研究者らは、重症熱傷の治療に使用されている再生医療等製品の一つである、自家培養表皮を用いて、先天性巨大色素性母斑や白斑に対する医師主導治験を行い製品の適応拡大を得ることに成功した。
研究者らの再生医療や研究を基に新たな治療法の可能性として間葉系幹細胞を用いた先天性代謝異常症に対する展望を述べて行く。現在わが国で市販されている、再生医療等製品としての間葉系幹細胞がある。その他の再生医療等製品として、皮膚・筋芽細胞などが上市されている。
間葉系幹細胞は、骨髄に血液細胞に分化することができる造血系幹細胞と共に存在し、骨・軟骨・脂肪などへの分化能を有する。その他、皮膚・耳・子宮内膜・臍帯などにも存在するといわれている。これまでの報告では、冠動脈疾患やBuerger病などによる末梢血管の閉塞による足趾の重症壊死、scarless wound healing(皮膚の欠損)などに対して間葉系幹細胞を移植して効果を得たとの報告がある。
研究者らはヒト胚性幹細胞(ES細胞)の樹立をしている。ES細胞の特徴は増殖能が強く無限に増えることができること、どのような細胞にも分化することができることがあげられる。海外では、ES細胞から網膜色素細胞、膵内分泌細胞、神経幹細胞などに分化させ臨床研究に応用されている。研究者らは、このES細胞から間葉系幹細胞へ分化させることができている。
低ホスファターゼ症は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)の欠損により、骨レントゲン検査で骨の低石灰化、くる病様変化がみられ、血液検査で血清アルカリホスファターゼ(ALP)値が低下するのが特徴の疾患である。以前は、効果的な治療法が確立されてはいなかったが、近年酵素補充療法の有効性が報告されている。一方、低ホスファターゼ症の患者に間葉系幹細胞の他家移植を行うことで骨症状の改善を認めたとの報告があり、研究者らが樹立したES細胞由来の間葉系幹細胞が低ホスファターゼ症の新たな治療法の一つになる可能性があると考えている。
(文責:齋藤 広幸)