古結助教、磯野助教、加藤教授らによる論文が公開されました

当研究室が主催する「コモンズプロジェクト」では、患者・患者家族、研究者、政策関係者といったステークホルダーが継続的に熟議を行う場である「エビデンス創出コモンズ」を構築し、そこでの熟議を通して「希少疾患患者が直面する困難の全体像」と「希少疾患領域で優先すべき研究テーマ」を明らかにしました。

近年、政策立案におけるステークホルダーの関与が医学・医療の分野で注目されていますが、実践的な方法論はまだ確立されていませんでした。

そこで本研究グループは、より患者の視点を反映した、政策形成のためのエビデンス(政策形成の際に参照可能な情報)の創出と、そのためのステークホルダー間の協働の方法の開発を目的としてコモンズプロジェクトを開始しました。本研究を通して、10疾患の希少疾患の患者・患者家族、研究者、行政経験者が参加し、ワークショップを通して継続的に熟議を行う「エビデンス創出コモンズ」(以下、「コモンズ」)と名付けられた「場」が構築されました。本研究では、患者・患者家族も共に研究を進める立場として参画し、議論の進め方や結果のまとめ方についても共に検討を行い、患者著者として論文も共同執筆しました。

「コモンズ」での熟議の結果、希少疾患患者やその家族が直面する困難について整理して提示することができました。さらに、そのような困難に対して研究として取り組む際に、どのような研究テーマを優先して取り組むべきかという優先順位についても議論を行いました。その結果、「日常生活への支障」「経済的負担」「不安」「通院の負担」など、7つの研究テーマが優先的に取り組むべき課題として抽出されました。

本成果は、希少疾患領域の政策形成の際に参照可能なエビデンスとして役立つと考えられます。また、本手法は政策形成の過程にステークホルダーが関与する方法として今後の応用が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Research Involvement and Engagement」に、11月29日(日本時間)に公開されました。

 

タイトル:”Enhancing evidence-informed policymaking in medicine and healthcare: stakeholder involvement in the Commons Project for rare diseases in Japan”

著者名:Atsushi Kogetsu, Moeko Isono, Tatsuki Aikyo, Junichi Furuta, Dai Goto, Nao Hamakawa, Michihiro Hide, Risa Hori, Noriko Ikeda, Keiko Inoi, Naomi Kawagoe, Tomoya Kubota, Shirou Manabe, Yasushi Matsumura, Koji Matsuyama, Tomoko Nakai, Ikuko Nakao, Yuki Saito, Midori Senoo, Masanori P. Takahashi, Toshihiro Takeda, Megumi Takei, Katsuto Tamai, Akio Tanaka, Yasuhiro Torashima, Yuya Tsuchida, Chisato Yamasaki, Beverley Anne Yamamoto & Kazuto Kato

論文サイト https://doi.org/10.1186/s40900-023-00515-5

 

コモンズプロジェクトは、2018年10月〜2022年3月にJST-RISTEX(社会技術研究開発センター)の研究助成を受けて実施された「医学・医療のためのICTを用いたエビデンス創出コモンズの形成と政策への応用」(代表:大阪大学 加藤和人)の通称です。本研究は、より患者の視点を反映した、政策形成の際に参照可能な「エビデンス」の創出を目的としています。

コモンズプロジェクトとは?:https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/eth/research-project/