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第22回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第22回セミナーが平成19年6月26日(火)に医学部臨床研究棟3階会議室で行われました。

セミナーの模様(講演者:原田彰宏 先生)

 

 演 題

 

小腸の栄養吸収における低分子量GTP結合蛋白rab8の役割
【講師】
群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野
原田 彰宏

 

 セミナー要旨

  Rab8 GTPaseは腸管上皮細胞の管腔側のタンパクの局在化に関係する。
Rab8ノックアウトマウスは生後2.5-3週より下痢と消耗を呈し、生後5週までに死亡する。免疫組織染色において生後2.5週以降のRab8ノックアウトマウスでは、腸管上皮細胞の基底膜側のタンパクは正確に位置していたが、本来管腔側に位置するペプチダーゼやトランスポーターは小腸のリソソーム内に局在して蓄積していた。ウェスタンブロット法ではこれらの管腔側タンパクの発現がノックアウトマウスで有意に低下していたことから、管腔側タンパクのmislocalizationとそこでのdegradationによって小腸での栄養素の吸収率が低下し、最終的に死に至ると考えられた。さらに、電顕像では管腔側の微絨毛の短縮と膨化したリソソームの増加、さらに腸管上皮細胞内の微絨毛封入体が認められた。一方、ヒトでRab8ノックアウトマウスと同様の表現型を示す微絨毛封入体病の患者においてはRAB8遺伝子変異は認められなかったが、一人の患者の小腸組織の免疫組織染色および定量RT-PCRでRAB8蛋白の発現の低下が認められた。この疾患には臨床的にいくつかの型があることからRAB8以外にもこの疾患に関連する遺伝子が存在すると考えられるが、RAB8遺伝子を再発現させることによってこの疾患を治療できる可能性が示唆された。