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第26回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第26回セミナーが、平成20年6月17日(火)に大阪大学 吹田キャンパス 銀杏会館 大会議室で行われました。

セミナーの模様(講演者:浅原 弘嗣 先生)

 

 演 題

 

システムアプローチによる筋発生における遺伝子ネットワークの解明
【講師】
国立成育医療センター研究所
移植・外科研究部 部長
浅原 弘嗣 先生

 

 セミナー要旨

 

 ポストゲノム時代と呼ばれる現代において、従来までと異なり、総当り的なSystematic BioMedicineが重要であり、いわゆるリバースエンジニアリング的な研究が行えるようになってきている。そのなかで、(1)ハイスループット(HTP)機能スクリーニング (2)ホールマウントin situハイブリダイゼーション(WISH)によるgene expression database (3)ChIP-chip assay の3つが、ポストゲノム時代の研究における主要な骨格となると考えられる。そこで我々は、E9.5-11.5のembryoにおいて1,600ある転写因子のWISHを行い、これを3次元的に記録し時間軸も合わせる事で、4次元的なdatabase "EMBRYS" を作成した。このdatabaseをweb上で公開し、さらに様々な研究者が書き込みを追加できる、Wikipedia的な運用を行っている。
 このような、Systematic BioMedicineによる研究の1例として、筋細胞の発生分化における研究を紹介する。間葉系幹細胞から筋細胞発生において、MyoDが主要な転写因子として同定されているが、筋最終分化での多核化・融合における転写メカニズムはいまだ未解明な点が多い。そこで我々は、筋分化において新たな時空間特異的な転写メカニズムが存在するかについて検討を行った。ここで我々は、WISH databaseから、筋特異的な転写因子を抽出し検討を開始したところ、Zfpxが解析の進んでいない転写因子として浮上してきた。このZfpxをshRNAで阻害すると、in vitroにおいて、筋管形成が阻害されることが判明した。さらに、Zfpx knock outマウスにおいては、骨格筋分化に著しい障害が発生し、筋繊維の数が減少し大きさも不揃いになる事を見出した。また、Zfpxのルシフェラーゼアッセイを行ったところ、MyoDとNeurogeninが引っかかってきた。さらにZfpxのプロモーターにMyoDのbinding siteがあることが判明し、リプレッサーとしてのZfpxの役割が示唆された。Zfpxについての、ChIP-chip assayは現在解析中である。
 Sox9は軟骨分化のMaster遺伝子として重要であるが、これに関わるmiRNAによる制御についても検討中である。miR140はSox9と共発現しており、Sox9のknock downにおいては、miR140も発現していない。さらに、miR140の上流領域にSox9結合部位があることが判明している。これらmiRNAの対象をsystematicに解析するためのトランスレーションアレイを現在立ち上げているところである。