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第48回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第48回セミナーが、平成29年3月2日に臨床研究棟3階セミナー室で行われました。

講演者:森雅樹 先生

 

 演 題

 

小児難病の治療を目指した基礎医学研究への取り組み
【講師】
滋賀医科大学 神経難病研究センター 創薬研究部門
特任准教授  森 雅樹 先生


 

  セミナー要旨

 

 胎内での臓器発生および成体期での病態モデルは詳細に検討されてきたが、それらに挟まれた小児期は、これまでに十分な研究対象になっていない。小児のもつ特性として、成長能力、高い創傷治癒能力、可塑性、学習能力などがあるが、その分子基盤の詳細は明らかになっておらず、この特性を治療戦略のターゲットとして着眼し、最終的には小児難病の治療法開発を目指すべく、下記のプロジェクトを進行している。

 小児の持つ成長ポテンシャルに関して、理研で開発されたFucciマウスを用いて臓器成長における細胞動態を解析し、心臓においては細胞増殖性に領域特異性があることを明らかにした。また異なる年齢のマウスの種々の臓器でのトランスクリプトーム解析を行い、小児期に特異的に発現している遺伝子(若年性遺伝子)を同定した。GO analysis, GSEAを用いて、生後マウスで発現する遺伝子群の特徴がtranslation (P1)→ extracellular space (P7) → anti-oxidant (P56)と変化することが明らかになった。

 Morataが1975年に提唱した、同種の細胞間の生存競争である細胞競合という現象に着目し小児難病への根治的治療の可能性を考えている。RasV12を発現するHuH7細胞がアポトーシスにより排除されることを明らかにすることで、細胞競合が哺乳類細胞でも認められることを示した。先に示した若年性遺伝子のであるLin28B、H19 lincRNA、IGF2が協調的に細胞密度依存性の細胞増殖を制御していることを明らかにした。

 その他、Hunter症候群のモデルマウスプロジェクトではヒト疾患遺伝子変異をCRISPR/Cas9を用いて導入した変異マウスを樹立した。メタボロミクスプロジェクトでは、低分子化合物、糖鎖、脂質などにも着目して創薬標的としての可能性を模索している。具体的にはアルツハイマー病モデルマウスの海馬・前頭葉・線条体のMass spectrometry結果の多変量解析を行っている。またマイクロレオロジープロジェクトでは小児の細胞が成人とくらべて物理的な特性をもつのか、に着目している。

発表内容要旨(新生児研 平田克弥)