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第4回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第4回セミナーが平成15年2月18日(火)に銀杏会館大会議室で行われました。

セミナーの模様(講演者:今村 健志 先生)

 

 演 題

 

TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達と疾患
【講師】(財)癌研究会癌研究所生化学部 主任研究員
     今村 健志 先生

 

 セミナー要旨

 

 前半は、TGF-βスーパーファミリーであるTGF-βやアクチビン、骨形成因子(BMP)がSmadを介して標的遺伝子の転写が行われるシグナル伝達経路について概説した後、抑制型Smadによるネガティブフィードバック機構について詳しく述べられた。Smad6はBMPsのシグナル伝達は抑制するが、TGF-βのシグナル伝達はあまり抑制しない。それに比してSmad7は、両方のシグナル伝達を抑制する。次にユビキチン・プロテアソーム系が抑制型Smadの作用を調節している分子メカニズムが紹介された。BMP特異型Smad1/5の分解に関与するHECT型E3ユビキチンリガーゼSmurf1や活性型TGF-β特異型Smad2を分解するSmurf2は、核内に移行し、Smad7と結合する。両者の複合体はCRM1依存的に核外へ移行し、TGF-βI型受容体と結合してシグナル伝達を抑制することをデータをもとに示された。
 後半部分は、TGF-β/BMPシグナルと疾患の関係について述べられた。TGF-βは細胞増殖を抑制する一方、微小環境において血管新生、マトリックス産生、免疫機能抑制、PTHrP産生といった作用もあり、癌の浸潤・転移を促進している。これはTGF-βシグナルの抑制が癌の治療に使える可能性を示唆する。また、原発性肺高血圧症のうち家族性の約70%、散発性の約26%にBMPII型受容体に異常が認められることから、この受容体の異常とシグナル伝達について詳細な検討がなされたことについても報告された。原発性肺高血圧症は小児科領域においても重要な難治性疾患であり、今後さらな
る病態解明が進み、新たな治療法が見つかることが望まれる。