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第65回セミナー報告

大阪小児先進医療研究会の第65回セミナーが、令和7年12月19日に大阪大学医学部 CoMIT棟1階 マルチメディアホールで行われました。

那波 伸敏 先生
講演者:那波 伸敏 先生

 

 演題

 

気候変動の時代における子どもの環境保健――気候変動と社会環境が小児疾患に及ぼす影響

【講師】
那波 伸敏 先生
東京科学大学地球環境医学分野 教授
ウェルビーイング創成センター長


 

  講演内容

 

小児科医として診療を行う中で、季節や気象、生活環境などの自然環境や社会環境が健康に与える影響について興味をもち、公衆衛生学分野に進み、プラネタリーヘルスの研究を行ってきた。
@量的研究について:
気温が疾患リスクに与える影響の解析として、DPCデータによる全国の毎日の疾患別入院数と気象庁データをリンクさせ、時間層別化ケースクロスオーバー法を用いて解析を行った。その結果、気温が高いことにより川崎病による入院リスクが高まることがわかった。
特に、極端な暑さ(上位1%に該当する1日の平均気温が30.7度)にさらされると川崎病による入院リスクが33%上昇し、それは暑かった日から5日後程度まで持続していた。さらに、多くの疾患の気温と入院リスクの関連を網羅的に解析し、暑さによってリスクの増える疾病として、小児ITP、糖尿病緊急症、アナフィラキシー、腸重積があることを同定した。
A質的研究について:
質的研究とは理論に基づいたcoding(演繹的coding)とデータに基づくcoding(帰納的coding)を組み合わせるもので、留学したJohns Hopkins大学では国際保健や公衆衛生の研究のための質的研究を学んできた。これまで行った研究としては、インフルエンザワクチンに対するYahoo!知恵袋のビッグデータを解析し、流行度によって質問の傾向が変わることを見出した。これは、インフルエンザワクチンに対する公的機関等からの情報提供は、一年間を通じて画一的にするのではなく、流行状況に応じて変化させることでより人々がその時に必要とする情報をタイムリーに提示することの重要性を示唆している。また、日本における移民の医療アクセスに対する障壁について解析した。
Bキルギス共和国における地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)プロジェクトについて:
中央アジアのキルギス共和国は、年間死亡者の13%が大気汚染によるものという報告もあり、大気汚染が課題となっている。また、所得に関わらず低品質の石炭で暖房を行うことが特に冬季における大気汚染の原因として報告されている。現在JST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)から約五億円の支援を受け、衛星画像と機械学習、領域化学輸送モデル等に基づき、キルギス全土での大気汚染を連日測定し、これを政府機関にデータ提供し、健康影響も調査する5年間のプロジェクトを実施しているところである。

(文責:石田 秀和)