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第17回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第17回セミナーが平成18年4月18日(火)に銀杏会館で行われました。

セミナーの模様(講演者:和田 芳直 先生)

 

 演 題

 

Congenital Disorders of Glycosylationの分子診断と質量分析
【講師】
大阪府立母子保健総合医療センター研究所
和田 芳直 先生

 

 セミナー要旨

 
 CDG (Congenital Disorders of Glycosylation)はここ10年ほどで概念が確立してきた新しい先天代謝異常症であり、体内のタンパク質の半数を占める糖タンパク質異常に起因する多彩な臨床症状をもつ疾患である。臨床診断が困難なために非常に多くの患者がてんかんや精神運動発達遅滞などの不定病名のまま正しく診断されていないと考えられる。糖タンパク質には、N型、O型、Cマンノース型などがあり、N型糖鎖の異常による病気が、狭義のCDGとされる。The Metabolic & Molecular Bases of Inherited Diseasesにも、1999年から漸くDefect of N-Glycan SynthesisとしてCDGが代謝疾患のなかに位置づけられるようになったが、このことは1992年に質量分析法により糖タンパク質糖鎖の構造異常が明らかにされた功績が大きいと考えられる。
 糖鎖の合成プロセスには、脂質(ドリコール)上に糖鎖が合成されるアセンブリと、脂質結合糖鎖が翻訳直後のタンパク質にtranslocateした後に糖鎖の刈り込みと再伸長が行われるプロセッシングの二つの過程に分けられる。前者での異常をCDGタイプI、後者での異常をCDGタイプIIと定義する。糖タンパク質における糖鎖機能を解析するためには,これまでは糖タンパク質から糖鎖を切り出して解析していたが,それではタンパク質特定部位おける糖鎖構造を知ることができない。そこで酵素切断などによって糖タンパク質をペプチド鎖に分断し、多数の糖鎖を持たないペプチドから選択的に糖ペプチドを回収する方法を基礎研究において開発し、これによって糖鎖解析の精度が改善し、微量試料を用いたより正確な診断が可能となった。この方法を用いれば、従来解析の難しかったタイプIIの分子診断が可能となる。質量分析法を用いたCDG分子診断は,昨年より、大阪府立母子総合医療センターにおいて行われている。