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第18回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第18回セミナーが平成18年4月25日(火)に附属病院14階会議室で行われました。

セミナーの模様(講演者:戸松 俊治 先生)

 

 演 題

 

Establishment of a therapeutic bone-targeting system to the bone diseases
【講師】
Department of Pediatrics, St. Louis University, St. Louis, MO
戸松 俊治先生

 

 セミナー要旨

 
タイトル:骨疾患に対するbone target systemによる治療戦略

背景:
ムコ多糖症(MPS)と低ALP血症に対する治療として、例えば骨髄移植、遺伝子治療、ERT等が行われている。
現在のMPSの治療に対するアプローチは、肝臓や脾臓のような主要臓器への蓄積をなくすことによって、臨床病理学的改善につながった。しかし、酵素補充療法(Enzyme Replacement Therapy: ERT)を通して投与されるenzyme-based drugの多くが主要臓器には到達するが、骨には少量しか到達しない為、いまだに骨関連の病因を減らすことが出来ていない。
注射された酵素が、骨と軟骨に対し効果的に標的とするならば、治療効果はより劇的で顕著なものになると思われる。
また、酵素の一部は骨髄に達するが、特に無血管成長プレートの軟骨細胞を含め、酵素が骨まで到達することを実証する方法がない。

方法と結果:
CHOcell lineに由来する、精製されたタグなしもしくはタグ付き(小さな酸性ペプチド-6グルタミンが、成熟したタンパク質のN末端にタグとして付いている)の酵素(GALNS)を、それぞれのマウスモデルに単回静脈投与した。
タグ付き酵素は、血液循環で5-10倍長いクリアランスを認めた。
タグ付き酵素はタグなし酵素と比較して、骨と骨髄でより長く保たれ、骨において24時間で3〜4倍高く酵素活性を維持した。
蓄積物質のクリアランスと表現型の反転効果をみるために、マウスモデルに250の単位/gで各々の酵素を12週間毎週、尾静脈を通して与えた。
タグ付き酵素で治療されたマウスの病理学的所見は、タグなし酵素によるそれらと比較して、骨の他、角膜でも蓄積物質のより多くのクリアランスを示した。

TNSALPのタグ付き酵素は、骨でより長い保持を示し、1週間ずっとより高い濃度で存在した。in vitroにおいて、高濃度ピロリン酸塩の存在下でタグ付きもしくはタグなし酵素を用いたmineralization assayでは、低ALP血症患者の骨髄での石灰化を認めた。この結果は、酸性オリゴペプチドが付加したanchorless enzymeは効率よく到達し、骨の石灰化に生理活性的に機能していることを示している。低ALP血症に対し、ERTでこれらのタグ付き酵素を使用できうることが示唆された。

考察:
以上の結果は、骨への到達と臨床的効果を強化するために、タグ付き酵素を使うことの実現可能性があるということを示している。
よって、骨に選抜的に薬物が到達するシステムは、骨系統疾患の治療方法となる可能性があると考えらる。今後、臨床前検査を経て2008年にMPS IVAを対象にERTの臨床治験を行う予定である。