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演題
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X連鎖性低リン血症性くる病・腫瘍性骨軟化症・自己免疫性骨軟化症
【講師】
伊東 伸朗 先生
東京大学大学院医学系研究科 難治性骨疾患治療開発講座・東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター
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講演要旨 |
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X連鎖性低リン血症性くる病、腫瘍性骨軟化症(TIO)、自己免疫性骨軟化症の3つの話題について講演いただいた。
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X連鎖性低リン血症性くる病 |
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X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)は2万出生に1の割合で発生し、疾患人口は世界で35万人、日本で6,500人程度とされる。異所性骨化を呈し、2次性、3次性の副甲状腺機能亢進症を発症しやすいとされる。
Fanconi症候群/FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症に対する活性化ビタミンD、経口リン製剤による治療を行うと、リン負荷による3次性副甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症による腎性尿崩症、尿路結石からくる慢性腎不全が進展する点が大きな問題となる。これらは脱水により急激に腎機能を悪化させる場合がある。短期的にはリンの濃度変化はPTHにより調整される。FGF23関連低リン血症性くる病の中でもXLHはリンの感受閾値が下がっており、PTHが上昇しやすいことから、XLHはTIOよりも2次性/3次性副甲状腺機能亢進症を起こしやすい。
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腫瘍性骨軟化症 |
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骨折には骨形成が正常および亢進している状態で起こるものと、骨形成が低下しているもの(低回転性骨折)に分かれ、低回転性骨折は低リン血症性くる病、低ホスファターゼ症、骨吸収抑制剤の長期使用、大理石骨病などが該当する。骨形成が正常/亢進している場合は椎体圧迫骨折、大腿骨頚部などが好発部位で、骨形成が低下している場合は転子部、骨盤、踵、中足骨、脛骨、腓骨骨幹部、肋骨などが好発部位となる。これは荷重で骨の中のひびが蓄積し骨折に至ると考えられる。注意点としては、FGF23高値のみでXLHや腫瘍性骨軟化症(TIO)と診断してはならないという点である。
低リン血症性くる病・骨軟化症の中でも後天性のものは、FGF23関連ではTIOがあり、その他の原因では抗ミトコンドリア抗体や抗ミトコンドリア作用を伴うRNAウイルス、薬物が原因となる後天性Fanconi症候群、後天性ビタミンD代謝異常(これはCYP3A4の遺伝性素因が大きく関わる)が挙げられる。
くる病・骨軟化症については診断のフローチャートがあるが、これはくる病・骨軟化症の臨床症状が明確であり、BAP高値で原発性副甲状腺機能亢進症がないことが前提となる。
実際の症例として、TIOに対するブロスマブ投与で症状が改善しALP正常化に至った症例が提示された。
TIO症例については過去に全国調査を行い、発症時の誤った診断は骨粗鬆症が1/4程度を占めていた。その他の誤診断は脊柱管狭窄症、大腿骨頭壊死、線維筋痛症などであった。TIOに対し掻爬術、境界切除を行うと6割前後の寛解率だったのに対し、拡大切除では9割以上の症例で生化学的寛解を認めた。また保存的加療では、ビタミンD、リン製剤と比べブロスマブで改善傾向が見られた。
TIOの原因腫瘍であるリン酸塩尿性間葉系腫瘍24検体のドライバー変異を解析した。FGF23受容体の共受容体であるKlotho (KL)の異所性発現とその機序の推定を行ったところ、生殖細胞にKL上流での転座が存在し、転座や逆位のパートナーは多様だがKL転写開始点より1.3 kb?572.8 kb上流に分布することが判明し、KL異所性発現の機序としてEnhancer hijackingなどが考えられた。また、血清可溶性KL濃度は、腫瘍でのKL発現量をある程度反映することがわかった。
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自己免疫性骨軟化症 |
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後天性FGF23関連低リン血症性骨軟化症として代表的なのはTIOであるが、TIOは国内外どの報告でも腫瘍の発見率が6?7割と低く、残りが本当に隠れた微小腺腫なのかが疑われた。また、自己免疫が病態である内分泌疾患が多いことから、非TIOである後天性FGF23関連低リン血症性骨軟化症における自己免疫性高リン血症/低リン血症の存在を疑い研究を行った。自己免疫性の低/高カルシウム血症におけるカルシウム感知受容体刺激型/阻害型抗体の検出方法を参考とし、自己免疫性高リン血症/低リン血症に対するLIPS(luciferase immunoprecipitation systems)のアッセイを完成させ、最終的に腫瘍が見つからなかったTIO疑い13名中4名で抗PHEX抗体の検出に至った。FACS(fluorescence-activated cell sorting)では13例中5例に抗PHEX抗体を検出した。抗PHEX抗体関連低リンの表現型はXLHに類似する。実際の症例ではブロスマブ投与により改善を認めた。また、SLE症例でFGF23関連低リン血症を認め、免疫抑制剤やステロイドにより改善した症例が提示された。
最後に、新規疾患を見つけるにあたっては、既存の機序で説明がつかない状態について人と違う発想を持つこと、また過去の文献から学ぶことが大切であるとの言葉で講演を締めくくられた。
(文責:中山 尋文)
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