった。入院翌日に採取した検体で施行したサイトカインプロファイル解析では、neopterin (72 nmo/L, 基準値< 5)、IL-18 (760 pg/mL, 基準値< 500)、IL-6 (23 pg/mL, 基準値< 5)、sTNF-R1 (3240 pg/mL, 基準値484-1407)、TNF-R2 (18,800 pg/mL, 基準値829-2262) と測定した全ての炎症性サイトカインが上昇しCRSが生じていた。
【考察】COVID-19の重症化はCRSと密接に関連していると言われており、本症例は生後44日の早期乳児であるが第3病日でCRSを発症していた。CRSを疑い3病日からデキサメタゾンを投与したことで、心機能障害や多臓器不全といった重症化はなくCRSを沈静化させることができたと思われた。
【結語】新生児や乳児のCOVID-19感染症においてもCRSをきたすことがあるため、重症化を防ぐために早期にステロイド治療を検討する必要がある。

 

②COVID-19のアウトブレイクと一致したネフローゼ症候群の超過発生
演者 木島衣理 先生(箕面市立病院 小児科)

小児ネフローゼ症候群は年間発症率が10万人に5人程度と比較的稀な疾患であり当院では年間数例が初発あるいは再発で入院加療を要する。当院では、大阪府のSARS-CoV-2陽性者数の増加に合致して第1波(2020年3月〜5月)は初発2例、再発4例、第2波(2020年7月〜9月)は初発2例、再発5例、第3〜4波(2020年10月〜2021年5月)は初発2例、再発8例と1年2ヶ月間で初発6例、再発17例が発症した。1996年10月から2020年2月までの23年4ヶ月間を通常期、2020年3月から2021年5月までの1年2ヶ月間をアウトブレイク期とすると、初発に関しては通常期が0.11人/月、アウトブレイク期が0.4人/月、再発に関しては通常期が0.41回/人年、アウトブレイク期が1.45回/人年であり初発再発共に患者数が約3〜4倍増加した(χ二乗検定:p<0.01)。一方で、先行感染を疑う症状を認めた患者は存在しなかった。アウトブレイク期に発症した9例のSARS-CoV-2ウイルスカプシド抗体(ロシュ製キット ECLIA法)は全例で陰性だった。ネフローゼ症候群の超過発生の原因としては、COVID-19、あるいはCOVID-19以外の感染が関連する可能性がある。しかし、SARS-CoV-2抗体が陰性であったことからCOVID-19罹患は否定的であり、またCOVID-19流行後は小児の感染症が激減していることから、感染以外のネフローゼ症候群の発症原因が推定された。
精神的ストレスが小児ネフローゼ症候群の再発原因となるという報告がある事、更に東日本大震災後にネフローゼ症候群発症が増加した報告が存在することから、COVID-19の大流行による休校、外遊びの制限等が日本人小児に多大な精神的ストレスをもたらしたことが今回のネフローゼ症候群の超過発生と関与した可能性が示唆される。

 

 

19:40〜20:10 特別講演①

COVID-19の病態を規定する血清マーカー、免疫指標
演者 中釜悠 先生(大阪市立大学大学院医学研究科 寄生虫学分野 特任講師)
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、軽症の感冒様疾患から重度の肺炎に至るまで、幅広い疾患スペクトラムを構成する特異な気道感染症である。我々は、COVID-19の病型・重症度を規定する宿主要因を突き止めたいと考えた。
 COVID-19の病型・重症度は感染巣の広がりと相関する。侵入門戸である気道上皮にSARS-CoV-2が感染した後、極めて限局的な組織破壊にとどまる軽症例が多く存在する中、近傍の肺胞組織はおろか、そのバリアを超え全身遠隔臓器へと播種性に感染が広がる重症ウイルス血症が一部の感染者で見られる。感染巣の広がりは、ウイルスにとって最初の感染標的となる宿主気道上皮細胞の挙動に左右されることが分かってきた。最前線で病原体と対峙する気道上皮細胞は、ウイルスの侵入を検知後、自らが発信源となる生体防御シグナルを作動させる。気道上皮における病原体との相互作用が起点となって、多層的な宿主生体防御機構が発動し、様々な生理活性分子が病型・重症度ごとに異なるプロファイルを以って血清中を巡ることとなる。
 宿主ー病原体相互作用の「最前線(=気道上皮)」と「全身」とを繋ぐ生理活性分子の血清動態は、宿主細胞と病原体の相互作用の帰結を反映する鋭敏なマーカーである。疾患の病型や重症度分類を可能にするだけでなく、それ自身がまた病態を規定する実効因子たりうる。本発表では、我々の最近の研究から、血清タンパク質や生理活性代謝物の動態解析の結果について概説し、血清マーカーを用いたCOVID-19のリスク評価、治療層別化について議論する。

 

20:10〜21:10 特別講演②

自然感染とワクチン接種の比較から理解する新型コロナウイルスに対する免疫応答
演者 城戸康年 先生(大阪市立大学大学院医学研究科 寄生虫学分野 准教授)
 19世紀末,破傷風菌の純粋培養の研究に従事していた北里柴三郎らは,病原体由来の毒性物質を無毒化する無細胞の血液成分「抗毒素」,つまり抗体が,診断・治療・予防に資することを発見した.この概念は現在の世界を襲った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいても、ワクチンや中和抗体医薬品開発の基盤となった.
 SARS-CoV-2に対する集団免疫は,自然感染誘導免疫よりもワクチン誘発免疫に大きく依存することになり、COVID-19のパンデミックを軽減することに貢献してきた.SARS-CoV-2に特徴的な遺伝的多様性を持ったタンパク質として,ヌクレオカプシド(N)タンパク質とスパイク(S)タンパク質がある.抗N抗体はウイルス中和機能を有さない一方,抗S抗体はウイルス中和機能を持ち、ワクチン接種により獲得できる抗体である.
 ヒトが獲得する抗体の「質」を規定する要因として、エピトープ(抗原決定基)プロファイルや抗体親和性が挙げられる.他方,抗S抗体価はS抗体の総量を示すが,これはウイルスの無毒化の指標として「量的」な一面を反映する.自然感染により得られる抗体とワクチンにより得られる抗体の「質」および「量」を比較することで,自然感染ではごく一部の領域に強く反応する抗体が作られているのに対し,ワクチン接種者では幅広い種類の抗体が作られていることが分かった. また,これまでの研究により,抗体価とワクチン接種後の感染予防/重症化予防効果(ワクチン有効性)との関係が徐々にわかってきた.さらに,ワクチン有効性は経時的な変化や、時の流行株にも大きく影響を受ける.本講演では、オミクロン株の影響や3回目接種の有効性や今後の展望を含め,主に液性免疫が果たす役割について考察したい.


ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)

大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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