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2022年秋の講演会のお知らせ  <2022.9更新>

 第32回講演会を、下記の要領にて開催いたします。

 特別講演といたしまして「ムンプス難聴の現状と課題」という演題にて、守本倫子 先生(国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 診療部長/小児気道疾患センター センター長)にお話しいただきます。また、一般演題の発表も2題予定しております。どうかご期待ください。

 なお今回の講演会は、参加事前申込制のオンライン開催を予定しております。
会員の方々には、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

  本講演会の担当世話人は、大阪市立総合医療センターの天羽清子先生と、大阪市保健所の廣川秀徹先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


参加申込方法

・参加希望の方は、申込メールを、事務局のアドレス【kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp(*を@に変えて)】宛てにお送りください。
【記載事項】
・メール件名:大阪小児感染症研究会講演会(32)申込
①お名前
②ご施設・ご所属
③連絡先(電話番号と、メールアドレス)

・その後1週間以内をめどに、zoom視聴のための登録用URL情報を、事務局より返信メールいたします。
・その返信メールに記載されておりますURLにアクセスいただき、登録を完了されましたら、登録者専用の視聴用URLがzoomより発行されます。講演会当日は、そのURLにアクセスしてご視聴ください。
(本講演会は医療関係者を対象としております。知り得たURL情報は他の方に転送されないようご留意ください。)

申込メール締切【10/14(金)】の期限厳守にご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


<<講演会>>

令和4(2022)年10月20日(木)19:00〜20:50

方法: ライブウェブ配信(zoomウェビナー)

<<講演要旨>>

19:15〜19:45 一般演題
①新生児感染症における初診時検査所見の検討
演者 伊東 英美 先生(箕面市立病院 小児科)

【はじめに】新生児の感染症は、重症化しやすく初期治療が適切かつ迅速に行われる必要があるが、初診時に適切な治療を選択する事はしばしば困難である。今回、我々は初診時により適切な治療の選択が可能であるかどうかを検討するため、新生児の発熱患者を対象に診療録を用いて後方視的に検討した
【対象と方法】2016-2022年に発熱精査のために当院に入院し、感染症と診断した生後30日未満の新生児64名。そのうち、培養検査で原因と考えられる細菌が同定された12名を細菌群、エンテロウイルスもしくはパレコウイルスが検出された20名をEV/PeV群、RSウイルスを含むその他のウイルス感染症と診断した31名をその他群に分類した。細菌とウイルスが同時に検出された1名は除外した。以上の3群における初診時の臨床症状、初回の血液検査所見および尿中β2microglobrin/creatinine(uβ2MG/Cr)値をTukey-Kramer検定を用いて解析した。p値は検定の多重性を考慮しp<0.017を有意とした
【結果】EV/PeV群では、uβ2MG値が細菌群(p=0.0015)、その他群(p=0.0006)と比較して有意に高値で、初診時の体温がその他群(p<0.001)と比較して有意に高値であった。細菌群では、白血球数がEV/PeV群(p<0.001)、その他群(p=0.0005)、好中球数がEV/PeV群(p=0.0002)、その他群(p<0.001)、CRP値がEV/PeV群(p=0.0024)と比較して、それぞれ有意に高値であった
【考察】我々はこれまでに、エンテロウイルス、パレコウイルス感染症では発熱初期にuβ2MG値が高値となる事を報告してきた。uβ2MG値を既存のバイオマーカーと組み合わせることで、新生児感染症における初期の治療戦略の立案に役立てることが可能であると考えた。

 

②先天性風疹症候群による両側難聴の一例
演者 堀田 貴大 先生(大阪市立総合医療センター 小児救急・感染症内科)

【症例】1歳8カ月 男児
【現病歴】
患児の母は結婚前に風疹抗体価が低値(HI 8倍以下)のため、風疹ワクチンを接種した。その後妊娠が判明(接種時は推定妊娠4週)したが、妊娠を継続した(妊娠11週の風疹HI 64倍)。その後母は症状なく経過し、胎児も異常は指摘されなかった。41週2日に出生した(3664g、Apgar score: 8/9点)が、出生時の自動聴性脳幹反射で両側referであった。頭部・腹部超音波検査、眼科診察では異常は認めなかったが、心臓超音波検査で末梢性肺動脈狭窄を認めた。咽頭拭い・唾液・尿の風疹PCRを2回施行するも陰性だったが、先天性風疹症候群(CRS)の可能性があり、生後2カ月時に当院紹介となった。聴性脳幹反応は右耳:105dB、左耳:90dBと両側の高度感音性難聴であり、生後1カ月時点での母の抗体価はIgG(EIA) 128以上、IgG(HI) 512倍、IgM(EIA) 1.17とIgGの抗体価は非常に高く、風疹ウイルスの不顕性感染を起こしていた可能性が示唆された。同時期の児の抗体価もIgG(EIA) 82.9、IgG(HI) 256倍、IgM(EIA) 6.17とIgG、IgM共に非常に高値であり、他の先天感染は否定的なため、症状からも先天性風疹症候群が考えられた。5カ月頃に補聴器を開始、1歳8カ月時点で有意語数後あり、よく転ぶが歩行はできている。
【考察】
先天性難聴は約1000出生数に対して1人の割合で生まれる最も多い先天性障害である。60-70%は遺伝性難聴、残りは非遺伝性(感染、外傷、薬剤など)によるものとされている。感染はサイトメガロウイルスが多いとされているが、依然としてCRSによる難聴も散見される。妊娠12週までに母体が感染した場合、最大85%の割合で発生する。風疹ワクチンで発症予防が可能だが、妊娠中の生ワクチン接種は禁忌である。妊娠中の風疹ワクチン接種によるCRS発症の報告はなく、本症例では出生時の母児の抗体価が高いことから妊娠初期に感染したが、ワクチンによって出来た抗体により、母体は不顕性、児も出生時にウイルス検出されなかった可能性が示唆された。

 

19:45〜20:45 特別講演

ムンプス難聴の現状と課題
演者 守本 倫子 先生(国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 診療部長/小児気道疾患センター センター長)

 流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによって生じ、3-4年周期で大流行が起こっているが、これを予防するワクチンはいまだ任意接種といった状態である。両側唾液腺腫脹が特徴であるが、無菌性髄膜炎や睾丸炎、難聴などが合併症として生じることがある。その中でも、後遺症としての難聴は永続的なものであり、日常生活に多大な影響を及ぼす。このため2015-2016年に大流行したときに、日本耳鼻咽喉科学会はムンプス難聴について全国調査を行った。その結果、その2年間の流行で少なくとも226人のムンプス難聴患者が生じ、そのうち15人は両側難聴になったことが明らかになった。
 ムンプス難聴の特徴:ほぼ9割が高度以上の難聴であり、突発性難聴と異なりステロイド治療などにも全く反応がない。このため両側難聴では人工内耳植込術などの補聴を行わないとコミュニケーションが不可能となり、一側難聴でも方向感の欠如や雑音下での会話の聞き取りが困難になるなど、日常生活でも困難を生じる。
 予防接種の影響:予防接種をしていたとしても、難聴になっている例はあるが、自然罹患による発症頻度は0.1%あるのに比較するとごく稀と考える。「もしかして予防接種をしていたなら、子どもがムンプスに罹患したとしても難聴にはならなかったかもしれない」、という自責の念にかられる親も散見される。無菌性髄膜炎の頻度は、自然罹患によると1-10%、ワクチンによる副反応では0.1-0.01%であり、予防接種推進に何も障壁はないようにみえるが、新しい予防接種の開発もまだ中途であり、定期接種化される目途はついていない。
現在定期接種化されるために働きかけが行われているが、そのためには10万人分の接種登録および副反応のデータが必要であり、まだ道のりは遠い。



ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)

大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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