TOPへ戻る

 

第5回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第4回セミナーが平成15年4月11日(金)に銀杏会館大会議室で行われました。

セミナーの模様(講演者:林崎 良英 先生)

 

 演 題

 

Dynamic Transcriptome of Mouse
【講師】理化学研究所 横浜研究所 ゲノム科学総合研究センター 
    遺伝子構造・機能研究グループ プロジェクトディレクター
    林崎 良英 先生

 

 セミナー要旨

 

 Transcriptomeとは、生物のゲノムから転写された遺伝子全体を指す用語である。Transcriptomeの解析により、ゲノムの塩基配列からコンピューターが予測できない遺伝子の存在も実証できる。本セミナーでは、マウスの一生の間に各組織でゲノムから転写されるmRNAを,独自の技術を駆使し,完全長cDNAのかたちで網羅的に収集し、それらのexpression profile、protein-protein interactionなどの情報を体系的に整理するマウスエンサイクロペディア計画について、このプロジェクトを開始するに至った経緯、戦略、得られた結果、さらに今後の展望について、ご講演いただいた。
 マウスは、ヒトとほぼ同じ遺伝子を持つことから、ヒトのモデル動物として研究によく用いられている。よって、マウスの完全長cDNAを解析することは非常に重要と考えられている。しかしながら、全ての完全長cDNAを短期間で解析するにはいくつかの技術戦略が必要であった。トレハロースを用いたElongation method、5'-CAPサイトを用いて完全長cDNAのみを選択するSelection method、ビオチン化した既知RNAにより未知cDNAのみを効率よく解析するNormalization and Subtraction method、長いcDNAに対応したcloning vectorにより、約60,000クローンもの解析が可能となった。
 また、予想を上回る数のNon-coding RNAの存在が明らかとなった。例えば、anti-sense transcriptと思われるRNAの存在は、実験手技的に用いられるanti-senseのstrategyが生体内で行なわれている可能性を示唆した。また3'-UTR長の違いにより細胞内turnoverが変化するなどの現象も示された。これらのNon-coding RNAの解析は、今後Positional candidate approachを行うのに良いツールとなると思われる。
 このように、膨大なゲノム情報が次々に解明される中、これらを効率よく活用することが個々の医学研究者に求められており、また情報発信側にも効率の良い情報提供手段の開発(DNA Book(仮称)など)が必要であるということが、最後に強調された。