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2023年秋の講演会のお知らせ  <2023.9更新>

 第34回講演会を、下記の要領にて開催いたします。

 特別講演といたしまして「小児のRSウイルス感染症の現状と課題」という演題にて、齋藤昭彦 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野 教授)にお話しいただきます。また、一般演題の発表も2題予定しております。どうかご期待ください。

 なお今回の講演会は、参加事前申込制のオンライン開催を予定しております。
会員の方々には、講演会のご案内を郵送します。会員以外の方々も、どうか多数ご出席くださいますようお願いいたします。

  本講演会の担当世話人は、大阪医科薬科大学の松村英樹 先生と、関西医科大学の松野良介 先生です。

共催:大阪小児感染症研究会・一般財団法人 阪大微生物病研究会


参加申込方法

・参加希望の方は、申込メールを、事務局のアドレス【kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp(*を@に変えて)】宛てにお送りください。
【記載事項】
・メール件名:大阪小児感染症研究会 講演会(34)申込
①お名前
②ご施設・ご所属
③連絡先(電話番号と、メールアドレス)

・その後1週間以内をめどに、zoom視聴のための登録用URL情報を、事務局より返信メールいたします。
・その返信メールに記載されておりますURLにアクセスいただき、登録を完了されましたら、登録者専用の視聴用URLがzoomより発行されます。講演会当日は、そのURLにアクセスしてご視聴ください。
(本講演会は医療関係者を対象としております。知り得たURL情報は他の方に転送されないようご留意ください。)

申込メール締切【9/29(金)】の期限厳守にご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


<<講演会>>

日時:令和5(2023)年10月5日(木)19:00〜21:00

方法:ライブウェブ配信(zoomウェビナー)

<<講演要旨>>

19:15〜19:55 一般演題
@川崎病の罹患感受性因子としての腸内細菌叢の乱れ
演者 寺本芳樹 先生(関西医科大学 小児科学講座)

【背景】川崎病は遺伝的要因、あるいは環境的要因によって罹患感受性を有する個体が何らかの病原体の感染をトリガーとして過剰な免疫反応を起こして発症する多因子疾患と考えられている。近年、次世代シークエンサーの発達により腸内細菌叢の解析が可能となったことで、川崎病発症時に腸内細菌叢の乱れが存在することが明らかとなった。しかし、川崎病を罹患した児が健康である状態でも腸内細菌叢の乱れが存在することを報告した研究はない。
【方法】2017年3月から2021年12月に川崎病と診断された児(発症時月齢6か月から48か月)を対象とし、罹患から約1年を経過した時点での便を採取した。対照として川崎病の既往がない年齢が一致したボランティアから採便した検体を用いた。検体採取前の1か月間に抗菌薬を使用したものは除外した。採取した検体から細菌DNAを抽出し、Illumina Miseqシステムを使用して16S rRNA遺伝子解析を行った。得られたデータをQIIME2とLEfSeを用いてα多様性、β多様性、門レベルと属レベルでの相対存在量を比較した。
【結果】川崎病群26人、対照群57人が対象となった。対象の年齢、性別には差がなかった。α多様性はShannon指数、Simpson指数、Observed Speciesで有意差はなかったが、Faith’s PDで有意差があった(それぞれp=0.643、p=0.201、p=0.384、p=0.005)。β多様性はBray-Curtis非類似度指数で有意差があった(p=0.003)。門レベルでは川崎病群にBacteroidotaが多く、対照群にFirmicutesが多かった。属レベルでは川崎病群にBacteroides、Ruminococcus gnavusが多く、対照群にはBlautia、Ruminococcus torquesが多かった。
【考察】川崎病既往児に多く認められたBacteroides、Ruminococcus gnavus はその病原性やアレルギー疾患や自己免疫疾患の発症への関与が指摘されている。逆に川崎病既往児に少なかったBlautia、Ruminococcus torquesは代表的な酪酸産生菌であり、免疫調節能をもつことが報告されている。川崎病の既往がある児の腸内細菌叢にはこれらの細菌のバランスの乱れが存在し、過剰な免疫反応を惹起されやすい状態である可能性がある。
【結論】川崎病の既往がある児には、川崎病の非急性期にも腸内細菌叢の乱れが存在する。

 

AMultiplex PCR検査からみえる感染症流行状況
演者 田中智子 先生(大阪医科薬科大学 小児科)

【緒言】Multiplex PCR検査は、多種類の病原体を一度に検出できる検査である。当院では、SARS-CoV-2対策の一環としてMultiplex PCR検査が導入され、当院の医療圏における経時的な感染症動向が明らかになった。
【方法】入院時および有症状者に対するスクリーニング検査としてMultiplex PCR検査 (Film Array®呼吸器パネル 2.1)を施行された20歳未満の小児科患者を対象とし、検出された病原体、年齢、検査日などを後方視的に検討した。対象期間は、当院で同検査が導入された2020年11月から2023年7月までの約3年間で、対象検査数は2552回である。
【結果】対象者の約半数が6歳未満の乳幼児だった。SARS-CoV-2は、いわゆる第5波まではほとんど検出がなかったが、2022年1月からの第6波の流行時期から検出されるようになり、第7波で最大の検出数となったが、第8波以降は当院での検出数は減少した。インフルエンザは2022年11月までは検出がなく、2023年2月にインフルエンザA型の流行があった。RSVは春から初夏に増加し、hMPVは2021年にはほとんど検出されなったが、2022年以降はRSVの流行後に検出が増えていた。パラインフルエンザは、2021年初夏に3型の大きな検出の増加があった。各年齢別の検出率は、RSVは0歳から2歳が多く、9歳以降は検出率が低かった。hMPVは2歳から8歳頃までの検出率が高く、0歳の検出率は低かった。アデノウイルスは、1歳から4歳で検出率が高かった。
【考察・結語】Multiplex PCR検査により「かぜ」としか診断できなかった感染症が区別できるようになり、感染症診療は大きく変わりつつある。多数の病原体の有無が明らかになり、検査の長所・短所を認識しつつ診療に活かせる状況になってきた。

 

19:55〜20:55 特別講演
小児のRSウイルス感染症の現状と課題
演者 齋藤昭彦 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野 教授)

 RSウイルスは、特に新生児や乳児、早期幼児において、感染が下気道に及ぶと、細気管支炎や肺炎などをきたし、低酸素血症、無呼吸などを併発し、重症化したり、時に致死的となる。したがって、小児の急性呼吸器感染症の原因として最も重要なウイルスの1つである。
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、小児の感染症の疫学に大きな影響を与えているが、RSウイルスはその代表的な感染症である。2020年には、ほとんど感染者が見られなかったが、2021年には、これまでのピークを超える大きな流行を早期(春季)から見た。2022年は、大きな流行にはならなかったものの、2023年には、2年前と同様の大きな流行を同様に早期から見た。この様に、RSウイルスの流行予測は極めて難しくなっており、各都道府県において、抗RSウイルスモノクローナル抗体の予防投与開始時期、投与期間について、多くの議論がある。
 一方で、海外では、RSウイルスに対する新たな予防戦略が検討されていて、大きな期待が寄せられている。例えば、妊婦へのワクチン投与により、母親からの移行抗体で一定期間児をRSウイルスから守る戦略、長期作用型の抗RSウイルスモノクローナル抗体によって、1回の接種で1シーズン児をRSウイルスから守る戦略などである。今後、これらの新しいアプローチによって、小児のRSウイルスがコントロールされることが期待される。



ご不明の点があれば当研究会事務局「kansen*ped.med.osaka-u.ac.jp」あてに電子メールでお問い合わせください。
(お願い:メールで連絡を送る際には、上記*を、@に変えてお送りください。)

大阪小児感染症研究会代表世話人 大薗恵一
                                    事務局担当世話人 塩見正司、山本威久

 
 
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