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第13回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第13回セミナーが平成17年3月31日(火)に銀杏会館大会議室で行われました。

セミナーの模様(講演者:中江 淳先生)

 

 演 題

 

フォークヘッド転写因子FoxOと糖尿病
【講師】
中江 淳 先生
神戸大学大学院医学系研究科
応用分子医学講座
糖尿病代謝消化器腎臓内科COE

 

 セミナー要旨

 

(はじめに)Foxo1は、C.elegansのDAF-16と相同のフォークヘッド型転写因子で、インスリン受容体(IR)・PI3K・PKB/Aktの下流に存在する。IR+/-マウスの耐糖能異常がIR+/-Foxo1+/-マウスで改善することから、Foxo1と糖代謝の関連性は興味深い。Foxo1は肝・膵・脂肪・視床下部に発現し、それぞれの臓器について、Foxo1の役割をみていく。
<肝臓>
転写活性部位を欠くFoxo1は、肝臓においてG6pase、Pepckの発現を抑制され、Foxo1が糖産生にかかわる両遺伝子の制御に関わることが示された。また、構成活性型Foxo1を肝臓特異的に発現させたトランスジェニックマウスでは、G6paseの発現が増加し、糖産生が亢進しており、耐糖能異常が惹起された。
<膵臓>
Irs2+/-マウスの膵β細胞増殖不全は、Irs2+/-Foxo1+/-マウスで回復する。このメカニズムには、Foxo1がPdx1の遺伝子発現を抑制する作用があることが関与していると考えられるが、詳細は不明である。
<脂肪組織>
Foxo1は、脂肪細胞分化に対し、抑制的に作用する。Foxo1を強制発現した細胞では、PPARγの発現は誘導されなかった。Foxo1は脂肪細胞分化過程においては、clonal expansionの終わりの時期に発現し、この時期にp21遺伝子のプロモーター領域に結合していた。また、転写活性部位を欠くFoxo1を脂肪細胞特異的に発現させたトランスジェニックマウスでは、インスリン抵抗性の改善を認めた。
<視床下部>
Foxo1+/-マウスでは、野生型マウスに比し、血中レプチン濃度が減少し、レプチン投与による体重低下が亢進していた。以上から、Foxo1は視床下部においてレプチン感受性を低下させていると考えられる。